ミヤコトカゲ

Emoia atrocostata atrocostata (Lesson, 1830)

爬虫綱> 有鱗目 > トカゲ科 > ミヤコトカゲ属>ミヤコトカゲ

  • ミヤコトカゲ
概要

[大きさ][1]

  • 頭胴長:60–100 mm
  • 尾長:頭胴長の150%程度
  • 宮古諸島の個体群は小型で、頭胴長は72–80 mm程度

[説明][1]

  • 西太平洋の熱帯域に広く分布し、国内では宮古島とその周辺の島嶼に分布する
  • 岩礁帯に生息する
  • 昼行性で日光浴を行う
  • 背面は灰褐色
  • 卵生

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧Ⅱ類[8]
  • 沖縄県レッドデータブック:絶滅危惧Ⅱ類[9]
  • 宮古島市自然環境保全条例保全種[10]
分布

[分布][1,2,3]

  • 世界的な分布:西太平洋熱帯海洋域の島々に広く分布
  • 国内での分布 :宮古諸島:宮古島、大神島、池間島、伊良部島、来間島

[生息環境][4,7]

  • 海岸の岩礁地帯
  • マングローブ林
  • 砂浜
  • 干潮時には潮間帯でも活動する
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ科 > ミヤコトカゲ属 > ミヤコトカゲ

[説明][5]

  • 近年の分子系統解析によって、本種は複数種を含む側系統群であることが明らかとなり、分類の再検討が求められている
  • 日本の宮古諸島に分布する本種は、台湾、フィリピン、ミクロネシアの一部の集団と同じ系統に属する
  • 本種が基亜種となるatrocostataグループには3亜種が含まれる。E.atrocostata freycinetiはソロモン諸島とバヌアツに固有で、E.atrocostata australisはヨーク岬半島に固有分布する

[形態][1]

  • 背面は灰褐色で細かい斑点が散在する
  • 胴中央部の体鱗は61~76枚(平均で68枚)
  • 第4趾には趾下板がある
  • 尾は細長い
  • 腹面はやや青みを帯びた黄白色

[似た種との違い][1]

  • 同属種は日本国内に分布しない
  • 同所的に生息するトカゲ科として、キシノウエトカゲとサキシマスベトカゲが生息する。

キシノウエトカゲとの識別点
・主に体色で識別することができる。体サイズが類似するキシノウエトカゲの幼体は7本の黄色の縦条を持つのに対し、ミヤコトカゲは縦条を持たない。ミヤコトカゲの背面は青みを帯びた灰褐色である。キシノウエトカゲの成体とは体サイズで見分けることができる。
・キシノウエトカゲの上鼻板はよく発達し、正中線上で接しているのに対し、ミヤコトカゲの上鼻板は細長く左右は接しない。

サキシマスベトカゲとの識別点
・主に体サイズと体色で識別することができる。サキシマスベトカゲは黒褐色の微小な斑点が散布した赤褐色の背面を持ち、頭胴長は最大でも60 mm程度なのに対し、ミヤコトカゲは灰色の背面を持ち、頭胴長は成体で72 – 80 mmに達する。
・ミヤコトカゲは上鼻板があることでも識別することができる。

生態

[生活史](フィリピンの個体群[6])

  • 年間を通して活動し、継続的に成長する
  • 幼体時の成長率は3.27 mm/20日で、一年後以降は1 mm/20日以下になる。成長率に性差はない
  • 寿命は3年以上4年未満とされる
  • 9か月程度で頭胴長80 mm程度に成長し性成熟する

[食性]

  • 昆虫や等脚類[1]
  • アリ科、アワフキムシ科やカニ[4,7]

[繁殖]

  • 一腹卵数:2個[1,4]
  • 出生時の性比は1:1[7]
  • 沿岸部の岩場に産卵すると考えられる[1]
  • フィリピンでは特定の繁殖期を持たない[6]
  • 台湾の個体群では、卵を持つメスは3月から8月にかけてであり、繁殖期に季節性を持っている[7]
  • 孵化:産卵後56–71日[1]
  • 孵化幼体の頭胴長33–39 mm[1]
その他

[保全]

  • 国内の生息地は減少しつつあり、護岸工事や埋め立てなどの影響と考えられる。宮古島平良港付近では、港湾整備事業の結果岩礁性海岸が消失し、個体群そのものが絶滅した可能性が指摘されている[2]

執筆者:伊與田翔太

[引用文献]

  • [1] 岡本卓.(2021).トカゲ属,日本爬虫両棲類学会(編),新 日本両生爬虫類図鑑.サンライズ出版,pp.132-141.
  • [2] 饒平名里美・当山昌直・安川雄一郎・陳 賜隆・高橋 健・久貝勝盛. 宮古諸島における陸棲爬虫両生類の分布について.
  • [3] 菊川章. (2019). 沖縄県立博物館・美術館における両生類および陸生爬虫類の標本資料の収蔵状況. 沖縄県立博物館・美術館博物館紀要/沖縄県立博物館・美術館 編, (12), 7-14. 
  • [4] TAYLOR, E. H. 1922. The lizards of the Philippine Islands. Manila, Bur. Sci. Publ. No. 17, 269 pp.
  • [5] Richmond, J. Q., Ota, H., Grismer, L. L., and Fisher, R. N. (2021). Influence of niche breadth and position on the historical biogeography of seafaring scincid lizards. Biological Journal of the Linnean Society132(1), 74-92.
  • [6] Alcala, A. C., and Brown, W. C. (1967). Population ecology of the tropical scincoid lizard, Emoia atrocostata, in the Philippines. Copeia, 596-604.
  • [7] Huang, W. S. (2011). Ecology and reproductive patterns of the littoral skink Emoia atrocostata on an East Asian tropical rainforest island. Zoological Studies50(4), 506-512.
  • [8]環境省(2020)レッドリストhttps://www.env.go.jp/content/900515981.pdf(最終アクセス:2023年11月15日)
  • [9]沖縄県(2017). レッドデータおきなわ 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編). https://www.okinawa-ikimono.com/reddata/pdf/doubutsu2017.pdf(最終アクセス:2023年11月15日)
  • [10] 宮古島市.https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/shityo/seikatukankyou/eisei/oshirase/2019-0305-1723-264.html(最終アクセス:2023年11月15日)