クロイワトカゲモドキ

Goniurosaurus kuroiwae (Namiye, 1912)

爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>クロイワトカゲモドキ

  • 石灰岩地で活動する成体(沖縄島南部)
概要

[英名] 

Kuroiwa’s ground gecko

[大きさ] 

  • 全長 14–19 cm

[説明]

  • 沖縄島の中南部とその周辺の島々に生息
  • 伊江島の個体群では模様が大きく異なる
  • 背側の模様や色彩、体型によって他のトカゲモドキ類と判別可能
  • 夜行性で湿潤な林内や洞窟内でみられる

[保全状況]

  • 危急種(IUCNレッドリスト)、絶滅危惧II類(環境省RDB)、絶滅危惧II類(沖縄県RDB)、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種(種の保存法)
分布

[分布]

  • 沖縄島(名護市以南)、瀬底島、屋我地島、伊江島(沖縄県)[1,3,7,8,9,10,11,12,13,14,16]

[生息環境]

  • 湿潤な常緑広葉樹林、二次林、洞窟、およびその周辺[11]
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>クロイワトカゲモドキ

[タイプ産地] 

沖縄県名護市(沖縄島)[7,9,]

[学名の由来]

  • 種小名は日本の博物学者で沖縄の動植物の研究を行い、本種を発見した黒岩恒氏にちなむ[9]

[説明]

  • かつてクロイワトカゲモドキには遺伝的・形態的に区別できる北部集団、南部集団が存在し、分類学的再検討が求められていたが、2024年の分類学的再検討で北部集団がヤンバルトカゲモドキ Goniurosaurus nebrozonatusとして記載され、 名護市以南と瀬底島、屋我地島、伊江島の個体群がクロイワトカゲモドキG. kuroiwaeとして整理された[16]
  • 両者は大宜味村南部と東村南部に位置する名護市との境界近辺で交雑帯を形成するものの、それ以外の地域では遺伝的、形態的に分かれており、種として分けられるに至った[16]。

体の特徴

[形態]

頭胴長75–100 mm、全長140–190 mm[11,12]。指下板は小さく、眼にはまぶたをもつ。体は細く、背側は黒地で橙色〜桃色の縦条線を持つ。頭部に不規則な模様がわずかに入る。腹面は白〜灰色。眼の虹彩は赤褐色を呈する。一度も切断していない尾は細長く黒紫色で、白色のバンドが5本ほど入る。自切後に再生した尾は太く短く、白色のまだら模様が入る。なお、伊江島の個体群では胴体背面に4本の横帯を持つ個体が多い[6,16]。

[似た種との違い]

ヤンバルトカゲモドキとの識別は、大腿部の大型鱗の密度や後肢の大型鱗の枚数、背面の模様などの特徴の組み合わせで行うことができる。例えばクロイワトカゲモドキでは胴体の背面に縦条を持つ個体が多いが、ヤンバルトカゲモドキでは無い個体が多い。また、クロイワトカゲモドキでは胴体の背面にバンドを持たない個体が多い一方、ヤンバルトカゲモドキではバンドを持つ個体も少なからず存在する[16]。

また、大宜味村南部と東村南部に存在する両種の交雑個体群は、クロイワトカゲモドキと近い模様を示すことが多い[16]。

なお、伊江島の個体群では模様の変異が大きいが、胴体背面に4本の横帯を持つ個体が多い[6,17]

それ以外の日本産トカゲモドキ類とは、背側の横帯が無いこと、縦条線もしくは不規則な細かい斑点をもつことで区別できる[1,4]。また、クロイワトカゲモドキと同所的に生息するトカゲモドキ類はいないため、生息地から容易に同定が可能である[1,12,16]。

生態
  • 夜行性。地上性で樹木に登ることはほとんどない。クモ類、ムカデ類、昆虫類などの地表性の動物を捕食する[11]。サキシマハブ(移入集団)などのヘビ類による捕食事例がある[2]。繁殖期は春〜夏で産卵はシーズンに2,3回行われる。産卵数は1度に2個で、孵化後約2年で成熟する。冬は活性が落ち、野外で見かけることはほとんどないが、暖かい日は活動している[10,11]
その他

[コメント]

  • クロイワトカゲモドキは開発に伴う環境の悪化や生息地の分断、外来種の定着によって数を減らしていると考えられている[12]。また、違法採集も行われているようで、欧米の市場においてペット用として取引されていることが知られている[15]

執筆者:福家悠介, 福山亮部

・2024年の分類学的再検討に伴い、学名を修正するとともに情報を追記(2026年7月更新)


引用・参考文献

  1. Grismer, L. L., Ota, H. & Tanaka, S. 1994. Phylogeny, classification, and biogeography of Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae) from the Ryukyu Archipelago, Japan, with description of a new subspecies. Zoological Science, 11, 319–335.
  2. 浜中京介・森哲・森口一.2014.日本産ヘビ類の食性に関する文献調査.爬虫両棲類学会報.2014: 167–181.
  3. Honda, M., Kurita, T., Toda, M. & Ota, H. 2014. Phylogenetic relationships, genetic divergence, historical biogeography and conservation of an endangered gecko, Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae), from the Central Ryukyus, Japan. Zoological Science, 31, 309–320.
  4. Honda, M. & Ota, H. 2017. On the live coloration and partial mitochondrial DNA sequences in the topotypic population of Goniurosaurus kuroiwae orientalis (Squamata: Eublepharidae), with description of a new subspecies from Tokashikijima island, Ryukyu Archipelago, Japan. Asian Herpetological Research, 8, 96–107.
  5. Kidera, N. & Ota, H. 2017. Goniurosaurus kuroiwae. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T98152257A96877452.
  6. 日本爬虫両生類学会 編. 2021. 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版, 232pp
  7. Kurita, T., M. Honda & Toda, M. 2017. Species delimitation and biogeography of the Ryukyu ground geckos, Goniurosaurus kuroiwae ssp. (Squamata: Eublepharidae), by use of mitochondrial and nuclear DNA analyses. Journal of Zoological Systematics and Evolutionary Research, 56: 209–222.
  8. 前之園唯史・戸田守.2007.琉球列島における両生類および陸生爬虫類の分布.Akamata,(18): 28–46.
  9. 浪江元吉.1912.沖縄産守宮類に就て.動物學雑誌,24,442–445.
  10. 関慎太郎.2016.野外観察のための日本産爬虫類図鑑.緑書房.
  11. 田中聡.1996.クロイワトカゲモドキ.日本動物大百科5 両生類・爬虫類・軟骨魚類,pp 71.平凡社.
  12. 戸田守・田中聡.2017.クロイワトカゲモドキ.改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-動物編-,pp 191–193.沖縄県環境部自然保護課.
  13. 富田京一・松橋利光.2007.山溪ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ.山と溪谷社.
  14. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002.決定版日本の両生爬虫類.平凡社.
  15. 若尾慶子.2018.南西諸島固有両生類・爬虫類のペット取引.Traffic Briefing 2018年5月,1–18.
  16. Kurita, T., & Toda, M. 2024. Genetic and morphological studies on Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae), with a description of a new species from the northern part of Okinawajima Island, Ryukyu Archipelago, Japan. Current Herpetology, 43(1), 86-114.

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