アイフィンガーガエル

Kurixalus eiffingeri (Boettger, 1895)

両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アイフィンガーガエル属 > アイフィンガーガエル

概要

[英名] 

Eiffinger’s Tree Frog

[大きさ] 

全長 3–4 cm

[説明]

  • 体色は白〜薄茶色(日中は濃い色になることも)
  • 夜行性で、樹上で高く短いピ・ピ・ピといった声で鳴く
  • 日本のアオガエルの中では小型
  • 国内では西表島と石垣島に分布する
  • 湿潤な林の樹上に生息する
  • 樹洞の水たまりなどに産卵し、メスが“子育て”をすることでも知られている
  • 昆虫などの小動物を食べる

[保全状況]

  • 環境省:なし
  • IUCN:LEAST CONCERN
分布

[分布]

石垣島、西表島

国外では台湾

[生息環境]

湿潤な常緑広葉樹林。樹上性が強く、枝や葉の上で見られることが多い。 水の溜まった樹洞内で見られることも。

分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アイフィンガーガエル属 > アイフィンガーガエル

[タイプ産地] 

  • Liukiu [Ryukyu]-Inseln[5]

[説明]

アイフィンガーという名前は、ドイツ人昆虫学者のGeorg Eiffinger(1838-1920)に由来する[9]。

大きな拇指を持つこと、繁殖生態が特異であることからアイフィンガーガエル属 Kurixalusとして、他のアオガエル類と属が分けられている[10]

体の特徴

[形態]

  • 鼓膜は円形で、眼径の約2分の1の大きさ
  • 喉の下に一つの鳴嚢を持つ
  • オスは親指基部が発達し、第一指に拇指隆起を持つ[4]
  • オタマジャクシは歯が極めて未発達で、消化管も非常に短い[8]。この形質は本種のオタマジャクシが 母親から与えられる未受精卵によって成長するということを反映したものだと思われる。

[似ている種との違い]

同所的に分布するヤエヤマカジカガエルやシロアゴガエルは本種と似ているが、以下の識別点で見分けることが可能である。

ヤエヤマカジカガエルとの違い

  1. ヤエヤマカジカガエルの肩甲部には大型のX字状の隆起が存在する。
  2. 後肢の水かきはアイフィンガーガエルの方が発達する。
  3. アイフィンガーガエルの方が樹上性が強く、ヤエヤマカジカガエルの方が地表性が強い。
  4. ヤエヤマカジカガエルは黄色〜赤褐色の体色になることもある。
アイフィンガーガエルヤエヤマカジカガエル

シロアゴガエルとの違い

  1. シロアゴガエルの成体は4.5–7.5cmで、アイフィンガーガエルよりも大きい
  2. シロアゴガエルの背面は茶色で、暗色の縦縞がある個体も多い
  3. シロアゴガエルの上あごの周辺は白く縁取られている
  4. シロアゴガエルの背面は平滑で、イボや隆起は目立たない
アイフィンガーガエルシロアゴガエル   
生態

[食性]

  • 小型の昆虫など

[繁殖]

  • 木のうろなどにできた水たまりで繁殖を行い、卵は水面より上の内壁に産み付けられる。[8]
  • 水深の深い水たまりを産卵場所として選択する傾向がある。[7]
  • 年中産卵を行うが、雨が多く降ったタイミングで産卵することが多い。[7]
  • メスはオタマジャクシに定期的に未受精卵を餌として与え、子育てをすることが知られている。[8]
  • オタマジャクシは卵を与えられなければ成長することができず、変態までに平均87個の未受精卵を食べる(室内実験による知見)[6]。

[鳴き声]

ピッ ピッ ピッと断続的に鳴く

その他

[コメント]

  • 西表島や石垣島の林内で鳴き声をよく聞くことができる。
  • 子育てをするという変わった生態から、国内外で多くの研究が行われてきた。
  • 鳴き声を頼りに探しても、目にするのは以外と難しい。樹上やうろの中を丹念に探すことで本種を見つけられると思う。

執筆者:福山亮部


引用・参考文献

  1. 太田英利. 2014. 環境省(編)レッドデータブック2014 ー日本の絶滅のおそれのある野生生物ー 3爬虫類・両生類. (株)ぎょうせい, 東京.
  2. 高田榮一, 大谷勉. 2011. 原色爬虫類両生類検索図鑑. 北隆館, 東京. pp. 211-213.
  3. 日本爬虫両棲類学会. 2017. 日本産爬虫両生類標準和名リスト. <http://herpetology.jp/wamei/index_j.php>, 参照 2018-04-10.
  4. 中国科学院昆明动物研究所. 2018. 中国两栖类. <://www.amphibiachina.org/ampsp/472>, 参照 2018-06-05
  5. Boettger, O. 1895. Neue Frösche und Schlangen von den Liukiu-Inseln. Zoologischer Anzeiger 18: 266–270.
  6. Kam, Y. C., Chuang, Z. S., & Yen, C. F. 1996. Reproduction, oviposition-site selection, and tadpole oophagy of an arboreal nester, Chirixalus eiffingeri (Rhacophoridae), from Taiwan. Journal of Herpetology, 52-59.
  7. Lin, Y. S., & Kam, Y. C. 2008. Nest choice and breeding phenology of an arboreal-breeding frog, Kurixalus eiffingeri (Rhacophoridae), in a bamboo forest. ZOOLOGICAL STUDIES-TAIPEI-, 47(2), 129.
  8. UEDA, H. 1986. Reproduction of Chirixalus eiffingeri (Boettger). Scientific Reports of Laboratory in Amphibian Biology, Hiroshima University 8:109-116.
  9. Beolens, B., Watkins, M., & Grayson, M. (2013). The eponym dictionary of amphibians. Pelagic Publishing.
  10. 松井正文. (2006). 最近の日本産両生類の学名の変更について. 爬虫両棲類学会報, 2006(2), 120-131.

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