オキナワトカゲ

Plestiodon marginatus Hallowell, 1861

爬虫綱 > 有鱗目 > トカゲ科 > トカゲ属 > オキナワトカゲ

概要

[大きさ] 

  • 全長15-19cm[7,8]、頭胴長 6-10 cm[8]。

[説明]

  • 地上性で、低平地や海岸付近の砂地や岩場によく見られる
  • 幼体は暗褐色ないし黒色の背面および体側面に五本の白い縦線が入り、これらの白線は尾の半分程度まで伸びる。 成長に従ってこれらの模様は消失し、成体は背面は褐色で、体側面に暗褐色の帯が入る。
  • 節足動物のほかにも、ヤモリの幼体やアダンの実なども捕食する

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト(2020):絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 鹿児島県レッドデータブック(2016):絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 沖縄県レッドデータブック(2017):絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 鹿児島県指定希少野生動植物
分布

[分布]

トカラ列島の中之島、奄美諸島の与論島と沖永良部島、沖縄諸島のほとんどの島に分布[1]

[生息環境]

  • 海岸付近の砂地や耕作地、草地、住宅地など開放的な環境に多い[2]。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > トカゲ科 > トカゲ属 > オキナワトカゲ

[タイプ産地] 

Hallowellは奄美大島と沖縄本島としている[3]。1912年にはStejnegerが、1855年にW. Stimpsonが沖縄本島で採集した標本をレクトタイプ(命名者が指定した標本が存在しない場合に代わりに選定されたタイプ標本)に指定した[4]。

[説明]

  • 本種は1861 年にPlestiodon marginatusと命名され、沖縄諸島と奄美諸島に分布するであると考えられていた。1990年頃、奄美諸島(沖永良部島を含む)とトカラ列島南部 (宝島と小宝島) に分布する個体群においては、疋田努氏らによってEumeces marginatus oshimensis つまりオキナワトカゲの亜種として位置付けられることとなった[5]。一方、トカラ列島北部(口之島、中之島、諏訪之瀬島)に分布する集団に関しては、当初E. latiscutatus(現在はオカダトカゲの種小名だが、当時はニホントカゲの学名であった)とされていたが、体列鱗数の違いやアロザイム分析から、この集団がニホントカゲではなくオキナワトカゲと考えるべきであるとされた[6]。こうして、トカラ列島、奄美諸島に分布する集団はオキナワトカゲの亜種であるオオシマトカゲであると長らく考えられてきた。しかし2014年、栗田和紀氏を中心とした研究によって、口之島に分布する集団に関してはクチノシマトカゲPlestiodon kuchinoshimensis[3]、 諏訪之瀬島、トカラ列島南部そして奄美群島(沖永良部島、与論島を除く)に生息する集団はオオシマトカゲ Plestiodon oshimensis として別種扱いすべきであることが判明した[1]。これにより、中之島、沖永良部島、与論島、そして沖縄諸島に分布する集団がオキナワトカゲであることが明らかになったが、このような興味深い分布は、黒潮の流れによった海上分散に起因すると考えられている[1]。
  • 系統的にはオオシマトカゲに最も近縁である[1]。
体の特徴

[形態]

  • 幼体は黒褐色の背側面に5本の黄白色の縦条をもち、尾は水色や薄緑色になる。中心部の3つの縦条は、多くの個体群では尾の1/2-3/4にまで達するが、沖永良部島や与論島、中之島では1/3まで達しない個体もある。また、粟国島ではこの縦条が尾の基部付近で途切れる個体もみられる。
  • 成体になるにつれて尾の色や縦条は薄れて暗褐色になるが、メスでは幼体時の体色が残りやすい
  • 婚姻色の程度は弱く、口部や咽頭部、体側が橙色になる。これらの特徴は繁殖期後にも残っていることが多い。また、繁殖期のメスや幼体でも下顎が橙色になる個体がみられる。
  • 成体は背面は褐色で、体側面に暗褐色の帯が入る
  • 体鱗列数は通常26列だが、島嶼間で 24-28 列の変異がある

[似た種との違い]

近縁種との見分け方は、それぞれのページを参考に

オオシマトカゲとの見分け方はこちら

クチノシマトカゲとの見分け方はこちら

バーバートカゲとの見分け方はこちら

生態

[食性]

主に節足動物を捕食し、ミナミヤモリの幼体や熟したアダンの実なども摂食する[2]

[捕食]

ヘビ類に加えて、イタチやマングースなどの哺乳類などに捕食されていると考えられる

[繁殖]

メスは5月中旬から下旬頃に、石の下などに穴を掘り5~8個産卵する。産卵後メスはそのまま巣に留まり、 卵を動かしたり、舐めたりして卵の世話をする。7 月上旬には孵化個体が出てくる[8]。

その他

[保全]

島に導入された大型の哺乳類が個体数に負の影響を与えている可能性がある。例えば、沖縄諸島の伊平屋島、伊江島、久米島、座間味島、阿嘉島、慶留間島にイタチが 導入が文献から示唆されており、住民の証言などから導入に伴い本種があまり見られなくなったことが伺える[8]。沖縄本島には1910 年にマングースが導入されたが、防除をしている地域としてない地域では本種の生息密度が顕著に異なるという報告もある[8]。   

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. Kurita, K., & Hikida, T. (2014). Divergence and long-distance overseas dispersals of island populations of the Ryukyu five-lined skink, Plestiodon marginatus (Scincidae: Squamata), in the Ryukyu Archipelago, Japan, as revealed by mitochondrial DNA phylogeography. Zoological science31(4), 187-194.
  2. 松井正文&森哲.(2021). 新 日本両生爬虫類図鑑.サンライズ,滋賀.
  3. Hallowell, E. (1861). Report upon the Reptilia of the North Pacific Exploring Expedition, under command of Capt. John Rogers, U. S. N. Proc. Acad. Nat. Sci. Philadelphia 12,  480 – 510.
  4. Stejneger, L. (1907). Herpetology of Japan and adjacent territory (No. 58). US Government Printing Office.
  5. Uetz, P., Freed, P, Aguilar, R. & Hošek, J. (eds.) (2022) The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 12/06/2022.
  6. Motokawa, J., & Hikida, T. (2003). Genetic variation and differentiation in the Japanese five-lined skink, Eumeces latiscutatus (Reptilia: Squamata). Zoological science, 20(1), 97-106
  7. 関慎太郎, & 疋田努. (2016). 野外観察のための日本産爬虫類図鑑. 緑書房,東京
  8. 当山昌直. (2017). バーバートカゲ. “改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 -レッドデータおきなわ- 第3版―動物編―”, 沖縄県環境保健部自然保護課(編), 沖縄県環境保健部自然保護課,沖縄, 194-195.