ヤマアカガエル

Rana ornativentris Werner, 1903

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > アカガエル属

  • メス成体
概要

[大きさ] 

  • 体長 4–8 cm

[説明]

  • 本州から九州にかけて広く分布し、森林とその周辺の水田などに生息する。早春に田んぼや水たまりなどで産卵を行う。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020未掲載
分布

[分布]

  • 本州・四国・九州・佐渡

[生息環境]

  • 平地・丘陵地にも生息するが、山地に多い。春には繁殖のため水場に集まる。非繁殖期には近くの森林内部で生活する。[1,2]
  • 本種が水田に生息する場合、冬季にも水場があること、また付近に森林があることが生息に重要な条件であることが知られる [7]。
分類

[タイプ産地] 

  • 栃木県日光 [1]

[説明]

  • 種小名のornativentrisは「腹に模様をもった」の意味[1]
  • 種内でも、地域によってやや遺伝的な違いがあるようだ[3]
体の特徴

[形態]

  • 背面は褐色。腹部は白色で、黄色みがかることもある。唇からノドの下にかけて黒い斑紋がでることが多い。
  • 背側面には明瞭な一対の線が見られるが(背側線あるいは背側線隆条)、これは鼓膜の後ろで折れ曲がる。

[似た種との違い]

ニホンアカガエルと似ており、また生息環境も一部かぶるため間違えやすい。見分け方はニホンアカガエルの項を参照。

生態

[成長]

  • 神奈川県における調査によれば、2㎝ほどで上陸した幼体は、その年の秋には5㎝を超えるまで成長する。また少なくとも一部の雄は、上陸した翌年から繁殖に参加できるようだ。[2]

[繁殖]

  • 繁殖期はふつう1–4月。寒冷地では6月下旬になる場合もあるという。東京都内の郊外では本種の産卵開始時期が年々早まっていることが知られ、温暖化の影響だと考えられている[1,4]。
  • 繁殖場所は湿地、池、水溜まり、水田など[1]。

[卵]

  • 卵塊は押しつぶされたような球形で、1000–1900個ほどの卵を含む。ゼリー層は触るとネバネバする[6]。この形と手触りでニホンアカガエルの卵と区別できる。

[幼生]

  • 全長4–6㎝になる。褐色で、体側には金色の斑点が密に散る。
  • 変態までの期間は約3ヶ月[6]。
その他

[保全]

  • 栃木県や神奈川県における10年以上の長期モニタリング調査によって、本種の個体数の減少が明らかにされている例がある。水田の耕作放棄や農薬散布、また外来種の侵入などが減少原因だと考えられている。[8,9]

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. 松井正文・前田憲夫. (2018). 日本産カエル大鑑. 文一総合出版.
  2. Osawa, S., and T. Katsuno. (2001). Dispersal of Brown Frogs Rana japonica and R. ornativentris in the Forests of the Tama Hills. Current herpetology 20:1–10.
  3. Sumida, M., and M. Nishioka. (1996). Genetic variation and population divergence in the mountain brown frog Rana ornativentris. Zoological Science 13:537–549.
  4. Kusano, T., and M. Inoue. (2008d). Long-Term Trends toward Earlier Breeding of Japanese Amphibians. Journal of Herpetology 42:608–614.
  5. 大澤啓志・勝野武彦. (2002). 都市域の公園・保全緑地におけるアカガエル類生息数の概数に影響を及ぼす環境条件 65:513–516.
  6. 松井正文・関慎太郎. (2008). カエル・サンショウウオ・イモリのオタマジャクシハンドブック. 文一総合出版.
  7. 宇留間悠香・小林頼太・西島翔太・宮下直. (2012). 空間構造を考慮した環境保全型農業の影響評価:佐渡島における両生類の事例. 保全生態学研究 17:155–164.
  8. 富岡克寛. (2000). 関東平野北部の谷津田におけるアカガエル 2 種の産卵時期と卵塊数の長期動態. 千葉中央自然史研究報告特別号 3:9–16.
  9. 福山欣司・阿部道生・松田久司・佐々木史江. (2007). 横浜市瀬上谷戸におけるヤマアカガエルとアズマヒキガエルの長期的なモニタリング調査. 爬虫両棲類学会報 2007(2):146–153.

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