Perochirus ateles (Duméril, 1856)
爬虫綱 > 有隣目 > ヤモリ科 > シマヤモリ属 > ミナミトリシマヤモリ
概要
[大きさ]
- 全長12~19cm。頭胴長 5~9cm[5, 9]
[説明]
- 日本産のヤモリ科では最大種
- 主にミクロネシアの島々に分布する
- 日本では現在、南硫黄島にのみ生息していると考えられている
[保全状況]
- 環境省レッドリスト(2014) – 絶滅危惧Ⅱ類
- 生息地の南硫黄島は1972年に国の天然記念物に指定され、立ち入りが制限されている
分布
[分布]
- パラオを除くミクロネシア西部の島々から南硫黄島にかけて分布する[1, 5]
- かつては南鳥島でも生息が確認されていたが、現在は絶滅した可能性が高い[4, 6, 7]。南硫黄島の個体数は安定している[3, 4, 8]
- 国外でもグアムなど分布記録のあった地域から姿を消しつつあるとされる[6]
[生息環境]
- 森林性だが、樹木の少ない島でも分布しており、海岸近くの岩場から樹林まで多様な環境に生息する[2, 3, 4, 5]
- 南硫黄島では標高300m以下の樹林、岩場に生息している[4]
分類
[分類]
- 爬虫綱 > 有鱗目 > ヤモリ科 > シマヤモリ属 > ミナミトリシマヤモリ
[タイプ産地]
[説明]
- タイプ産地はフィリピンであるが、記載後の記録はなく、分布が疑問視されている[1]
- ホロタイプが採集された旅程ではチューク諸島およびグアムに立ち寄っていることから、フィリピンがタイプ産地というのは誤りであり、これらの地域が真のタイプ産地である可能性もある[1]
- 本属は3種が知られ、2種はカピンガマランギ環礁およびバヌアツにそれぞれ固有であり、ミナミトリシマヤモリのみ広域分布している[5]
体の特徴
[形態][5, 6, 9]
- 尾部は扁平で幅広く、槍形
- 第1指は爪がなく、非常に短く、第2指とほとんど癒合している。後肢の第1趾も短いものの、爪はある。指趾の間には短い皮膜がある
- 胴部背面および四肢は大型鱗を欠き、小さな顆粒状の鱗で覆われる。背面は茶褐色~灰色で、白色~暗褐色の不規則な小班が散布する
- 後肢後縁には弱い皮膚のヒダがある
- 南鳥島およびミクロネシア西部の標本では前肛部に6~10枚の大型鱗を持ち、一部のオスは2~5個の前肛孔を持つが、南硫黄島の個体はこのような大型鱗を持たず、前肛孔もない
[似た種との違い]
- 南硫黄島で記録されているヤモリ科は本種のみであり、他種は生息していない[3, 4, 8]
生態
[活動時間]
[食性]
- 南硫黄島における胃内容物調査では、ショウジョウバエ、鱗翅目、花粉の可能性がある試料が記録されている[4]
- 花近くで待ち伏せした個体が多く見られたとのことから、訪花昆虫を捕食していると思われる[3, 6]
[繁殖][5]
- 繁殖期は長いと推測され、海外では6~2月に精子を形成したオスが見つかっている
- 一回に2~3個の球形に近い卵を産む
- 孵化直後の幼体は頭胴長約20mm、メスは52mm、オスは57mmで性成熟したことが知られる
その他
[備考]
- 南鳥島の個体群は1903年からの約50年の間に消滅したと推測される。消滅の経緯は不明だが、海外の事例からクマネズミやホオグロヤモリなどの外来種の捕食圧・競争圧が影響した可能性がある[6]
執筆者:高田賢人
引用・参考文献
- Brown, W.C. 1976. Review of the genus Perochirus (Gekkonidae). Occasional Papers of the California Academy of Science 126:1–14.
- Buden, D.W. 2007. Reptiles of Satawan Atoll and the Mortlock Islands, Chuuk State, Federated States of Micronesia. Pacific Science 61(3):415–428.
- 堀越和夫. 2008. 南硫黄島のトカゲ類. 小笠原研究 33:129–134.
- 川上和人・村上勇樹. 2017. 2017 年における南硫黄島の爬虫類相. 小笠原研究 44:289–294.
- 栗田隆気. 2021. シマヤモリ属. 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版, 滋賀:122–124.
- 太田英利. 2014. ミナミトリシマヤモリ. レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 3 爬虫類・両生類. 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編), 環境省自然環境保護課, 東京:36–37.
- Sakagami, S. 1961. An ecological perspective of Marcus Island, with special reference to land animals. Pacific Science 15:82–104.
- 千石正一. 1983. 南硫黄島の爬虫類. 南硫黄島の自然. 日本野生生物研究センター, 東京:287–301.
- 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002. 決定版日本の両生爬虫類. 平凡社, 東京. p336.