アマミタカチホヘビ

Achalinus werneri Van Denburgh, 1912

爬虫綱 > 有鱗目 > タカチホヘビ科 > タカチホヘビ属 > アマミタカチホヘビ

概要

[大きさ] 

  • 全長 30–60 cm

[説明]

  • 小型で細長い、無毒で無害なヘビ。
  • 森林床の倒木や石の下に見られるため人目につきにくい。
  • ミミズ類を捕食する。
  • 卵生で、3–8個の卵を生む。輸卵管卵をもつ個体は4月上旬から6月上旬に見られ、5月中旬には産卵も観察されている。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト:準絶滅危惧種(NT)
  • IUCNレッドリスト:準絶滅危惧種(NT)
  • 乾燥や高熱に非常に弱く、移動能力も低いため、舗装道路や側溝の敷設などの開発により生息地が簡単に分断され、局所的な絶滅が起きやすいと考えられる。外来種フイリマングースによる捕食による影響も懸念される[5]。
分布

[分布]

  • 日本固有種で、奄美諸島の奄美大島、枝手久島、加計呂麻島、徳之島、沖縄諸島の沖縄島、渡嘉敷島に分布する。

[生息環境]

  • 主に山地森林の地表に生息するが、市街地や墓地付近の森で見つかることもある[1]。
  • 日中は倒木や石の下、石垣の隙間などに潜むことが多く、夜間に活発に行動する[1]。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > タカチホヘビ科 > タカチホヘビ属 > アマミタカチホヘビ

[タイプ産地] 

  • 名瀬(奄美大島)

[説明]

  • 形態的にはタカチホヘビ A. spinalis に近いが、タカチホヘビより背面の色が薄く、腹面が黄色であることにより区別される[3]。
  • 本種に関する分子系統学的な知見はまだなく、他種との系統的な関係は不明な点が多い[4]。
体の特徴

[形態]

  • 小型の細長いヘビで、全長は30–60 cm。尾は全長の1/4程度を占める[5]。
  • 背面は黒褐色で、しばしば正中部に黒色の縦条が走る。腹面は黄色[1, 3]。
  • 体鱗は虹色の光沢を帯び、胴中央で23列(ごくまれに21列)[5]。
  • 腹板はオス157–171枚、メス174–191枚[5]。
  • 尾下板は1列に並び、オスで90–98枚、メスで67–85枚[5]。

[似た種との違い]

  • 背面が黒褐色で腹面が黄色という独特の色合いにより、同じ地域に生息するほとんどの他のヘビの種と区別できる。
  • 本種と同様に背面が黒っぽく、腹面が淡色のガラスヒバァとは、アマミタカチホヘビでは背面が一様に黒褐色であるのに対し、ガラスヒバァでは背面に黄色あるいはクリーム色の横帯が入ることで区別できる。
生態

[食性]

  • ミミズ類を捕食する[6, 7]。

[捕食者]

  • アカマタ、ハブ[6]、ヒメハブ、ハイ[7]による捕食例がある。

[繁殖]

  • 卵生で、3–8個の卵を生む。輸卵管卵をもつ個体は4月上旬から6月上旬に見られ、5月中旬には産卵も観察されている[5]。

[行動]

  • 日中は倒木や石の下に潜み、夜間に林床を移動しミミズ類を捕食する[1]。
  • 動きはゆっくりとしており、何度か脅かすとボール状に体を丸める[1]。

執筆者:藤島幹汰


引用・参考文献

  1. 千木良芳範,2017.アマミタカチホヘビ.沖縄県文化環境部自然保護課(編),沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)-動物編- 第3版,pp. 207.沖縄県文化環境部自然保護課,那覇.
  2. Van Denburgh, J. 1912. Advance Diagnoses of New Reptiles and Amphibians from the Loo Choo Islands and Formosa.  San Francisco: Privately Printed.
  3. Ziegler T, Nguyen TQ, Pham CT, Nguyen TT, Pham AV, Schinegen MV, Nguyen TT, Le MD. 2019. Three new species of the snake genus Achalinus from Vietnam (Squamata: Xenodermatidae). Zootaxa4590(2), 249-269.
  4. Miller, A. H., Davis, H. R., Luong, A. M., Do, Q. H., Pham, C. T., Ziegler, T., … & Nguyen, T. Q. 2020. Discovery of a New Species of Enigmatic Odd-Scaled Snake (Serpentes: Xenodermidae: Achalinus) from Ha Giang Province, Vietnam. Copeia108(4), 796-808.
  5. 太田英利, 2014. アマミタカチホヘビ. “改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物 -レッドデータブック- (爬虫類・両生類)”, 環境庁自然保護局野生生物課(編), 自然環境研究センター, 東京, pp. 80.
  6. Mori A, Moriguchi H. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. The Snake 20:98-113.
  7. 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.