カジカガエル

Buergeria buergeri (Temminck et Schlegel, 1838)

両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > カジカガエル属

  • 成体 / Adult
概要

[大きさ] 

  • 体長  3.5–7.5cm メスが著しく大きい

[説明]

  • アオガエル科に属するカエルの一種。本州、四国、九州に生息する。色彩は灰褐色~黄褐色で、斑紋が散在する。オスは夏期に渓流の石の上などで「フィーフィーフィー…」と美しい声で鳴く。4-7月に水中の石の下などに500個ほどの卵を産む。クモや小昆虫などを捕食する。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト(2020)未掲載。湯原(岡山県)や南桑(山口県)のカジカガエル生息地は国指定の天然記念物。[1]
分布

[分布]

  • 本州、四国、九州

[生息環境]

  • 渓流付近にの森や崖に生息する。深山の源流部ではなく、浅い瀬が広がるような上流域によく見られる。[2]
分類

[タイプ産地] 

  • 日本

[説明]

  • Hyla bürgeriとして1836年に記載された。
  • 遺伝的には東日本(青森~岐阜)、近畿(滋賀~兵庫)、西日本(岡山以西。四国と九州を含む)の3集団が認められる。また、広島と青森の個体を比較すると成体・幼生ともに形態に違いがあり、またそれらの集団間で交雑させると上手く成長できない子供が多いため、別種レベルに分化していることが示唆されている。しかし多くの地点を扱った詳しい分類学的検討はまだ行われていない。[3, 4]
体の特徴

[形態]

  • 体は灰色で、河川の石の色によく似ている。
  • やや扁平な体型をしている。指先は樹上性の蛙らしく逆三角形に少し広がる。

[似た種との違い]

  • 成体:カジカガエルの分布域に似たカエルはいない。石のような灰色の体色や、鳴き声が特徴的。
  • 幼生:生息環境が特徴的で、河川上流域の浅瀬で見られるオタマジャクシはまずいない。口が大きく、川底に接するよう下を向いていること、また目に十字模様が目立つことなども見分けるポイントになる。
生態

[食性]

  • 繁殖期には昆虫、特にその時期に渓流環境に多いガガンボを主要な餌とする。他にクモ、ムカデも捕食する。[5]

[繁殖]

  • 4月~7月に渓流の浅瀬で繁殖する。[2]
  • オスは岩の上で鳴き、メスを待つ。この時オスは狭い縄張りをもち、そこに侵入してきた他個体がいれば抱きついて水中に落とそうとする。[2, 6]
  • オスと抱接したメスは産卵場所を求めてしばらく動き回り、浅瀬の石の下に産卵する。産卵後のメスはすぐ陸場に帰ってゆくため、ふつう二日ほどしか渓流中にいない。[7]

[卵]

  • 渓流の石の下に200~600個ほどの卵をまとめて産みつける。[2]

[幼生]

  • 体色は暗灰色で、灰褐色~褐色の斑紋が見られることが多い。目には十字型の模様が見られる。
  • 口は大きく、底を向いている。この口器で川底の石に吸い付く。
  • 変態時期は7月から9月で、変態時の大きさは15 mmほど[2]。
  • ヒバカリやヤマカガシといった蛇、そしてアオグロハシリグモなどの捕食されるらしい[2]。
その他

[文化]

  • 知らなければカエルとは思えない美しい鳴き声は古くから和歌に詠まれた。古今和歌集の序文の一節「花に鳴く鶯、水に住むかはづの声を聞けば、生きとし生けるものいづれか歌をよまざりける」に見られる「かはづ」はカジカガエルを指すといわれる。

[コメント]

  • ほぼ全国で見られ数も少なくありませんが、特に非繁殖期の生態についてはほとんど調べられていないようです。
  • 初夏、涼しげな流れからカジカガエルの綺麗な声が聞こえると心が浮き立ちます。

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. 文化庁 国指定文化財等データベース. In: 国指定文化財等データベース. https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index. Accessed 28 Feb 2021
  2. 日高敏隆(監修) (1996) 日本動物大百科 両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社
  3. Ueda H, Hasegawa Y, Marunouchi J (1998) Geographical Differentiation in a Japanese Stream-Breeding Frog, Buergeria buergeri, Elucidated by Morphometric Analyses and Crossing Experiments. Zoolog Sci 15:615–622
  4. Nishizawa T, Kurabayashi A, Kunihara T, et al (2011) Mitochondrial DNA diversification, molecular phylogeny, and biogeography of the primitive rhacophorid genus Buergeria in East Asia. Mol Phylogenet Evol 59:139–147
  5. 佐野誠., 篠原正典 (2012) カエル類 7 種における繁殖生態と食性の関係性について. 帝京科学大学紀要 8:101–111
  6. Fukuyama K (1992) Reproductive ecology and life history of a stream-breeding frog, Buergeria buergeri. 東京都立大学 博士論文.
  7. Fukuyama K, Kusano T, Nakane M (1988) A Radio-tracking Study of the Behaviour of Females of the Frog Buergeria buergeri (Rhacophoridae, Amphibia) in a Breeding Stream in Japan. Japanese Journal of Herpetology 12:102–107