ナンヨサンショウウオ

Hynobius oni Kanamori, Nishikawa, Matsui et Tanabe, 2022

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

  • オス(愛媛県)
概要

[大きさ] 

  • 頭胴長 7.5–8.5 cm
  • 全長 13.5–15.5 cm程度 

[説明]

  • 日本の小型サンショウウオ類では大型種。
  • 体色は暗赤褐色で模様をもたないことが多い。
  • 近縁のイシヅチサンショウウオとは本種の方が小型である点などが異なる。
  • 山地の林床に生息する。
  • 四国南西部の山地に固有の種。
分布

[分布]

  • 四国南西部

[生息環境]

  • 山地の森林に生息する[1]。
分類

[タイプ産地] 

  • 愛媛県宇和島市[1]

[説明]

  • かつては、オオダイガハラサンショウウオやイシヅチサンショウウオとされていたが[2][3]、2022年に遺伝子情報と形態情報を用いてイシヅチサンショウウオの分類学的再検討が行われ、本種はイシヅチサンショウウオと異なる新種として記載された[1]。
  • ミトコンドリアDNAを用いた解析では、本種はチュウゴクブチサンショウウオと最も近縁となっている[1]。
体の特徴

[形態][1]

  • 日本の小型サンショウウオとしては大型。背面は暗赤褐色で、模様はない。腹面は背面よりも体色が明るい。
  • 肋条は12~13本で13が普通。肢は短く、前後の肢を体側に沿って伸ばしても、重ならない。第五趾は発達する。鋤骨歯列は浅い。

[似た種との違い][1]

  • 成体は大きく、また斑紋をもたないことが特徴で、イシヅチサンショウウオを除くと四国に分布する種で似たものはいない。本種はイシヅチサンショウウオに比べ頭胴長が短く、相対的な尾の長さや胴の長さも短い。また、本種と同所的に生息するサンショウウオの種はこれまで見つかっていない。
生態

[繁殖][1]

  • 繁殖期は4月下旬と推測されており、山地の渓流で行われる。

[卵][1]

  • 卵嚢は渓流の石の下に産み付けられる。三日月型で、石などに付着しない方の一端が鞭のように細長く伸びる。卵は5–6mmほどと大きく、クリーム色をしている。

[幼生][1]

  • 幼生は淡褐色で、黒褐色の斑紋をもつ。流水性だが指先に爪をもたない。越冬幼生も見つかっているが、イシヅチサンショウウオと比べると越冬幼生の出現頻度は低いとされる。
その他

[コメント]

  • イシヅチサンショウウオと比べてやや小型で、可愛らしい種小名と姿をしています。

執筆者:福山伊吹


引用・参考文献

  1. Kanamori, S., Nishikawa, K., Matsui, M., & Tanabe, S. (2022). A new species of lotic breeding salamander (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) from Shikoku, Japan. PeerJ, 10, e13891.
  2. 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.
  3. 佐藤井岐雄. 1943. 日本産有尾類総説. 日本出版社. 大阪. 536p.