ヒバカリ

Hebius vibakari vibakari (Boie, 1826)

爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ユウダ亜科 > ヒバカリ属 > ヒバカリ

  • 京都府
概要

[大きさ] 

  • 全長47〜57 cm。

[説明]

  • 小さくかなり細いヘビ。無毒。頭に対して目は大きめで、瞳孔は丸い。背面は茶色で首に白いえりのような模様がある。腹面は薄いクリーム色。無害でおとなしいヘビだが、俗説では猛毒を持つと信じられ、和名は「噛まれたら命はその日ばかり」という言葉に由来する[6]。森林や草地の小川沿い、水田、湿地など水辺でよく見られる。地表性だがよく泳ぐ。高温に弱く、暑い日中は休んで朝や夕方に活動することが多い。小型のカエルやオタマジャクシ、小魚、ミミズを捕食する。7〜8月に4〜10卵を生む。

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック指定:なし
  • 都道府県レッドデータブック指定:絶滅危惧Ⅱ類(青森、東京、大阪)
  • 環境の良い森林や水辺、水田の減少による生息地の縮小と餌動物の減少が本種にとっての主な脅威である。各地で個体数、生息域ともに減少傾向にあると考えられる。
分布

[分布]

  • 種ヒバカリの日本固有亜種で、本州・四国・九州・佐渡島・隠岐・壱岐・五島列島・下甑島・屋久島に分布。伊豆諸島(三宅島、御蔵島)に移入。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ユウダ亜科 > ヒバカリ属 > ヒバカリ(種) > ヒバカリ(亜種)

[タイプ産地] 

  • 日本 (採集者:Blomhoff)[2]

[説明]

  • 本種はかつてAmphiesma (Duméril et Bibron, 1854)に含められていたが、Guo et al. (2014)[1]の分子系統学的再検討によりAmphiesmaの多くの種がHebius (Thompson, 1913)に分類されることとなった。亜種に男女群島の男島に生息するダンジョヒバカリ H. v. danjoensis (Toriba, 1986)と、中国(黒竜江省)、朝鮮半島、ロシア南東部に生息するタイリクヒバカリ H. v. ruthveni (Van Denburgh, 1923)がある。
体の特徴

[形態]

  • 全長:47〜57 cm(尾は体長の約1/4を占める)[6]
  • 体鱗列数19。体鱗は最も外側は平滑だがその他は明瞭なキールがある。腹板数は146〜153、肛板は1対、尾下板数は63〜83対[2]
  • 上唇板は7〜8枚で、内2枚は眼に接する。体鱗には最も外側の1〜2列を除いて明瞭なキールがある[2]
  • 背面は赤褐色で、頭頂、体の前方及び体の背中線は暗褐色である。腹面は頸部より前では黄色で胴と尾では淡黄緑色。その両端に黒褐色の点が1列ずつ並ぶ[2, 6]。
  • また、口角から後頭部にかけて伸びて背中の中央で途切れる、白、あるいは黄色のえり状の模様が入るのが特徴である[6]。
  • 上唇は黄色を呈し、各上唇板の境界は黒い。眼は大きく、瞳孔はわずかに縦方向に長い楕円形。虹彩はオレンジ色[6]。
  • 同じく小型のヘビであるタカチホヘビとは、本種の方が眼が明らかに大きく、半地中生のタカチホヘビに特徴的な虹色光沢がないという点で見分けられる。またタカチホヘビは背中の中央に黒線が入り、尾下板が1列並ぶ(ヒバカリ含め多くのヘビは2列)といった違いもある。
  • 同じユウダ亜科に含まれるヤマカガシの幼蛇とは地域によってはよく似ている場合がある。しかし、ヤマカガシの後頭部の模様は背中でつながっていて輪っか状になっているという違いがある。
生態

[活動性]

  • ヒバカリは直射日光下で発見されることがほとんどなく、薄暮に見つかることが多い[9]。
  • 京都府で本種の活動体温を調べた研究では、4〜6月と9〜11月に発見され、真夏は見つからなかった[8]。これは主に昼間に調査をおこなったことが要因である可能性があると述べられている。活動体温の範囲は17.5〜33.0°Cで、平均は6月に最大で29.24°C、4、5、9、10月は24°C程度で、11月には21.93°Cであった。
  • 神奈川県の水田地帯で調査をおこなった研究では、本種は5〜10月に見られ、17〜19時に多く発見された[9]。

[食性]

主にカエル類とその幼生を捕食するほか、サンショウウオ類、魚類、ミミズ類の捕食例がある。以下、捕食例[3–5, 7, 9]。

  • ミミズ類
  • ヌマガエル
  • ニホンアマガエル
  • トノサマガエル
  • トウキョウダルマガエル
  • タゴガエル
  • シュレーゲルアオガエル
  • 未同定のカエルの幼生
  • ホクリクサンショウウオ
  • オカダトカゲ(三宅島の移入個体)
  • ドジョウ
  • ホトケドジョウ

[捕食者]

  • ニホンマムシ、シロマダラ、シマヘビといったヘビ類のほか、サシバ、モズといった鳥類による捕食例がある[11]。

[繁殖]

  • 京都府では5〜6月に、求愛行動や、メス1個体に対しオス〜6個体が絡みついてボール状になる集団交尾が観察された。7〜8月にかけて4〜10卵を生む。仔は全長約15 cm[10]。

執筆者:藤島幹汰(最終更新2024年11月29日)


引用・参考文献

  1. Guo, P., F. Zhu, Q. Liu, L. Zhang, J. X. Li, Y. Y. Huang and R. A. Pyron. 2014. A taxonomic revision of the Asian keelback snakes, genus Amphiesma (Serpentes: Colubridae: Natricinae), with description of a new species. Zootaxa 3873:425–440.富田京一. 2011.山渓ハンディ図鑑10日本のカメ・トカゲ・ヘビ.山と渓谷社,東京.pp.196-198.
  2. 牧茂一郎.1933.原色版日本蛇類圖説.第一書房,東京.pp.36-37.
  3. 浜中京介,森哲,森口一. 2014.日本産ヘビ類の食性に関する文献調査.爬虫両棲類学会報2014(2):167-181.
  4. 竹内寛彦,江頭幸士郎. 2017.ヒバカリHebius vibakariによるタゴガエルRana tagoiの捕食例.爬虫両棲類学会報2017(1):53-54.
  5. 佐藤広康. 2017.ヒバカリによるホクリクサンショウウオ捕食例.爬虫両棲類学会報2017(1):55-56.
  6. 中村健児, 上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 大阪. pp.163–164.
  7. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. Snake 20(2): 98-113.
  8. Fukada H. 1989. Body temperatures of snakes in the fields 2. Rhabdophis tigrinus, Elaphe climacophora, Amphiesma vibakari, and Elaphe conspicillata. Japanese Journal of Herpetology 13:29-34.
  9. 森口一, 内藤聡. 1982. ヒバカリ Amphiesma vibakari (Boie)とヤマカガシ Rhabdophis tigrinus (Boie)の活動性および食性. The Snake 14:136–142.
  10. Fukada H. 1992. Snake life history in Kyoto. Impact Shuppankai. Tokyo.
  11. Tanaka, K., & Mori, A. (2000). Literature survey on predators of snakes in Japan. Current herpetology19(2), 97-111.