アカイシサンショウウオ

Hynobius katoi Matsui, Kokuryo, Misawa et Nishikawa, 2004

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

  • 成体(静岡県)
概要

[大きさ] 

  • 全長 9–12 cm [3] 頭胴長 5.5–6.5 cm [2]

[説明]

  • 赤石山脈南部に分布する、渓流性の小型サンショウウオ。体色は一様な黒紫色で、斑紋をほとんど持たない。これまで卵や幼生が野外で見つかった例は無く、産卵から変態までを地下の伏流水中で行うものと考えられている。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020 絶滅危惧ⅠB類(EN)
  • 山梨県および長野県の希少指定野生動植物種
分布

[分布]

  • 中部地方南部から東海地方にかけて(静岡、長野、山梨、愛知) [4]

[生息環境]

  • 標高500-1200mの山地に生息する。成体や幼体は、河川源流部の岩や倒木の下、礫間、あるいは落葉の下で見られる。[1,3]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > アカイシサンショウウオ

[タイプ産地][2] 

  • 静岡県藤枝市

[説明]

  • かつては「ヒダサンショウウオ無斑型」として扱われることもあったが、形態的・遺伝的に明瞭に異なることから2004年に新種記載された。なお、系統的にはヒダサンショウウオとは全く異なり、イシヅチサンショウウオやチュウゴクブチサンショウウオに近縁であるようだ 。[2,5]
  • 学名は発見者である京都大学の加藤真氏への献名。[2]
体の特徴

[形態][2]

  • 体色は黒紫色で、模様は無いか、あっても部分的に銀白色の小点が散る程度。銀小点は幼体で多い。
  • 渓流性サンショウウオの中では小型の部類。鋤骨歯列は浅いU字型。肋条数は12または13。第5趾は短く、完全にない個体もいる。

[似た種との違い]

生息地ではヒガシヒダサンショウウオと同所的に見られるが、以下の点で区別できる。

体色成体の体長助骨歯列
アカイシ模様は無いか、あっても銀小点が散る程度小さい(頭胴長 5.5–6.5 cm)浅い
ヒガシヒダふつう黄色の斑紋を持つ大きい(頭胴長 7.5–9.5 cm)深い

生態

[繁殖]

  • これまでに卵が見つかったことはなく、産卵期や産卵場所の詳細は不明。しかし4–5月に抱卵している雌が見つかったことから、春に人目につかない地下の伏流水中で繁殖すると考えられている。[2]

[卵]

  • 一個体あたりの蔵卵数は9–13個と極めて少ない。[2]

[幼生]

  • 幼生は野外で発見されておらず、おそらく変態まで地下で過ごすと考えられている。[2]
その他

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. 北野聡., 高田孝慈, 樽井奈々子, 山岸亜矢, 近藤絹代, 山本雅道 (2016): 飯田市遠山川流域におけるアカイシサンショウウオの周年調査の記録. 長野県環境保全研究所研究報告 (12): 45–49.
  2. Matsui, M., Kokuryo, Y., Misawa, Y., Nishikawa, K. (2004): A new species of salamander of the genus Hynobius from Central Honshu, Japan (Amphibia, Urodela). Zoological Science 21 (6): 661–669.
  3. 松井正文 (2014): アカイシサンショウウオ. レッドデータブック2014 – 日本の絶滅のおそれのある野生生物 -, 3 爬虫類・両生類, p. 120. 環境省自然環境局野生生物課希少野生種保全推進室編. 東京, ぎょうせい.
  4. 中津元樹, 島田知彦 (2019): 愛知県におけるアカイシサンショウウオの記録. 爬虫両棲類学会報 2019 (2): 137–141.
  5. Tominaga, A., Matsui, M., Nishikawa, K. (2019): Two new species of lotic breeding salamanders (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) from western Japan. Zootaxa 4550 (4): 525

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