ヒガシヒダサンショウウオ

Hynobius fossigenus Okamiya, Sugawara, Nagano et Poyarkov, 2018

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

  • 成体 / Adult
概要

[大きさ] 

  • 全長 10–14 cm

[説明]

  • 黒紫色の地色に黄色の小斑点が散るという体色が特徴。
  • 山地に棲む流水性の小型サンショウウオ。
  • かつてヒダサンショウウオとされていたが、別種と判断され、2018年に新種記載された。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
分布

[分布]

  • 関東西部から愛知にかけて

[生息環境]

  • 標高300~1100mの山地に分布する。渓流付近の倒木の下や石の下などから見つかる。[1]
分類

[タイプ産地] 

  • 日の出町(東京都)

[説明]

  • 種小名のfossigenusは「フォッサマグナで生まれた」の意。本種がフォッサマグナによる地理的隔離が原因で種分化したと考えられていることに由来する。[1]
  • 中部~西日本に分布するヒダサンショウウオとは遺伝的、細胞学的、形態的、生態的な違いがあることから2018年に新種として記載された。[1]
体の特徴

[形態]

  • 地色は黒紫色で、背面には多数の小さな黄色斑が散らばる。
  • 全肋条はふつう13本。四肢は短く、体側に沿って伸ばしても触れ合わない。鋤骨歯列は深いU字型。[1]

[似た種との違い]

  • 東海〜中部地方南部ではアカイシサンショウウオと同所的に分布する。アカイシサンショウウオは本種とは異なり背面に黄色の斑点を持たない。また、本種はアカイシと比べて大型で、助骨歯列が深いといった形態的な差もある。[2]
ヒガシヒダサンショウウオ
  • 近縁のヒダサンショウウオとも似るが、分布域は重複しない。本種はヒダサンショウウオと比べると、大型で、背面の黄色斑点が密でないことが多く、また鋤骨歯列が浅いといった違いがある。[1, 3]
生態

[繁殖]

  • 繁殖期は東京都で2~4月[1]

[成長]

  • 東京都での調査によれば、オスは5歳、メスは7歳で成熟し繁殖に参加するようになる。野外で14歳の個体も見つかっている。[4]

[卵]

  • 卵は、水中で青い光彩をもつ丈夫な膜に包まれている。膜の一端は岩などに付着し、もう一方は鞭状にやや伸長する。[1]
  • 2か月ほどで孵化する[5]

[幼生]

  • 幼生の一部は年内に変態して上陸するが、多くは水中で越冬し、より大きく成長したのちに翌年の5~6月に変態する。なお、ヒダサンショウウオ(H. kimurae)では年内に変態が完了するようだ。[5, 6]
その他

[コメント]

  • 深みのある体色が美しい小型サンショウウオです。卵のう外皮は水中で光を反射し、青白く光りますが、空気中にとりだすとただ透明なだけです。不思議です。

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. Okamiya H, Sugawara H, Nagano M, Poyarkov NA (2018) An integrative taxonomic analysis reveals a new species of lotic Hynobius salamander from Japan. PeerJ 6:e5084
  2. Matsui M, Kokuryo Y, Misawa Y, Nishikawa K (2004) A new species of salamander of the genus Hynobius from Central Honshu, Japan (Amphibia, Urodela). Zoolog Sci 21:661–669
  3. Matsui M, Misawa Y, Nishikawa K (2009) Morphological Variation in a Japanese Salamander, Hynobius kimurae (Amphibia, Caudata). Zoolog Sci 26:87–95
  4. Misawa Y, Matsui M (1999) Age Determination by Skeletochronology of the Japanese Salamander Hynobius kimurae (Amphibia, Urodela). Zoolog Sci 16:845–851
  5. Misawa Y, Matsui M (1997) Larval Life History Variation in Two Populations of the Japanese Salamander Hynobius kimurae (Amphibia, Urodela). Zoological Science 14:257–262
  6. Jo T, Tomita S, Kohmatsu Y, et al (2020) Seasonal monitoring of Hida salamander Hynobius kimurae using environmental DNA with a genus-specific primer set. Endanger Species Res 43:341–352

「ヒガシヒダサンショウウオ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: トウキョウサンショウウオ – Web両爬図鑑

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