オオシマトカゲ

Plestiodon oshimensis (Thompson, 1912)

  • オオシマトカゲ

爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ科 > トカゲ属 > オオシマトカゲ

概要

[大きさ] 

  • 頭胴長:60–90 mm
  • 尾長は頭胴長の130–160%
  • 特に徳之島の集団には大型の個体が多い[1]

[説明]

  • 奄美諸島、トカラ列島に分布
  • 海岸沿いから低地の開けた場所でみられる
  • イタチやマングースなどの侵入によって個体数が激減している

[保全状況]

環境省レッドリスト(2020): 準絶滅危惧 (NT)

分布

[分布]

与論島と沖永良部島を除く奄美諸島の島々、トカラ列島の宝島、小宝島、小島、諏訪之瀬島、沖縄県の 硫黄鳥島 [1,9]

[生息環境]

海岸沿いから低地の開けた場所でみられる[10]

分類

[分類]

爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ科 > トカゲ属 > オオシマトカゲ

[タイプ産地] 

喜界島

[説明]

  • 本種は1912年にEumeces oshimensis と命名されて以降、近隣の島嶼の個体群との関係が不透明な時期が続いた。1990年頃、奄美諸島(沖永良部島を含む)とトカラ列島南部 (宝島と小宝島) に分布する個体群においては、疋田努氏らによってEumeces marginatus oshimensis つまりオキナワトカゲの亜種として位置付けられることとなった[11]。一方、トカラ列島北部(口之島、中之島、諏訪之瀬島)に分布する集団に関しては、当初E. latiscutatus(現在はオカダトカゲの種小名だが、当時はニホントカゲの学名であった)とされていたが、体列鱗数の違いやアロザイム分析から、この集団がニホントカゲではなくオキナワトカゲと考えるべきであるとされた[8]。こうして、トカラ列島、奄美諸島に分布する集団はオキナワトカゲの亜種であるオオシマトカゲであると長らく考えられてきた。しかし2014年、栗田和紀氏を中心とした研究によって、口之島に分布する集団に関してはクチノシマトカゲPlestiodon kuchinoshimensis[3]、 諏訪之瀬島、トカラ列島南部そして奄美群島(沖永良部島、与論島を除く)に生息する集団はオオシマトカゲ Plestiodon oshimensis として別種扱いすべきであることが判明した[4]。これにより、中之島、沖永良部島、与論島、そして沖縄諸島に分布する集団がオキナワトカゲであることが明らかになったが、このような興味深い分布は、黒潮の流れによった海上分散に起因すると考えられている[4]。
  • 系統的にはオキナワトカゲに最も近縁である[4]。
体の特徴

[形態]

  • 幼体は背面に5本の白い縦条をもち、尾は空色
  • 宝島の集団では幼体の尾の基部が黄色っぽくなる
  • 成体になるにつれて尾の色や縦条は薄れて暗褐色になるが、メスでは幼体時の体色が残る
  • 成体オスでは、眼の後ろから尾にかけて茶褐色の縦条が入る
  • 体鱗列数は通常26列だが、島嶼間で 24-30 列の変異がある。硫黄鳥島の集団では34列にもなる

[似た種との違い]

  • 元々亜種の関係にあると考えられていたオキナワトカゲとの識別は成体においては非常に難しいとされるが、一応鱗の状態で見分けることは可能であるとされる。上体側において胴中 央部で各ストライプが通る体鱗の位置(以下DLL)がオオシマトカゲでは第1眼上板 から始まるのに対し、オキナワトカゲでは第1上睫板から始まる点が識別点となる[4]。若齢個体では両種の判別はより簡単で、尾の上に伸びる淡色縦条が基部の 1/3 程度までしかない点で見分けることができる[1]。
オオシマトカゲオキナワトカゲ
  • また、同じくトカラ列島に分布するクチノシマトカゲとはDLLが第1眼上板 から始まる点(クチノシマトカゲは眼上板の後から始まる)、幼体は背面に黒色で明瞭なストライプをもつ点(クチノシマトカゲは幼体の背面が褐色で、そのストライプが成長段階の早期に失われる)で判別が可能である[2,3]。
生態

[食性]

昆虫やクモ類、ミミズ等を捕食する。宝島では、ヘリグロヒメトカゲを捕食することが報告されている[10]。

[被食]

爬虫類ではハブやアカマタの捕食例がある[6,7]。その他にも鳥類や大型の哺乳類に捕食されていると考えられ、島によっては導入されたニホンイタチやフィリマングースによる捕食が問題視される[1]。

[繁殖]

7月に産卵した例がある。斜面の穴などに18㎜ほどの白い卵を7個ほど産み、メスはその巣穴に留まる[5]。

その他

[保全]

イタチやマングースなどの侵入によって、特に小さな島では個体数が激減している[1]。平島と臥蛇島、悪石島では、ネズミ駆除の目的で導入されたニホンイタチの影響で生息していたオオシマトカゲが絶滅したとされている[2]。

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. 疋田努(2017). 環境省レッドリスト 2017 補遺資料.オオシマトカゲ.
  2. 栗田和紀. (2014). オキナワトカゲの系統地理学および集団遺伝学.
  3. Kurita, K., & Hikida, T. (2014). A New Species of Plestiodon (Squamata: Scincidae) from Kuchinoshima Island in the Tokara Group of the Northern Ryukyus, Japan. Zoological science31(7), 464-474.
  4. Kurita, K., & Hikida, T. (2014). Divergence and long-distance overseas dispersals of island populations of the Ryukyu five-lined skink, Plestiodon marginatus (Scincidae: Squamata), in the Ryukyu Archipelago, Japan, as revealed by mitochondrial DNA phylogeography. Zoological science31(4), 187-194.
  5. 松井正文&森哲.(2021). 新 日本両生爬虫類図鑑.サンライズ,滋賀.
  6. 三島章義. (1966). 奄美群島産アカマタの食性に関する研究. 爬蟲兩棲類學雑誌1(4), 75-81.
  7. 三島章義. (1966). ハブに関する研究: I. 奄美群島産ハブの食性について. 衛生動物17(1), 1-21.
  8. Motokawa, J., & Hikida, T. (2003). Genetic variation and differentiation in the Japanese five-lined skink, Eumeces latiscutatus (Reptilia: Squamata). Zoological science20(1), 97-106.
  9. Motokawa, J., Toyama, M., & Hikida, T. (2001). Genetic relationships of a morphologically unique population of the genus Eumeces (Scincidae: Squamata) from Iotorishima Island, Ryukyu Archipelago, as revealed by allozyme data. Current herpetology20(2), 69-76.
  10. 関慎太郎, & 疋田努. (2016). 野外観察のための日本産爬虫類図鑑. 緑書房,東京.
  11. Uetz, P., Freed, P, Aguilar, R. & Hošek, J. (eds.) (2021) The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 09/09/2021.