Rhabdophis tigrinus (Boie, 1826)
爬虫綱 > 有鱗目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ユウダ亜科 > ヤマカガシ属 > ヤマカガシ
概要
[大きさ]
[説明]
頭のサイズに対し、目のサイズが大きく、瞳孔は丸い。眼上板(目の上の鱗)が張り出し、目つきが鋭い。背中の鱗にはキール(隆起)がありざらつく。
背面は黒色と赤色が大部分を占め、これに加えて黄色、緑褐色の斑紋が入る。頸部には黄色い斑紋があり、幼蛇ではこれらの模様がとくに目立つ。腹面は白~黄色に加え、黒色を呈するものが多い。体色は地域差が非常に大きい。
有毒種。デュベルノイ腺という毒腺にタンパク毒が蓄積されている。奥歯がデュベルノイ腺とつながっており、咬まれた際に毒が注入されると中毒症状を呈する。
首の皮下に頸腺という器官をもち、強心性ステロイドの一種であるブファジェノライドという毒を蓄積する。ヤマカガシはブファジェノライドを自分で合成するのではなく、餌のヒキガエルから吸収し、利用する。
平地から山地近くの水田や湿地、川といった、餌となるカエルや魚が多い水辺でよく見られる。
カエルやオタマジャクシ、魚などを捕食する。毒を持つヒキガエルを捕食することで知られる。
6~8月に2~40個ほど産卵する。
[保全状況]
環境省レッドデータブック指定:なし
都道府県レッドデータブック指定:絶滅危惧I種(東京都)、準絶滅危惧種(栃木県、埼玉県、千葉県、京都府、大阪府、奈良県、愛媛県)、情報不足(滋賀県、愛知県)、その他(神奈川県)[5]
環境の良い森林や水辺、水田の減少による生息地の縮小と餌動物の減少が本種にとっての主な脅威である。各地で個体数、生息域ともに減少傾向であると考えられる。
分布
[分布]
本州、四国、九州とその周辺の島々(佐渡島、隠岐、壱岐、五島列島、屋久島、種子島等)[1]
[生息環境]
平地から山地近くの水田や湿地、川といった、餌となるカエルや魚が多い水辺でよく見られる[1]。
分類
[分類]
爬虫綱 > 有鱗目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ユウダ亜科 > ヤマカガシ属 > ヤマカガシ
[タイプ産地]
Dejima of Nagasaki City, eastern Kyushu, Japan[6]
[説明] [3,6]
ヤマカガシは、1826年に長崎の標本を基に、Tropidonotus tigrinus という独立種として記載された。またBerthhold (1859) において中国の個体群が別種のTropidonotus lateralis として記載された。その後、Stejneger (1907) によってTropidonotus は Natrix のシノニムとされ、T. lateralis はNatrix tigrinus の亜種、Natrix tigrina lateralis とされた。またその後Maki (1931) によって台湾の個体群が亜種N. tigrinus formosanus として記載された。その後分子系統学的、形態学的な研究により、ヤマカガシを含む数種は1960年にMalnateらによってRhabdophis (Fitzinger 1843) として分けられた。
Takeuchi et al. (2012) によるmtDNAの塩基配列を指標とした系統解析の結果から亜種間の遺伝的距離が同属他種と同程度に大きいと推測され、これまで亜種とされていたR. lateralis とR. formosanus は独立種として分割された。
生態
[食性] [8]
主にカエルやオタマジャクシ、魚などを捕食する。詳細は以下に記載。
無尾類(ニホンヒキガエル、アズマヒキガエル、ヒキガエルの一種、ナガレヒキガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエル、ウシガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、タゴガエル、ヤクシマタゴガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル)
有尾類(トウホクサンショウウオ、ブチサンショウウオ幼生、カスミサンショウウオ、ハコネサンショウウオ)
魚類(ドジョウ)
その他
[毒性]
毒蛇で、2種類の毒を持っている。
1つはヤマカガシ自身で作るタンパク毒であり、デュベルノイ腺という毒腺に蓄積されている。奥歯がデュベルノイ腺とつながっており、咬まれた際に毒が注入されると中毒症状を呈する。近年まで本種は毒蛇とは認識されていなかったが、1971年に起こった咬傷による死亡事故により毒蛇との認識が広まった。現在までに3件の死亡例と20件以上の重症例が確認されている[11,12]。しかしながら気性が大人しく、毒牙が非常に短いため、同じ毒蛇のニホンマムシなどと比べると、本種に咬まれて毒が入ることは少ない。
もう1つの毒は、ヒキガエルを食べてヒキガエルの毒を取り込むことで作られる。本種は頸部の皮下に頸腺という器官をもち、強心性ステロイドの一種であるブファジェノライドというヒキガエル由来の毒を蓄積する。頸腺は防御行動に用いられることが示唆されており、外敵に対して頸部をアピールする行動を示すことがある[9]。刺激が加わると皮膚が破れて中の毒液が飛び散ることもあり、目に入った場合は結膜炎などの症状を引き起こすとの報告がある[10]。頸腺はRhabdophis 属の17種のみに見られる[14]。
執筆者:福田将矢
最終更新:2025年8月16日
引用・参考文献
関慎太郎, 疋田務 2014野外観察のための爬虫類図鑑
日本中毒情報センター【ヤマカガシ(咬傷)】Ver 1.00
Takeuchi et al. 2012 Extensive genetic divergence in the East Asian natricine snake, Rhabdophis tigrinus(Serpentes: Colubridae), with special reference to prominent geographical differentiation of the mitochondrial cytochrome b gene in Japanese populations. Biol J Linn Soc 105:395-408,
日本爬虫両棲類学会. 2019. 日本産爬虫両生類標準和名リスト. <http://herpetology.jp/wamei/index_j.php>, 参照 2019-02-01
野生生物調査協会&EnVision環境保全事務所. 2017. 日本のレッドデータ検索システム-ヤマカガシ. < jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=04020060076>, 参照 2019-02-01.
THE REPTILE DATABASE, 参照 2019-02-01.
Goris et al. 1971 Geographic variation in color and pattern of Rhabdophis tigrinus (BOIE) The SNAKE 3:57-59
浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の植生に関する文献調査. 爬虫両生類学学会報. 2014(2):167-181
Mori et al. 2012 Nuchal glands: a novel defensive system in snakes. Chemoecology 22:187-198
川本文彦, 熊田信夫. 1989. 自ら経験したヤマカガシ頸腺毒による眼障害. 衛生動物 40:211-212
堺淳, 森口一, 鳥羽通久. 2002 フィールドワーカーのための毒蛇咬症ガイド. 爬虫両棲類学会報 2002(2):75-92
Hifumi et al. 2014. Clinical characteristcs of yamakagashi (Rhabdophis tigrinus) bites: a national survey in Japan, 2000-2013
鳥羽通久. 2002 ヤマカガシの青色型について. 爬虫両棲類学会報 2002(2):68-69
Takeuchi et al. (2018). Evolution of nuchal glands, unusual defensive organs of Asian natricine snakes (Serpentes: Colubridae), inferred from a molecular phylogeny. Ecology and evolution, 8: 10219-10232.
Hosoki et al. (2025). Community science data highlight the vast colour pattern variations in the Japanese natricine snake (Rhabdophis tigrinus ). Zoological Journal of the Linnean Society, 204: zlaf037