ヤエヤマアオガエル

Zhangixalus owstoni (Stejneger, 1907)

両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属 > ヤエヤマアオガエル

概要

[大きさ] 

  • オス:4–5 cm
  • メス:5–6 cm

[説明]

  • 樹上性でやや大型のカエル
  • 低地から山地の水田や湿原周辺の森林に生息する。
  • 石垣島、西表島に分布する。
  • 地上~地中にクリーム色で泡状の卵塊を産むが、石垣島の一部では樹上や樹洞の縁に産卵することもある。
  • 昆虫などを捕食する

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2017未掲載
分布

[分布]

  • 石垣島、西表島
  • 記載論文では宮古島で採集された標本の存在を示唆しているが、その後の記録は無いため、誤りの可能性がある[1]。

[生息環境]

  • 低地から山地にかけての水田、湿地およびその周辺の森林など
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属 > ヤエヤマアオガエル

[学名の意味] 

「Owston氏のアオガエル」と言う意味。標本収集家として知られた明治初期のイギリスの貿易商、アラン・オーストン氏に献名された[1]。

[タイプ産地] 

  • 石垣島[1]

[説明]

  • 1907年にPolypedates owstoniとして記載された後、岡田(1930)によってオーストンアオガエルRhacophorus owstoniとして属が変更された。オーストンアオガエルという名称は現在では使われないことが多い。
  • その後シュレーゲルアオガエルの亜種や、オキナワアオガエルの亜種として扱われるなど分類上の変遷はあったが、鳴声が異なることを根拠に種への格上げが行われ、ヤエヤマアオガエル R. owstoniへと再度変更された[3]。
  • Jiang et al. (2019)は、分子系統解析を元に本種を含む日本や中国などのRhacophorusを新属Zhangixalusへと分類し、本種もZhangixalusへと移動された[5]。
  • ヤエヤマアオガエルは台湾に生息するモルトレヒトアオガエル Z. moltrechti と似た鳴き声の特徴を持つことが知られている[4]。遺伝的にも国内の他のアオガエル類より、モルトレヒトアオガエルの方が近縁である[2]。
体の特徴

[形態][6]

  • 背面は緑色で、腹面は白〜黄色。
  • 腹側の側面や腿の内側に黒点が入る。
  • 体表は滑らかで、突起などは存在しない。

[似た種との違い]

成体は緑色で平滑な背面をしており、同所的に生息する他のカエルと容易に区別ができる。

同所的に生息するカエルの中で、泡状の卵塊を産む種は本種とシロアゴガエルの2種のみである。
ヤエヤマアオガエルの泡巣は白いのに対し、シロアゴガエルの泡巣は茶色っぽくなることが多い。
シロアゴガエルは近年西表島への侵入が確認されており、徹底した防除対策が求められている。

生態

[捕食]

サキシママダラ、サキシマハブに捕食された例がある[7,8,9]

また、卵がヤエヤマヒバァに捕食された例が知られている[10]。

[繁殖][6]

  • 泡巣に包まれた卵を産む。
  • 卵径は2.5mmで全体がクリーム色をしている。
その他

[文化]

  • 個体数は比較的多いと思われ、現在法的な保全は行われていない。生息環境が競合するシロアゴガエルの侵入が、本種に影響を与える恐れがある。
  • 本種の卵塊はよく目立つこともあり、ペット目的での乱獲が懸念される。卵塊ごと持ち帰る行為は個体群の維持に大きなダメージを与える恐れがある。飼育のために捕獲する場合も、必要数だけを少数捕獲するよう心がけたい。

[コメント]

  • 大型で美しく、見かけると嬉しくなるカエルです。個体数は少なくないですが、雨が降らないと案外出会えないことも。
  • 雨が降った日に道路に出てきていることも多いです。雨の日は気をつけて運転するよう心がけたいです。

執筆者:福山亮部


引用・参考文献

  1. Stejneger, L. 1907. Herpetology of Japan and adjacent territory. Bulletin of the United States National Museum 58: 577 pp.
  2. Matsui, M., Kawahara, Y., Nishikawa, K., Ikeda, S., Eto, K., & Mizuno, Y. 2019. Molecular phylogeny and evolution of two Rhacophorus species endemic to mainland Japan. Asian Herpetological Research10(2), 86-104.
  3. 倉本満. 1979. 琉球諸島のカエル類の分布と隔離. 爬虫両棲類学雑誌8(1), 8-21.
  4. 倉本満, & 宇都宮妙子. 1981. 台湾産アオガエル類 2 種の鳴き声および鳴き声からみた琉球諸島の種との関係. 爬虫両棲類学雑誌9(1), 1-6.
  5. Jiang, D., K. Jiang, J. Ren, J. Wu, and J. Li. 2019. Resurrection of the genus Leptomantis, with description of a new genus to the family Rhacophoridae (Amphibia: Anura). Asian Herpetological Research 10: 1–12.
  6. 松井正文・前田憲夫. 2018. 日本産カエル大鑑. 文一総合出版.
  7. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. Snake 20: 98–113.
  8. 浜中京介・森哲・森口一.2014.日本産ヘビ類の食性に関する文献調査.爬虫両棲類学会報.2014(2): 167–181.
  9. 福山伊吹・福山亮部. 2018. サキシマハブおよびサキシママダラの死体食3例. AKAMATA 28: 3–6
  10. Takaeuchi, H. 2018. HEBIUS ISHIGAKIENSIS ( Yaeyama Keelback). DIET. Herpetological Review 49(4): 753.

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です