オガサワラトカゲ

Cryptoblepharus nigropunctatus (Hallowell, 1861)

爬虫綱 > 有鱗目 > トカゲ科 > オガサワラトカゲ属 > オガサワラトカゲ

母島 撮影:山口優輔
概要

[大きさ] 

  • 全長 11 – 14 cm

[説明]

  • 小笠原諸島などに分布
  • 目はヤモリやヘビと同じく、透明な下まぶたが癒合しており、まばたきができない構造になっている
  • 外来種のグリーンアノールの影響で個体数が減少傾向にある

[保全状況]

環境省準絶滅危惧(2021)

分布

[分布]

  • 小笠原群島、硫黄列島、南鳥島

[生息環境]

森林から林縁、草地、沿岸部まで幅広くみられる[3]。主に地上性だが、樹木に登ることもある[3]。

分類

[分類]

爬虫綱 > 有鱗目 > トカゲ科 > オガサワラトカゲ属 > オガサワラトカゲ

[タイプ産地] 

小笠原群島[2]

[説明]

  • 本種が属するオガサワラトカゲ属Cryptoblepharusは約60種が知られており、東アフリカの沿岸部やマダガスカル、インドネシア南部、オーストラリア、ミクロネシア・メラネシア・ポリネシアの島々から南アメリカの西海岸に至るまでかなり幅広く分布することが知られている[3,4]。オガサワラトカゲはこの中でも最北端に分布する種として知られている[4]。
  • 本種は、北太平洋探検の報告書を記したHallowell氏によって1861年、多くの琉球の爬虫両生類と共に記載された[2]。その後、当時は広域分布種であると考えられていた C. boutoniiの亜種として扱われて以降、しばしの間その扱いが続いた。2007年、オガサワラトカゲ属の分類学的検討を行ったHorner氏によって、本種は再び独立種として扱われることになった[5]。
体の特徴

[形態]

  • 背面の体色は灰色や淡灰褐色、褐色で、通常黒褐色または赤褐色の不規則な斑点が散布する。腹面は灰色[3]。
  • 眼の後から構想する褐色の縦条があるが、あまり明瞭ではない。この縦条の背縁は淡色に縁どられていることが多い[3]。
  • ヤモリ類などと同様、下のまぶたが閉じたままで、透明な一枚の鱗状になっている。

[似た種との違い]

本種と同所的に分布するトカゲ類は移入種のグリーンアノールのみであり、野外において見間違えることはまずない。

生態

[食性]

主に地上徘徊性の昆虫類を捕食していると考えられるが、飼育下ではグリーンアノールの幼体を捕食した例も知られている[6]。

[被食]

外から持ち込まれてきたネコによる被害が報告されているほか[7]、本種の幼体がグリーンアノールに捕食される例も報告されている[3]。

その他

[保全]

  • 1960年代に父島に持ち込まれたグリーンアノールとは競合関係にあるとされ、これが原因で小笠原諸島の一部の島では生息密度を減らしている。加えて、本種の幼体がグリーンアノールに捕食される例も報告されていて、捕食による負の影響も無視できないと考えられる。

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. 関慎太郎, & 疋田努. (2016). 野外観察のための日本産爬虫類図鑑. 緑書房,東京.
  2.  Hallowell, E. (1861). Report upon the Reptilia of the North Pacific Exploring Expedition, under command of Capt. John Rogers, U. S. N. Proc. Acad. Nat. Sci. Philadelphia 12 [1860]: 480 – 510.
  3. 日本爬虫両棲類学会.(2021).新 日本両生爬虫類図鑑.サンライズ出版,滋賀.
  4. Hayashi, F., Shima, A., Horikoshi, K., Kawakami, K., Segawa, R. D., Aotsuka, T., & Suzuki, T. (2009). Limited overwater dispersal and genetic differentiation of the snake-eyed skink (Cryptoblepharus nigropunctatus) in the oceanic Ogasawara Islands, Japan. Zoological science26(8), 543-549.
  5.  Horner, P. A. U. L. (2007). Systematics of the snake-eyed skinks, Cryptoblepharus Wiegmann (Reptilia: Squamata: Scincidae)–an Australian-based review. The Beagle Supplement3, 21-198.
  6. 廣山晃也, & 岩井紀子.(2019).オガサワラトカゲによるグリーンアノール幼体の捕食例. 爬虫両棲類学会報 2019(2), 175-176.
  7. 川上和人, & 益子美由希. (2007). 小笠原諸島母島におけるネコ Felis catus の食性. 小笠原研究年報, (31), 41-48.