ヒガシニホンアマガエル

Dryophytes leopardus Shimada et Matsui, 2025

両生綱 > 無尾目 > アマガエル科 > アマガエル属 > ヒガシニホンアマガエル

  • 抱接中のペア(神奈川)
概要

[大きさ] 

  • ♂:体長25-35 mm
  • ♀:体長27-42 mm

[説明]

  • 近畿以東に分布するニホンアマガエルとして2025年に新種記載
  • 指先に発達した吸盤を持つ
  • オスには外鳴嚢がある
  • 後肢の大腿部後方に特徴的な模様があるものが多いが、判別形質として過信するのは禁物
  • 幼生は眼が離れ、尾が比較的前方から始まる特徴的な形態をしている
分布

[分布] [1]

  • 東日本(北海道、本州、および近傍の島々)、樺太島に分布。ニホンアマガエル Dryophytes japonicusとの分布境界線は近畿地方にあり、福井県の西端部以外、大阪府の北部(箕面市、豊能町、能勢町)以外、京都府の南東部、奈良県南端部以外、三重県南端部以外、そして和歌山県北端部に分布するものはヒガシニホンアマガエルであると考えられる。

[生息環境][1]

  • 海岸線近くの平地から低山、少なくとも標高1150mの高地まで幅広く分布。水田や森林部、湿地、都市部の庭など多様な環境でみられる。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アマガエル科 > アマガエル属 > ヒガシニホンアマガエル

[タイプ産地][1] 

  • 愛知県豊田市吉原

[種小名の意味][1]

  • leopardusはギリシャ語やラテン語でヒョウを意味し、本種の大腿部後部の色彩パターンを指している

[説明][1,2]

  • 本種は東アジアに広く分布したニホンアマガエルの一部であると考えられてきた。しかし、本州内で複数種に分かれる可能性がかねてより指摘されており、2016年Dufresnesらはミトコンドリア系統に基づいて2つのクレード(東のクレードA、西側のクレードB)に分けられることを示し、両者が別種であると指摘した。その後、2025年、島田らはゲノムワイドでの一塩基多型(SNP)の情報を基にこの種の遺伝構造を調べたほか徹底した形態比較によって、クレードAにあたる東日本に分布する集団をヒガシニホンアマガエルとして新種記載した。
体の特徴

[形態]

  • 吻は丸く、眼の前後の暗色模様が明瞭
  • 背面は緑色から茶褐色、灰色など様々で周囲の環境に合わせて変化する。腹面は白色から黄色。
  • オスはのど元には1つの大きな外鳴嚢を持つ
  • 吸盤は発達しており、壁などによじ登ることができる

[似た種との違い][1]

本種はニホンアマガエルとほとんどの形態的特徴を共有しているため、両種の判別は容易ではない。一つの判別形質として有力視されているのは、後肢の大腿部後方にみられる顕著な模様のパターン である。ヒガシニホンアマガエルの多くには、白色の斑点模様や白点がある場合や、白い模様が殆どない代わりに黒色模様があるなどのパターンが見られるが、ニホンアマガエルの多くはこれらの明瞭な模様がないといわれている。ただし、黒色の模様などはニホンアマガエルにも現れることもあるので、この識別法は完全ではない。特に両者の分布の境界に位置する近畿地方のものは、腿の模様だけで判別することは難しいとされる。

生態

[食性]

  • 昆虫、クモなどを捕食する。[3, 4, 5, 6, 7]
  • 胃内容調査で多く見られたものとしては、アリ、甲虫、ハエ目、イモムシ、カメムシ目、クモなど。[3, 4, 5, 6]
  • ダイズ畑で行われた調査では、ダイズの害虫であるアブラムシ類も多く捕食していた。[3]
  • 水稲害虫を多く捕食しているという結果もある。[7]

[繁殖][1]

  • 本州では4月下旬から8月中旬にかけて鳴くが、繁殖自体は盛夏前までに終了する。北海道でも開始時期は4月下旬と似たようなものだが、サハリンや国後島では5月下旬から6月上旬であるといわれている
  • 産卵は田んぼ、池、湿地、小さな人工水槽など様々な止水域でなされ、通常は小さな塊として産み付けられる。卵は雑草や根,水生植物などの植生に付着していることが多いが,泥底に産み付けられることもある。

[卵][1]

  • 愛知県の集団では一度に産卵される卵は109-161個。卵の直径は1.2 mm程度で、淡褐色。

[幼生][1,8]

  • 左右の眼が大きく離れ側面につく。尾びれの丈が長く、尾が胴の前の方から始まる独特の形態をしている。腹部は白色で、喉は暗灰色の領域がみられ、尾には黒斑が散在する。

[鳴き声]

クワッ・クワッ・クワッ…

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. Shimada T, Matsui M, Tanaka K (2025) Genetic and morphological variation analyses of Dryophytes japonicus (Anura, Hylidae) with description of a new species from northeastern Japan. Zootaxa 5590:61–84.
  2. Dufresnes C, Litvinchuk SN, Borzée A, Jang Y, Li JT, Miura I, Perrin N, Stöck M (2016) Phylogeography reveals an ancient cryptic radiation in East-Asian tree frogs (Hyla japonica group) and complex relationships between continental and island lineages. BMC evolutionary biology 16:1–14.
  3. 平井利明 (2007) ダイズ畑におけるニホンアマガエルの餌構成 : 広食性捕食者は害虫防除に役立つか?. 日本応用動物昆虫学会誌 51:103–106.
  4. Hirai T, Matsui M (2000) Feeding habits of the Japanese tree frog, Hyla japonica, in the reproductive season. Zoological Science 17:977–982.
  5. Hirai T, Matsui M (2002) Feeding relationships between Hyla japonica and Rana nigromaculata in rice fields of Japan. Journal of Herpetology 36:662–667.
  6. 佐野誠, 篠原正典 (2012) カエル類7種における繁殖生態と食性の関係性について. 帝京科学大学紀要 8: 101–111.
  7. 小山淳, 小野亨, 城所隆, 熊谷千冬 (2001) ニホンアマガエルによる水稲害虫の捕食. 東北農業研究. 54: 69–70.
  8. 松井正文, 関慎太郎 (2016) ネイチャーウォッチングガイドブック 日本のカエル 分類と生活史~全種の生態、卵、オタマジャクシ. 誠文堂新光社, 東京.