イヘヤトカゲモドキ

Goniurosaurus kuroiwae toyamai Grismer, Ota et Tanaka, 1994

爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>クロイワトカゲモドキ>イヘヤトカゲモドキ

概要

[英名] 

Toyama’s ground gecko

[大きさ] 

  • 全長 14–19 cm

[説明]

  • 種クロイワトカゲモドキの伊平屋島固有亜種
  • 淡い桃色のバンドが背中に3本、頸部に1本入る
  • 背側の模様や色彩、体型によって他のトカゲモドキ類と判別可能
  • 夜行性で湿潤な林内でみられる

[保全状況]

  • 近絶滅種(IUCNレッドリスト)、絶滅危惧IA類(環境省RDB)、絶滅危惧IA類(沖縄県RDB)、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種(種の保存法)
分布

[分布]

  • 伊平屋島(沖縄県)[1,2,4,6]

[生息環境]

  • 湿潤な常緑広葉樹林、二次林[7,8]
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>種クロイワトカゲモドキ>亜種イヘヤトカゲモドキ

[タイプ産地] 

伊平屋島[1]

[学名の由来]

  • 種小名は日本の動物学者で琉球列島の爬虫両生類の研究を行い、本亜種を初めて報告した当山昌直氏にちなむ[1]

[説明]

  • 本亜種は現在、種クロイワトカゲモドキの亜種とされているが、独立種とする考えもある。これまで、分子系統解析の結果から本亜種は種クロイワトカゲモドキの中で最も祖先的であると考えられている [2]

体の特徴

[形態]

頭胴長75–85 mm[8,9,10]、全長140–190 mm[6](野外観察をする限り、本亜種の全長は文献の記述(12–14 cm)[9]よりも大きいと思われるため、ここではより情報の多い種クロイワトカゲモドキの全長を引用した)。指下板はなく、まぶたをもつ。体は細く、背側は黒地で3本の淡桃色のバンドをもつ(頸部にもバンドのような模様があり、これをいれると4本)。バンドの間には斑紋はほとんどない。頭部に不規則な模様が入る。腹面は白〜灰色。眼の虹彩は赤褐色を呈する。一度も切断していない尾は細長く黒紫色で、白色のバンドが5本ほど入る。自切後に再生した尾は太く短く、白色のまだら模様が入る。幼体の色彩や模様は成体とほぼ変わらないか、バンドが体側部で繋がる[1,6,8,9,10]。

[似た種との違い]

亜種クロイワトカゲモドキとは背側のバンドの有無、バンドの色で区別できる(vs. 橙色〜桃色の縦条線or桃色〜クリーム色のバンドorバンドなし)。オビトカゲモドキとは体サイズや体型の違いと胸部の鱗が瓦状に並ぶことで区別できる(vs. 体サイズが小さい、体幅が細い、胸部の鱗は互いに重ならない)。ケラマトカゲモドキとは背部のバンドの色と本数で区別できる(vs. 4本の橙色〜桃色のバンド)[3]。マダラトカゲモドキとは背部のバンドの色と本数で区別できる(vs. 4〜7本の黄色のバンド)。クメトカゲモドキとは背部のバンドの色と本数、虹彩の色で区別できる(vs. 4本の淡黃色〜黄色のバンド、黄褐色の虹彩)。イヘヤトカゲモドキと同所的に生息する他のトカゲモドキ類はいないため、生息地から容易に同定が可能である[1]。

生態
  • 本種の生態に関する知見は乏しいが、種クロイワトカゲモドキと類似していると考えられている[8]
その他

[コメント]

  • イヘヤトカゲモドキは開発に伴う環境の悪化によって数を減らしていると考えられている[8]。また、違法採集も行われているようで、欧米の市場においてペット用として取引されていることが知られている[11]。本亜種は生態や進化史には不明な点が多く、今後、さらなる研究が望まれる。

執筆者:福家悠介


引用・参考文献

  1. Grismer, L. L., Ota, H. & Tanaka, S. 1994. Phylogeny, classification, and biogeography of Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae) from the Ryukyu Archipelago, Japan, with description of a new subspecies. Zoological Science, 11, 319–335.
  2. Honda, M., Kurita, T., Toda, M. & Ota, H. 2014. Phylogenetic relationships, genetic divergence, historical biogeography and conservation of an endangered gecko, Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae), from the Central Ryukyus, Japan. Zoological Science, 31, 309–320.
  3. Honda, M. & Ota, H. 2017. On the live coloration and partial mitochondrial DNA sequences in the topotypic population of Goniurosaurus kuroiwae orientalis (Squamata: Eublepharidae), with description of a new subspecies from Tokashikijima island, Ryukyu Archipelago, Japan. Asian Herpetological Research, 8, 96–107.
  4. Kidera, N. & Ota, H. 2017. Goniurosaurus toyami. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T18917777A18917779.
  5. 前之園唯史・戸田守.2007.琉球列島における両生類および陸生爬虫類の分布.Akamata,(18): 28–46.
  6. 関慎太郎.2016.野外観察のための日本産爬虫類図鑑.緑書房.
  7. 田中聡.1996.クロイワトカゲモドキ.日本動物大百科5 両生類・爬虫類・軟骨魚類,pp 71.平凡社.
  8. 戸田守・田中聡.2017.イヘヤトカゲモドキ.改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-動物編-,pp 180.沖縄県環境部自然保護課.
  9. 富田京一・松橋利光.2007.山溪ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ.山と溪谷社.
  10. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002.決定版日本の両生爬虫類.平凡社.
  11. 若尾慶子.2018.南西諸島固有両生類・爬虫類のペット取引.Traffic Briefing 2018年5月,1–18.

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