クメトカゲモドキ

Goniurosaurus kuroiwae yamashinae (Okada, 1936)

爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>クロイワトカゲモドキ>クメトカゲモドキ

概要

[別名]

ヤマシナトカゲモドキ 

[英名] 

Yamashina’s ground gecko

[大きさ] 

  • 全長 14–19 cm

[説明]

  • 種クロイワトカゲモドキの久米島固有亜種
  • 淡黄〜黄色のバンドが背中に4本入る
  • 虹彩と背側のバンドの色で他の亜種と区別可能
  • 夜行性で湿潤な林内や洞窟内でみられる

[保全状況]

  • 近絶滅種(IUCNレッドリスト)、絶滅危惧IA類(環境省RDB)、絶滅危惧IB類(沖縄県RDB)、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種(種の保存法)
分布

[分布]

  • 久米島(沖縄県)[1,2,5,6,7,8,9,10]

[生息環境]

  • 湿潤な常緑広葉樹林、二次林、洞窟、およびその周辺[5,8]
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>トカゲ亜目>トカゲモドキ科>トカゲモドキ属>種クロイワトカゲモドキ>亜種クメトカゲモドキ

[タイプ産地] 

久米島[5]

[学名の由来]

  • 種小名は研究者を琉球列島に派遣し、本種の発見に貢献した山階芳麿博士にちなむ[5]。

[説明]

本亜種は現在、種クロイワトカゲモドキの亜種とされているが、独立種とする考えもある。遺伝的にケラマトカゲモドキおよびマダラトカゲモドキに近縁である。これまで、形態形質の検討から本亜種は種クロイワトカゲモドキの中で最も祖先的であると考えられてきたが[1]、近年の分子系統解析によって派生的な亜種であることが示された(最も祖先的な亜種はイヘヤ)[2]。

体の特徴

[形態]

頭胴長75–85 mm[8,10]、全長140–190 mm[7](野外観察をする限り、本亜種の全長は文献の記述(12–14 cm)[6,9]よりも大きいと思われるため、ここではより情報の多い種クロイワトカゲモドキの全長を引用した)。指下板はなく、まぶたをもつ。体は細く、背側は黒地で4本の淡黄色〜黄色のバンドをもつ(頸部にもバンドのような模様があり、これをいれると5本)。バンドの間と四肢には不規則な斑紋をもつ。頭部にも不規則な模様をもつが、個体間である程度の共通性がある。腹面は白〜灰色。眼の虹彩は黄褐色〜金色を呈する。一度も切断していない尾は細長く、白色のバンドが5本入る。自切後に再生した尾は太く短く、白色のまだら模様が入る。幼体のバンドは白色で、バンドの間や頭部に斑紋はない[1,5,6,8,9,10]。

[似た種との違い]

亜種クロイワトカゲモドキとは背側のバンドの有無、バンドの色、虹彩の色で区別できる(vs. 橙色〜桃色の縦条線or桃色〜クリーム色のバンドorバンドなし、赤褐色の虹彩)。イヘヤトカゲモドキとはバンドの色とバンド間の斑紋の有無、虹彩の色、胴部の太さで区別できる(vs. 桃色〜クリーム色のバンド、バンドの間に斑紋なし、赤褐色の虹彩、胴部が太い)。ケラマトカゲモドキとはバンドの色と虹彩の色で区別できる(vs. 橙色〜桃色のバンド、赤褐色の虹彩)。マダラトカゲモドキとはもっとも見た目が類似している。マダラトカゲモドキはバンドの間の斑紋が発達し、バンドが4〜7本あるように見える個体が多い。また、頭部の斑紋パターンが異なる。マダラトカゲモドキの虹彩の色は橙褐色を呈するが、どちらの亜種でも色彩や模様に変異があるので区別が難しい個体もいる[1,3,8]。

生態
  • 本種の生態に関する知見は乏しいが、種クロイワトカゲモドキと類似していると考えられている
その他

[コメント]

クメトカゲモドキは開発に伴う環境の悪化、外来種による捕食などによって数を減らしていると考えられている[8]。また、違法採集も行われているようで、欧米の市場においてペット用として取引されていることが知られている[11]。本亜種は生態や進化史には不明な点が多く、今後、さらなる研究が望まれる。

執筆者:福家悠介


リンク

IUCN https://www.iucnredlist.org/species/18917785/18917789

引用・参考文献

  1. Grismer, L. L., Ota, H. & Tanaka, S. 1994. Phylogeny, classification, and biogeography of Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae) from the Ryukyu Archipelago, Japan, with description of a new subspecies. Zoological Science, 11, 319–335.
  2. Honda, M., Kurita, T., Toda, M. & Ota, H. 2014. Phylogenetic relationships, genetic divergence, historical biogeography and conservation of an endangered gecko, Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae), from the Central Ryukyus, Japan. Zoological Science, 31, 309–320.
  3. Honda, M. & Ota, H. 2017. On the live coloration and partial mitochondrial DNA sequences in the topotypic population of Goniurosaurus kuroiwae orientalis (Squamata: Eublepharidae), with description of a new subspecies from Tokashikijima island, Ryukyu Archipelago, Japan. Asian Herpetological Research, 8, 96–107.
  4. Kidera, N. & Ota, H. 2017. Goniurosaurus yamashinae. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T18917785A18917789.
  5. Okada, Y. 1936. A new cave-gecko, Gymnodactylus yamashinae from Kumejima, Okinawa Group. Proceedings of the Imperial Academy, 12, 53–54.
  6. 関慎太郎.2016.野外観察のための日本産爬虫類図鑑.緑書房.
  7. 田中聡.1996.クロイワトカゲモドキ.日本動物大百科5 両生類・爬虫類・軟骨魚類,pp 71.平凡社.
  8. 戸田守・田中聡.2017.クメトカゲモドキ.改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-動物編-,pp 185–186.沖縄県環境部自然保護課.
  9. 富田京一・松橋利光.2007.山溪ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ.山と溪谷社.
  10. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002.決定版日本の両生爬虫類.平凡社.
  11. 若尾慶子.2018.南西諸島固有両生類・爬虫類のペット取引.Traffic Briefing 2018年5月,1–18.

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