ミヤコヒバァ

Hebius concelarus (Malnate, 1963)

爬虫綱>有鱗目>ナミヘビ科>ヒバカリ属>ミヤコヒバァ

概要

[大きさ] 

  • 頭胴長 雌: 40–66 cm,雄: 40–55 cm[1]. 全長 100 cm [2].

[説明]

  • 宮古諸島にのみ生息する中型のヘビ.
  • 生活史に関する知見はほとんどない.
  • 個体数は減少傾向にある.

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト選定 : 絶滅危惧ⅠB類 (EN) [1].
  • 環境省選定 : 国内希少野生動植物種.
  • 沖縄県レッドリスト選定 : 絶滅危惧Ⅱ類 (VU) [2].
  • 宮古島市自然環境保全条例指定種 [3].
分布

[分布]

  • 宮古諸島の宮古島と伊良部島に分布 [4,5].

[生息環境]

  • 池,沼,湿地及びその周辺の森林や草原などに生息する[1,2].
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>ナミヘビ科>ヒバカリ属>ミヤコヒバァ

[タイプ産地] 

  • 沖縄県宮古島 [4]

[説明]

  • 本種は1963年に,外部形態の違いに基づいてガラスヒバァの亜種(Amphiesma pryeri concelarus)として記載された [4]が,後に外部形態の違いに加え,常染色体の形態,核型の違いを根拠として,独立種(Amphiesma concelarus)とされた [6].
  • Guoらによる分子系統解析の結果,Amphiesma属は多系統群であり,大きく3系統に分かれることが判明した.解析対象となった種との外部形態の類似性及び分布範囲などに基づいて,本種はHebius属へと暫定的に再分類された [7].
  • Kaitoらによる分子系統解析の結果,ガラスヒバァ(Hebius pryeri)は奄美諸島の系統,伊平屋島の系統,伊平屋島を除く沖縄諸島の系統の3群に大別されることが明らかになり,ミヤコヒバァはガラスヒバァに内含され,沖縄諸島の系統に最も近縁であることが判明した [8].
体の特徴

[形態][1,6]

  • 中央部の体鱗は19列.
  • 腹板数164–169枚(雄),157–167枚(雌).
  • 尾下板数94–99枚(雄),96–102枚(雌).
  • 頭部背面は黒色または暗灰色がかった褐色.
  • 上唇板と頭部・胴部の腹面は薄いレモン色,象牙色または白色.
  • 上唇板に黒色または暗灰色の霜降り模様がある.
  • 体の背面は黒色または濃い灰色がかった褐色.
  • 胴部前方に黄白色の横帯がある.この横帯は胴の後半部では不明瞭な白点へと変化する.

[近縁種との違い]

国内には近縁種としてガラスヒバァ(Hebius pryeri)及びヤエヤマヒバァ(Hebius ishigakiensis)が生息しているが,いずれも本種とは分布域が重ならない.また,形態的には以下の点で見分けられる.

  • 一般的に,本種には頸部にY字型またはV字型の模様がないことで識別できる[1,2].ただし,本種においても,頸部にY字型模様を有する個体が報告されている[9].
  • ガラスヒバァとは,本種の方が腹板数及び尾下板数が少ないことでも識別できる(ミヤコヒバァ : 腹板数157–169枚,尾下板数94–102枚 ; ガラスヒバァ : 腹板数166–183枚,尾下板数112–130枚)[6].
ミヤコヒバァガラスヒバァ
ミヤコヒバァ ヤエヤマヒバァ
生態

[食性]

  • 野外ではサキシマヌマガエル(Fejervarya sakishimensis)とその幼生 [1],ホオグロヤモリ(Hemidactylus frenatus) [10]の捕食例が報告されている.
  • 飼育下では,リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica)の幼生 [6],ホオグロヤモリ(Hemidactylus frenatus),ミナミヤモリ(Gekko hokouensis),メダカ [1]などを捕食するのが観察されている.

[捕食]

  • 外部から導入されたニホンイタチとインドクジャクによる捕食圧が及んでいる可能性が高い [1,2].

[繁殖]

  • 卵生であり,飼育環境下で6月下旬に長径30–35 mm,短径9–12 mmの卵を3つ産んだ記録がある[6].
その他

執筆者:鈴木洋平


引用・参考文献

  1. 太田英利.2014. ミヤコヒバァ, 環境省(編)レッドデータブック2014 爬虫類・両生類編, p. 24-25.
  2. 戸田守, 当山昌直.2017.ミヤコヒバァ.沖縄県文化環境部自然保護課(編),改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)-レッドデータおきなわ-,p. 197.沖縄県文化環境部自然保護課,那覇.
  3. 宮古島市.宮古島市自然環境保全条例保全種一覧.https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/shityo/seikatukankyou/eisei/oshirase/files/hozensyu-doubutsu.pdf
  4. Malnate EV. 1963. A new race of Amphiesma pryeri (Serpentes Natricinae) from the Southern Riukiu Island of Miyako-shima. Natulae Naturae, 360: 1-6.
  5. 太田英利, 高橋健.1997. ミヤコヒバァ(Amphiesma concelarum Malnate, 1963)の伊良部島からの記録. 沖縄生物学会誌, (35): 47-48.
  6. Ota H, S. Iwanaga. 1997. A systematic review of the snakes allied to Amphiesma pryeri (Boulenger) (Squamata: Colubridae) in the Ryukyu Archipelago, Japan. Zool. J. Linn. Soc. 121(3): 339–360.
  7. Guo P, F. Zhu, Q. Liu, L. Zhang, JX. Li, YY. Huang, RA. Pyron. 2014. A taxonomic revision of the Asian keelback snakes, genus Amphiesma (Serpentes: Colubridae: Natricinae), with description of a new species. Zootaxa 3873: 425–440.
  8. Kaito T, T. Mamoru. 2016. The biogeographical history of Asian keelback snakes of the genus Hebius (Squamata: Colubridae: Natricinae) in the Ryukyu Archipelago, Japan, Biol. J. Linn. Soc. 118(2): 187–199.
  9. 皆藤琢磨.2016.頸部にY 字模様をもつミヤコヒバァ標本について.Akamata. 26: 38–40.
  10. 角田羊平, 青柳 克, 徳山孟伸, 才木美香, 笹井隆秀, 戸田守, 前之園唯史.2016.宮古島および伊良部島における稀少なヘビ2種,ミヤコヒバァとサキシマバイカダの観察例.Akamata. 26: 25–30.