ヤマグチサンショウウオ

Hynobius bakan Matsui, Okawa et Nishikawa, 2019

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ヤマグチサンショウウオ

  • オスの成体(山口県)
概要

[英名]

Yamaguchi salamander [1]

[大きさ] 

  • 全長 8 – 11 cm [5]
  • 頭胴長 4.5 – 6 cm [1]

[説明]

  • カスミサンショウウオ山口型または日本海型として知られていたが、近年新種として記載された
  • 山口県と大分県の一部に分布する
  • 1月から4月に水田の溝や湿地などにコイル状の卵嚢を産む

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧II類
  • レッドデータブックやまぐち2019:絶滅危惧Ⅱ類(カスミサンショウウオとして)
  • レッドデータブックおおいた2011:絶滅危惧Ⅱ類(カスミサンショウウオとして)
  • 大分県希少野生動植物種
分布

[分布]

  • 山口県と大分県の一部

[生息環境]

  • 標高15〜280 m(平均149 m)の水田や湿地の周辺に生息する[1][5]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ヤマグチサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 山口県宇部市[1]

[学名の意味]

種小名のbakanは本種が分布する下関の古称の馬関が由来[1]

[説明]

  • 本種はかつてカスミサンショウウオ山口型または日本海型とされていた[2][3][4]。
  • 2019年に遺伝的、形態的な違いからカスミサンショウウオから分けられ、新種として記載された[1]。
  • 系統的にはオオイタサンショウウオH. dunniに近い[1]。
体の特徴

[形態][1]

  • 背面は黒褐色で黒い斑紋が散在する。腹面は背面よりも明るく、銀白色の小点が散らばる。尾の上下面に黄色の条線を持つ。繁殖期のオスの喉の下面は白くなることが多い。
  • 体は小さく、前後肢の長さは中程度。尾は頭胴長の75%程度の長さ。肋条数は13。
  • ほとんどの個体で後肢の第五趾を持つ。

[似た種との違い][1]

カスミサンショウウオ種群(カスミ、ヤマト、セトウチ、ヒバ、アキ、イワミ、アブ、サンイン)の他種とは、小型であること、助骨歯列の幅が広いこと、肋条数が13であること、後肢の第五趾を持つこと、尾の上下面に黄色の条線を持つことなどで識別できる。また、基本的にこれらの種とは分布域が重ならない。

生態

[繁殖]

  • 繁殖期は1月下旬~4月上旬で、水田の溝や湿地などに産卵する[1][5]

[卵][1]

  • 卵嚢はコイル状で皺が入る。
  • 卵数は56–333。

執筆者:福山伊吹


引用・参考文献

  1. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current herpetology, 38(1), 32-90.
  2. 大川博志, & 宇都宮妙子. (1997). カスミサンショウウオ後肢趾の骨. 日本爬虫両棲類学雑誌14(4), 214.
  3. 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2005). 阿武・津和野地方および山口市に分布するカスミサンショウウオの一集団. 両生類誌, 14, 11-14.
  4. 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2007). 西日本におけるカスミサンショウウオの3つの大きなグループ. 爬虫両棲類学会報, 2007, 58–59.
  5. 関慎太郎, & 井上大輔編. (2019). 特盛山椒魚本. NPO法人北九州・魚部(ぎょぶる編集室).