イズモサンショウウオ

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Hynobius kunibiki Sugawara, Iwata, Yamashita et Nagano, 2021

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > イズモサンショウウオ

  • オスの成体(島根県)
概要

[大きさ]　

  • 頭胴長　5 – 6.5 cm [3]

[説明]

  • ヒバサンショウウオまたはサンインサンショウウオとされていたが、近年新種として記載された
  • 島根県の出雲地方のみに分布する
  • 12月から3月ごろ止水にコイル状の卵嚢を産む

[保全状況]

  • 環境省や各県のレッドリストでは2021年11月時点では未評価
分布

[分布]

  • 出雲地方(島根県東部)[3]
分類

［分類］

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > イズモサンショウウオ

［タイプ産地］　

  • 島根県松江市[3]

［学名の意味］

  • 種小名のkunibikiは出雲国の成り立ちに関する「国引き神話」に由来する[3]

［説明］

  • 2019年に、カスミサンショウウオH. nebulosusが分類学的再検討によって9種に分けられた際には、本種は系統樹上ではヒバサンショウウオH. utsunomiyaorum (B2b3クレード)、分布図ではサンインサンショウウオH. setoi に含められていた[2]。
  • 2020年に、遺伝的にはヒバサンショウウオと近縁だが、形態的には明らかに異なるサンショウウオが出雲地方に存在することが報告され[1]、本種は「イズモ系統」と呼ばれるようになり、2021年に新種記載された[3]。
  • 形態的にはサンインサンショウウオに似るが、系統的にはアキサンショウウオH. akiensisに最も近い[2][3]。
体の特徴

［形態］[3]

  • 背面は黒褐色または黄褐色で基本的に斑紋がない。腹面は背面よりも明るい。腹面にはオスは白点を持たないが、メスはしばしば白点を持つ。尾の上下面に黄色の条線を持つ。
  • 体は比較的大きい。尾は頭胴長の70–80%程度の長さ。肋条数は12または13で、まれに11。
  • 後肢の第五趾を持つ。

［似た種との違い］[3]

分布域が接するイワミサンショウウオH. iwami、本種と分類学的に混同されていたヒバサンショウウオ、遺伝的に最も近縁なアキサンショウウオとは、イズモサンショウウオは尾の上下面に黄色の条線を持ち、後肢の第五趾が発達することで識別できる。本種はサンインサンショウウオと非常に似るが、オスでは本種の方が頭胴長に対する胴の長さが短く、頭の長さや尾の長さが長い点が異なり、メスでは本種の方が鋤骨歯列や前肢が長い点が異なるとされるが、遺伝的な情報なしにこれらを識別することは難しい。イズモサンショウウオは分布域の東側でサンインサンショウウオと、南側でヒバサンショウウオと、西側でイワミサンショウウオと側所的に分布しているが、それ以外の止水性サンショウウオとは異所的に分布する。

イズモサンショウウオ
アキサンショウウオ
ヒバサンショウウオ
サンインサンショウウオ
生態

［繁殖］[3]

  • 繁殖期は12月～3月で、林縁の止水環境に産卵する。

［卵］[3]

  • 卵嚢はコイル状。
  • 水中の落ち葉や枝などに産み付けられる。

執筆者：福山伊吹

2021年11月公開

引用・参考文献

  1. 林成多, & 大井和之. (2020). 島根県東部における止水性サンショウウオ類の分子系統解析. ホシザキグリーン財団研究報告= Bulletin of the Hoshizaki Green Foundation, (23), 99-104.
  2. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current herpetology, 38(1), 32-90.
  3. Sugawara, H., Iwata, T., Yamashita, H., & Nagano, M. (2021). Taxonomic Reassessment of the Izumo Lineage of Hynobius utsunomiyaorum: Description of a New Species from Chugoku, Japan. Animals, 11(8), 2187.