オオダイガハラサンショウウオ

Hynobius boulengeri (Thompson, 1912)

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オオダイガハラサンショウウオ

  • オス成体および卵嚢
概要

[大きさ] 

  • 全長 15 – 20 cm

[説明]

  • サンショウウオ属では日本最大の種。
  • 体は頑丈で濃い青紫色をしている。
  • 渓流の源流部周辺に生息する。
  • 紀伊半島(和歌山県、三重県、奈良県)に分布し、全県で天然記念物に指定されている。

[保全状況]

  • 本種の分布域全体にあたる和歌山県、奈良県、三重県で天然記念物に指定されている。
  • 環境省レッドリスト- 絶滅危惧Ⅱ類
  • 和歌山県レッドデータブック2012年度改訂版-絶滅危惧Ⅰ類
  • 三重県レッドデータブック2015-絶滅危惧Ⅱ類
  • 奈良県レッドデータブック2016改訂版-絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)
分布

[分布]

  • 紀伊半島(和歌山県、三重県、奈良県)

[生息環境]

  • 標高150~1700mの植林地を含めた落葉広葉樹林、針広混交林、針葉樹林の谷およびその周辺斜面に生息する[2, 4, 6, 7]。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オオダイガハラサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 奈良県

[説明]

  • 近年まで紀伊半島、四国、九州にオオダイガハラサンショウウオ1種が分布しているとされていたが、地域ごとに遺伝的・形態的な差が見られることから、紀伊半島のオオダイガハラサンショウウオ、四国のイシヅチサンショウウオ、九州のソボサンショウウオ、アマクササンショウウオ、オオスミサンショウウオの5つの種に分けられた[8, 9]。
  • 和名はタイプ産地である奈良県の大台ケ原に由来する[2]。
体の特徴

[形態]

  • 胴および尾は太く、頑丈。
  • 背面は濃青紫色で、腹面は薄赤紫色。斑紋や斑点は見られないことが多い。

[似た種との違い]

同所的にマホロバサンショウウオやハコネサンショウウオが見られるときもあるものの、体色・体形が大きく異なることから簡単に見分けることができる。

かつてオオダイガハラサンショウウオと同種とされていた種とは次のような違いが見られる。四国に分布するイシヅチサンショウウオはよりスマートな体形をしており、鋤骨歯列がより短い。また、九州のアマクササンショウウオはより小型で、体側面に白点が入ることが多い。ソボサンショウウオはイシヅチサンショウウオよりさらにスマートな体形をしている。鋤骨歯列はより深い。オオスミサンショウウオは全長13cm程度で、アカイシサンショウウオに似ている。

生態

[食性]

  • 成体はクモ、昆虫、ミミズ類などを捕食する[1, 10]。

[繁殖]

  • 2~5月に渓流の源流部付近に集まり、繁殖する[7]。
  • 大きな岩の下や伏流水中で産卵する[3, 10]。

[卵]

  • 卵嚢はバナナ型。
  • 卵嚢外皮は丈夫で青色をしている。
  • 中に含まれる卵は10~25個[10]。

[幼生]

  • 黒と茶色のまだら状の模様をもつ。
  • 指先にはツメをもつ。
  • 生息する沢の水温は0.2~21℃[3]。
  • 水生昆虫、ミミズ類、ヨコエビ類などを餌とする[1]。
  • 変態には1年以上かかることが多い[5, 6]。
その他

[コメント]

  • 皆伐による林内の乾燥化やダム建設による生息地の破壊は、本種の生息に大きな悪影響を与えると考えられている[4, 5, 7]。また、ペット目的の違法採集も危惧されている[5]。

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

  1. 御勢久右衛門・林康行. 1983. オオダイガハラサンショウウオの生態と保護. 遺伝 37 (11): 57-61.
  2. 松井正文. 1996. オオダイガハラサンショウウオ. 日本動物大百科 第5巻 両生類・爬虫類・軟骨魚類. 千石正一・疋田努・松井正文・仲谷一宏編. 平凡社: 19-23.
  3. 松井正文. 1998. オオダイガハラサンショウウオ. 日本の希少な野生水生生物に関するデータブック. 水産庁編. 社団法人日本水産資源保護協会: 212-213.
  4. 松井正文. 2000. 本州・九州地域のオオダイガハラサンショウウオ. 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック-(爬虫類・両生類). 環境庁自然保護局野生生物課編. 財団法人自然環境研究センター: 110-111.
  5. 三重県教育委員会. 2009. 三重県指定天然記念物オオダイガハラサンショウウオ保護管理指針. 三重県教育委員会..
  6. 西川完途. 2005. 小型サンショウウオはどう分化したか. 日本の動物はいつどこからきたのか. 中坊徹次・本川雅治編. 岩波書店: 33-39.
  7. 西川完途. 2006. オオダイガハラサンショウウオ. 三重県レッドデータブック 2005 動物. 三重県環境森林部自然環境室編. 三重県: 124.
  8. Nishikawa, K., M. Matsui, S. Tanabe & S. Sato. 2007. Morphological and allozymic variation in Hynobius boulengeri and H. stejnegeri (Amphibia: Urodela: Hynobiidae). Zoological Science 24: 752–766.
  9. Nishikawa, K. & M. Matsui. 2014. Three new species of the salamander genus Hynobius (Amphibia, Urodela, Hynobiidae) from Kyushu, Japan. Zootaxa 3852(2):203-226.
  10. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎. 2002. 決定版日本の両生爬虫類. 平凡社: 44-45.