ミカワサンショウウオ

Hynobius mikawaensis Matsui, Misawa, Nishikawa et Shimada, 2017

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ミカワサンショウウオ

概要

[大きさ] 

  • 全長100 mm前後[2]で,頭胴長50~61 mm.[1][3][5]

[説明]

  • 愛知県のごく一部に分布する止水性の小型サンショウウオ.
  • 系統的にはクロサンショウウオ(Hynobius nigrescens)及びホクリクサンショウウオ(Hynobius takedai)に近い.[1]
  • 形態はホクリクサンショウウオに類似しており,クロサンショウウオとは大きく異なる.[1]

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック選定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) [4]
  • 愛知県レッドデータブック選定: 絶滅危惧ⅠA類(CR) [5]
  • 愛知県指定希少野生動植物種
分布

[分布]

  • 愛知県東部 (新城市,岡崎市,豊田市)[1][3][5]

[生息環境]

  • 標高500~700 m程度の丘陵地に局在する.[3]
  • 非繁殖期は繁殖地周辺の林床に生息していると考えられる.[3][5]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ミカワサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 愛知県新城市 [1][5]

[説明]

  • 記載されたのは2017年だが、それよりも前からサンショウウオの一種Hynobius sp.として知られていた. [6]
  • 系統的にはクロサンショウウオやホクリクサンショウウオに最も近い.[1]
体の特徴

[形態]

  • ホクリクサンショウウオに形態が似るが,より胴体が長く、尾高が低く、四肢が比較的短い.[1]
  • 尾の先端は横から見ると丸みを帯びている.[1]
  • 背面は斑点が無くオリーブ色をしている.[1][3]
  • 頭部前半部と四肢に銀白色の斑点を有する.[1][3]
  • 腹面は背面より明るく,斑点は無い.[1][3]
  • 肋条は12本で,鋤骨歯列は浅いV字型.[1][5]
  • 産卵期の雄は頭部が肥大化し[5],喉が白色の婚姻色に覆われる.[1][3][5]

[似た種との違い]

同じく愛知県に生息する止水性サンショウウオのヤマトサンショウウオ(Hynobius vandenburghi)とは同所的には生息していない.また,本種はヤマトサンショウウオには通常見られる尾上部の黄条がないため区別が可能である.[1]

生態

[繁殖]

  • 繁殖期は3~5月で,最盛期は4月中旬から下旬.[5]
  • 繁殖期の水温は6.3~10.7 ℃.[1]
  • 産卵は,スギ植林地,針広混交林内の渓流源流部,渓流沿いの湿地などの,流れが緩やかな泥深い湧水中で行われることが多い[3][5]が,ある程度流れのある開けた場所に産卵することもある.[5]
  • 繁殖地周辺は人工林または竹林で,林床はササ類が密生することが多い.[3][5]
  • 卵嚢は泥中に沈んだ枝葉,水草の残骸や根に産みつけられる.[1][5]
  • 2019年時点で,18地点の産卵地が知られている.[5]

[卵]

  • 卵数は19~56個ほどで,卵形は3.1~4.8 mm.1対2個の卵嚢に包まれる.[3][5]
  • 卵嚢は透明かつ紐型・コイル状で,孵化直前は長さ217~224 mm,幅11.5~12 mmになる.[1][3][5]

[幼生]

  • 全長23.3~27.0 mm程度で,頭部は丸みを帯びる.[1]
  • 背面は一様な淡褐色で,腹面は白っぽく透明.[1]
  • 尾と尾びれにはそれぞれ黒色,金色の斑点が散在する.[1]
その他

[その他]

生息地は道路建設等により環境が悪化しており,積極的な保護が望まれる.また,本種の産卵地ではアライグマによるアズマヒキガエルの捕食が確認されており,本種にも捕食圧が及んでいる可能性が高い.[5][7]

執筆者:鈴木洋平


引用・参考文献

1. Matsui, M., Y. Misawa, K. Nishikawa, and T. Shimada. 2017. A New Species of Lentic Breeding Salamander (Amphibia, Caudata) From Central Japan. Current Herpetology, 36(2): 116-126.

2. 大竹勝・島田知彦,2016.両生類, 豊田市生物調査報告書作成委員会(編)豊田市生物調査報告書分冊その3,pp. 187–209.豊田市環境政策課, 豊田. 

3. 環境省自然環境局野生生物課 希少種保全推進室編. 環境省レッドリスト2018補遺資料. p. 19

4. 環境省. 環境省レッドリスト2019. https://www.env.go.jp/press/files/jp/110615.pdf参照2019-05-07.

5. 島田知彦, 2020. ミカワサンショウウオ,愛知県環境調査センター(編)愛知県の絶滅のおそれのある野生生物レッドデータブックあいち2020 動物編, p. 198. 愛知県, 愛知.

6. 大竹勝・榊原圭志, 2002. サンショウウオの一種,愛知県環境部自然環境課(編)愛知県の絶滅のおそれのある野生生物レッドデータブックあいち2009 動物編, p. 165. 愛知県.

7. 島田知彦, 2020. ミカワサンショウウオの産卵地で観察されたアライグマによるアズマヒキガエルの捕食例. 爬虫両棲類学会報, 2020 (1), 54–56.