オオイタサンショウウオ

Hynobius dunni Tago, 1931

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オオイタサンショウウオ

  • 成体(大分県)
概要

[大きさ] 

  • 全長 11 – 17 cm

[説明]

  • 大分県、熊本県、宮崎県にかけて分布する。
  • 体は頑強で、緑褐色。
  • 標高10~800mの止水域で産卵する。

[保全状況]

  • 大分県天然記念物 – 佐伯城山のオオイタサンショウウオ(佐伯市城山)
  • 大分市指定天然記念物 – オオイタサンショウウオ及び生息地(霊山寺弁天池)
  • 環境省レッドリスト – 絶滅危惧Ⅱ類
  • 大分県レッドデータブック2021 – 絶滅危惧Ⅱ類
  • 熊本県レッドデータブック2019 – 絶滅危惧ⅠB類
  • 宮崎県レッドデータブック2015 – 絶滅危惧ⅠB類
分布

[分布]

  • 大分県、熊本県、宮崎県

[生息環境]

  • 平地から山地の林内に生息する[1]。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オオイタサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 大分県佐伯市城山[9]

[説明]

  • 近年まで本種とされてきた四国の集団は、遺伝的・形態的に差異が大きいことから、2018年に独立種トサシミズサンショウウオとして記載された[7, 9]。
  • 宮崎の個体群は他地域の個体群から遺伝的に分化している[7, 8]。
  • 本種は形態的に似ているトサシミズサンショウウオよりもヤマグチサンショウウオに遺伝的に近いとされる[3]。
体の特徴

[形態]

  • 体格は頑丈で、手足は長く、足指も長い。繁殖期には尾が扁平となる。
  • 背面は黄~緑褐色で、黒色の斑点が入る。側面に白色の斑点が散る個体もいる。腹面は灰白色。

[似た種との違い]

大分県の宇佐市や豊後高田市では、本種に加え、同じく止水性のヤマグチサンショウウオが記録されているが[1]、ヤマグチサンショウウオはオオイタサンショウウオより小型で、体色は緑褐色ではなく茶~黒褐色である。 かつて、オオイタサンショウウオの四国個体群とされていたトサシミズサンショウウオとは、本種の方が一回り大きいことや、本種は背面に黒い点を持つこと、腹面に白い斑紋を持たないことで区別される。

生態

[食性]

  • 成体はクモ、昆虫、ミミズ類などを捕食する[2]。

[繁殖]

  • 2~4月に標高10~800mの側溝や池沼、小河川など主に止水で繁殖する[1, 6]。
  • 水中の枯れ枝や石などに卵嚢を産み付ける[2, 6]。

[卵]

  • 卵嚢はバナナ型で、丈夫な外皮を持つ。
  • 一卵嚢中に含まれる卵は40~100個[5]。

[幼生]

  • 体色は灰褐色で、特に尾には黒斑が入る。
  • 越冬する場合もある。
その他

[コメント]

  • 宅地造成や農地整備、水田や池沼の管理放棄によって個体数が減少しているとされる[1, 4]。また、ペット目的の乱獲も危惧されている[2]。

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

  1. 堀江道廣. 2002. オオイタサンショウウオ, カスミサンショウウオ. レッドデータブックおおいた~大分県の絶滅のおそれのある野生生物~. 大分県自然環境学術調査会野生生物専門部会.編, 大分県生活環境部生活環境課: 158.
  2. 松井正文. 2014. オオイタサンショウウオ. レッドデータブック2014 日本の絶滅のおそれのある野生動物 3 爬虫類・両生類. 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編, 株式会社ぎょうせい: 98-99.
  3. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current herpetology, 38(1): 32-90.
  4. 佐藤眞一. 1968. オオイタサンショウウオの産卵場の現状. 遺伝22(12): 99-100.
  5. 末吉豊文. 2001. 宮崎県清武町加納地区周辺のオオイタサンショウウオの産卵状況と一腹卵数について. 宮崎県総合博物館研究紀要 22: 1-8.
  6. 末吉豊文・串間研之. 2004. オオイタサンショウウオの産卵行動. 宮崎県総合博物館研究紀要 25: 5-12.
  7. Sugawara, H., Watabe, T., Yoshikawa, T. and Nagano, M. 2018. Morphological and Molecular Analyses of Hynobius dunni Reveal a New Species from Shikoku, Japan. Herpetologica 74(2): 159-168.
  8. Sugawara, H., Nagano, M., Sueyoshi, T., & Hayashi, F. 2015. Local genetic differentiation and diversity of the Oita salamander (Hynobius dunni) in Kyushu revealed by mitochondrial and microsatellite DNA analyses. Current herpetology, 34(1): 1-11.
  9. 田子勝彌. 1931. 蠑螈と山椒魚. 芸艸堂.