Hynobius setoi Matsui, Tanabe et Misawa, 2019
両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > サンインサンショウウオ
概要
[英名]
San’in salamander [1]
[大きさ]
- 全長 8 – 12 cm [5]
- 頭胴長 5 – 7 cm [1]
[説明]
- カスミサンショウウオ松江型または日本海型として知られていたが、近年新種として記載された
- 山陰地方の日本海側に分布する
- 1月から3月に低地の水田の溝や湿地などにコイル状の卵嚢を産む
[保全状況]
- 環境省レッドリスト2020：絶滅危惧IB類
- 兵庫県版レッドリスト2017：Aランク（絶滅危惧I類相当）
- レッドデータブックとっとり改訂版：絶滅危惧Ⅱ類（カスミサンショウウオとして）
- 改訂しまねレッドデータブック２０１４：準絶滅危惧種（カスミサンショウウオとして）
分類
［分類］
- 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > サンインサンショウウオ
［タイプ産地］
［学名の意味］
種小名のsetoiは島根大学名誉教授で両生類の染色体研究で知られる瀬戸武司博士への献名[1]
［説明］
- 本種はかつてカスミサンショウウオ松江型または日本海型とされていた[2][3][4]。
- 2019年に遺伝的、形態的な違いからカスミサンショウウオから分けられ、新種として記載された[1]。
- 系統的にはホクリクサンショウウオH. takedai、クロサンショウウオH. nigrescens、ミカワサンショウウオH. mikawaensisに近い[1]。
体の特徴
［形態］[1]
- 背面はオリーブ色で斑紋がない。腹面は背面よりも明るく、小白点が散らばる。ほとんどの個体で尾の上下面に黄色の条線を持つ。繁殖期のオスの喉の下面は白くなる。
- 体は大きく、前後肢は比較的長い。尾は長く頭胴長の80%程度の長さ。肋条数は12。
- ほとんどの個体で後肢の第五趾を持つ。
［似た種との違い］[1]
カスミサンショウウオ種群（カスミ、ヤマト、セトウチ、ヒバ、アキ、イワミ、アブ、ヤマグチ）の他種とは、大型であること、頭部が大きく、前後肢が比較的長いこと、後肢の第五趾を持つこと、尾の上下面に黄色の条線を持つことなどで識別できる。また、基本的にこれらの種とは分布域が重ならない。
本種は島根県東部において、ヒバサンショウウオと同所的に生息しているが、より胴が短いこと、尾の高さが高いこと、後肢の第五趾を持つこと、尾の上下面に黄色の条線を持つことで見分けられる。
生態
［繁殖］
- 繁殖期は1月～3月で、低地の水田の溝や湿地などに産卵する[1][5]
［卵］[1]
- 卵嚢はコイル状で皺が入る。
- 卵数は34–159。
- 落ち葉や植物の根などに産み付けられる。
執筆者：福山伊吹
引用・参考文献
- Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current herpetology, 38(1), 32-90.
- 大川博志, & 宇都宮妙子. (1997). カスミサンショウウオ後肢趾の骨. 日本爬虫両棲類学雑誌14(4), 214.
- 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2005). 阿武・津和野地方および山口市に分布するカスミサンショウウオの一集団. 両生類誌, 14, 11-14.
- 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2007). 西日本におけるカスミサンショウウオの3つの大きなグループ. 爬虫両棲類学会報, 2007, 58–59.
- 関慎太郎, & 井上大輔編. (2019). 特盛山椒魚本. NPO法人北九州・魚部（ぎょぶる編集室）.
オスの成体(鳥取県)
