オキサンショウウオ

Hynobius okiensis Sato, 1940

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オキサンショウウオ

幼体(写真提供:白石泰志)
概要

[英名]

  • Oki salamander [1]

[大きさ] [1, 6]

  • 全長 9.9–13.3 cm
  • 頭胴長 5.6–7.6 cm

[説明]

  • 隠岐島の島後のみ生息する固有種
  • 海岸付近の低地から山頂付近までの森林に見られる
  • 成体は昆虫類、クモ類、ミミズなどを捕食する
  • 流水産卵性だが、止水性のイワミサンショウウオなどに近縁

[保全状況]

  • 隠岐の島町天然記念物
  • 特定第二種国内希少野生動植物種
  • 環境省レッドリスト2020-絶滅危惧Ⅱ類
  • 島根県レッドデータブック2014-絶滅危惧Ⅱ類
分布

[分布]

島根県隠岐諸島島後のみに分布

分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > オキサンショウウオ

[タイプ産地]

  • 隠岐諸島島後

[学名の由来]

  • 学名のokiensisは本種が生息する隠岐諸島に由来する

[説明] [2, 4, 5, 6]

  • 流水産卵性だが、止水性のイワミサンショウウオなどに近縁
  • 通常、流水性産卵を行うサンショウウオ属(ヒダ、ブチなど)の染色体数は2n=58であるが、本種は2n=56でエゾサンショウウオを除く止水性産卵を行うサンショウウオ属の種と等しい。このことから、本種は止水性の祖先が山がちな島嶼に進出したことで二次的に流水産卵性を獲得したと考えられている[5]。
体の特徴

[形態] [1]

  • 背中は赤紫がかった飴色で小さい黄褐色の斑点が散在する
  • 肋条数は通常13本、稀に14本
  • 四肢が比較的細長く、前後の肢をそれぞれ体側に沿わせると重なる
  • 第五趾は発達し、第一趾よりも長い
  • 尾は長く、尾の先端から三分の一程度は側扁している
  • 鋤骨歯列は深いV字型

[似た種との違い] [1, 2]

  • 隠岐諸島に分布するサンショウウオは本種以外知られていない。形態的に似るカスミサンショウウオ種群(カスミ、ヤマト、セトウチ、ヒバ、アキ、ヒロシマ、ゲイヨ、サンイン、イズモ、アブ、ヤマグチ、イワミ)とは、流水性産卵であること、体が大きいこと、黄褐色の斑点を持つこと、後肢の第五趾が発達し第一趾よりも長いことなどで見分けられる。また、流水性産卵であるヒダ、ヒガシヒダ、ベッコウサンショウウオ、およびブチサンショウウオ種群(ブチ、チクシブチ、チュウゴクブチ)とは、黄色い斑点をもつこと、深いV字型の鋤骨歯列をもつこと、尾が細く側扁なこと、幼生が黒い爪をもたないことで見分けられる。
生態

[繁殖]

  • 繁殖期は2月から3月で水温8~10℃の山地渓流の源流で産卵する[1, 3, 4]
  • 飼育下では産卵後、約40日で孵化し約105日で変態することが知られている[3]

[卵] [3, 6]

  • 一卵嚢対中の卵数は20–50個程度で卵の直径は3mmほど
  • 卵嚢は透明なひも状で、卵嚢外皮に縦条をもつ

[幼生] [1, 4, 6]

  • 黄褐色で、大きな黒い斑点が入る
  • 頭は扁平で、側扁した尾をもつ
  • ヒダサンショウウオなどに見られるような黒爪が見られないが、白い爪をもつ
  • 当年幼生はその年の8月下旬から9月上旬、越冬幼生は翌年の8月下旬から9月上旬に変態上陸すると考えられている
  • 水生昆虫やヨコエビを餌として食べる
  • サワガニやハゼ科底生魚が天敵として知られている
その他

写真提供をいただいた白石泰志様に、この場でお礼を申し上げます。

執筆者:國廣由人

引用・参考文献

  1. 佐藤井岐雄. (1940). 隠岐の山椒魚について. 動物学雑誌. 52(8), 298-309
  2. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current Herpetology, 38, 32–90.
  3. 大氏正己. (1981). オキサンショウウオの分布と発生について. 動物学雑誌. 90(4), 481.
  4. 高原輝彦., 藤田大登., 吉田真明., 秋吉英雄. (2019). オキサンショウウオHynobius okiensis 幼生の季節的な個体数変動と分布制限要因の解明. 24(1), 83-93.
  5. Matsui, M., Nishikawa, K., Misawa, Y., & Tanabe, S. (2007). Systematic Relationships of Hynobius okiensis among Japanese Salamanders (Amphibia: Caudata). Zoological Science, 24, 746–751.
  6. 日本爬虫両生類学会 (2021) 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版.

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