イシヅチサンショウウオ

Hynobius hirosei Lantz, 1931

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

  • 成体(徳島県5月)/ Adult
概要

[大きさ] 

  • 全長 14–19 cm

[説明]

  • 日本の小型サンショウウオ類ではかなり大型になる。体色は茄子色で模様をもたないことが多い。山地の林床に生息する。四国に固有の種。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧(NT)
分布

[分布]

  • 四国

[生息環境]

  • 山地の森林に生息する。
分類

[タイプ産地] 

  • 石鎚山

[説明]

体の特徴

[形態]

  • 日本の小型サンショウウオとしてはかなり大型。背面は茄子色で、模様は全くないか銀白色の小さな斑点がわずかに散る。
  • 頭部は長い。尾は肉厚で、後半部分で扁平する。肋条は12~14本で13が普通。肢は短く、前後の肢を体側に沿って伸ばすと0~3肋皺を開けることが多い。鋤骨歯列は浅い。[3, 4]

[似た種との違い]

成体は大きく、また斑紋をもたないことが特徴で、同所に分布する種で似たものはない。よく似た山椒魚に紀伊半島に分布するオオダイガハラサンショウウオと九州のソボサンショウウオがいて、どちらも大型で斑紋の無い茄子色。本種はオオダイガハラサンショウウオやソボサンショウオに比べ鋤骨歯列が浅く、その深さは横幅の0.5~0.8倍ほど。[3, 5]

生態

[繁殖]

  • 繁殖期は5月中旬で、産地の渓流で行われる[6]。

[卵]

  • 卵嚢は渓流の岩底に産み付けられる。バナナ型で、岩などに付着しない方の一端が鞭のように細長く伸びる。卵は4.5mmほどと大きく、クリーム色をしている。[6]

[幼生]

  • 幼生は黄褐色で、黒褐色の斑紋をもつ。流水性だが指先に爪をもたないことが特徴。一部は年内に変態するが、冬を越し翌年上陸するものもいる。[6]
その他

[コメント]

  • 大きくて黒くて迫力があります。と言ってもオオダイガハラよりは顔がごつくなく、可愛らしさもあり。
  • 近年まで同種と一括りにされていたオオダイガハラサンショウウオやソボサンショウウオ、オオスミサンショウウオなどと遺伝的に割と遠縁であるというのは興味深いと思われます。ただサンショウウオ属の系統関係にはまだ曖昧な部分もあり、今後の研究が待たれるところです。

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. Nishikawa K, Matsui M, Tanabe S, Sato S (2001) Geographic Enzyme Variation in a Japanese Salamander, Hynobius boulengeri Thompson (Amphibia: Caudata). Herpetologica 57:281–294
  2. Nishikawa K, Matsui M, Tanabe S (2005) Biochemical phylogenetics and historical biogeography of Hynobius boulengeri and H. stejnegeri (Amphibia: Caudata) from the Kyushu region, Japan. Herpetologica 61:54–62
  3. Nishikawa K, Matsui M (2014) Three new species of the salamander genus Hynobius (Amphibia, Urodela, Hynobiidae) from Kyushu, Japan. Zootaxa 3852:203–226
  4. Lantz LA (1931) Description of two new salamanders of the genus Hynobius. Annals And Magazine of Natural History 7:177–181
  5. Nishikawa K, Matsui M, Tanabe S, Sato S (2007) Morphological and Allozymic Variation in Hynobius boulengeri and H. stejnegeri (Amphibia: Urodela: Hynobiidae). Zoolog Sci 24:752–766
  6. 佐藤, 井岐雄 (1934) 四國産山椒魚の研究 : I.石鎚山及び其附近の山椒魚に就て. 動物学雑誌 46:464–472