ブラーミニメクラヘビ

 Indotyphlops braminus (DAUDIN, 1803)

爬虫綱 > 有隣目 > メクラヘビ科 > インドメクラヘビ属 > ブラーミニメクラヘビ

  • 石の下にいた成体(沖縄島)
概要

[大きさ] 

  • 全長20 cm以下

[説明]

  • 倒木や石の下に生息する。
  • シロアリやアリの卵・幼虫などを餌とする。
  • 尾の先端が尖っており、掴むと刺してくることがある。
  • ミミズに似ているが、鱗、口、目があること、環帯がないことで区別できる。
  • 単為生殖を行う
分布

[分布]

  •  伊豆諸島(八丈島)、小笠原諸島、尖閣諸島魚釣島、琉球列島の多くの島嶼、長崎県、静岡県、和歌山県、鹿児島県などに移入している。原産地は不明であり、世界中の熱帯を中心に広く分布している[3, 4, 5, 6]。

[生息環境]

  • 野外では倒木や岩石の下、リターの下などに生息する[3]。
  • 稀に樹上で見つかることもあるが、これはアリ類を捕食するためだと考えられる。
  • シロアリやアリ類の巣で見つかることもある。自然度の高い森林ではあまり見られず、市街地や農地などで観察されることが多い。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > メクラヘビ科 > インドメクラヘビ属 > ブラーミニメクラヘビ

[タイプ産地] 

  • Vizagapatam(インド)

[説明]

  • 1803年、Daudinによって記載された。シノニムが多い。本属は小型の種が多く、アジアの熱帯・亜熱帯域に分布する[2]。
  • 本種は雑種起源の三倍体単為生殖種とされるものの、親種やどこで種が生まれたのかは不明である[7, 8, 9, 10]
体の特徴

[形態]

  • 体色は黒褐色で艶がある。青灰色の個体を野外で見ることがあるが、これは脱皮前の個体である。
  • 非常に小さな眼を持つ。
  • 体鱗列数は20枚で、体表は滑らかである。
  • 尾の先端が尖っている。
  • 地域間での形態差はない一方、椎骨数や体軸に沿った鱗の数には地域内で大きな変異が見られる[9]

[似た種との違い]

  • 国内で本種に似たヘビ亜目の種はいない。
  • むしろフトミミズ科などミミズ類に似るが、環帯がないこと、眼、鱗、口があることから簡単に区別できる。
生態

[食性]

  • シロアリ類の成虫・蛹・幼虫・卵、アリ類の蛹・幼虫・卵を主に捕食する[2]。
  • シロアリを捕食する際は頭部を切り落とし、腹部と胸部のみを食べる[1]。
  • 飼育下ではコオロギ類の卵の捕食例もある[3]。

[繁殖]

  • 本種は3倍体の核相を持ち単為生殖を行うため、♀のみで繁殖することができる[4]。
  • 熱帯域ではほぼ一年を通して産卵を行うものの、琉球列島では6月中旬~7月中旬に産卵が集中する[9, 10, 11, 12]

[卵]

  • 6・7月に1cm程度の細長い卵を1~6個ほど産む[2]。
その他

[その他]

  • 詳細な侵入経路は不明だが、観葉植物のプランターの土に混入して移動することで分布域を広げているとされる。単為生殖をする特性上、一度侵入すると駆除は難しいため、土の移動には十分な注意を払う必要がある。今後、本州・九州での発見例は増えていくと予想される。

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

1. Mizuno T. & Kojima Y. 2015. A blindsnake that decapitates its termite prey. Journal of Zoology 297: 220–224.

2.Stuebing R. B., Inger R. F. & Lardner B. 2014. A field guide to the Snakes of Borneo Second edition. Natural History Publications (Borneo), Kota Kinabalu.p309.

3. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002. 決定版日本の両生爬虫類. 平凡社, 東京. p336.

4. 横畠恭志・横田昌嗣・太田英利.2009. 尖閣諸島魚釣島の生物相と野生化ヤギ問題. IPSHU研究報告シリーズ研究報告 No.42: 307–326.

5. 清水善吉・玉井済夫・弓塲武夫・竹中利明・水野泰邦. 2020. 和歌山県における爬虫類および両生類の記録. 南紀生物 62(2):199–201.

6. 岡田滋. 2019. ブラーミニメクラヘビの単為生殖, 何て便利なふえ方!. 九州・奄美・沖縄の両生爬虫類. 九州両生爬虫類研究会編. 東海大学出版部. 神奈川: 228–229.

7. Wynn, A. H., Cole, C. J. & Gardner, A. L. 1987. Apparent triploidy in the unisexual brahminy blind snake, Ramphotyphlops braminus. American Museum novitates No. 2868; 1–7.

8. Patawang, I., Tanomtong, A., Kaewmad, P., Chuaynkern, Y. & Duengkae, P. 2016. New record on karyological analysis and first study of NOR localization of parthenogenetic brahminy blind snake, Ramphotyphlops braminus (Squamata, Typhlopidae) in Thailand. The Nucleus, 59(1), 61–66.

9. Ota, H., Hikida, T., Matsui, M., Mori, A. & Wynn, A. H. 1991. Morphological variation, karyotype and reproduction of the parthenogenetic blind snake, Ramphotyphlops braminus, from the insular region of East Asia and Saipan. Amphibia-Reptilia, 12(2), 181–193.

10. 太田英利. 2017. 第Ⅲ編9章 単為生殖の爬虫類. これからの爬虫類学. 松井正文編. 裳華房. 東京: 100–114.

11. Kamosawa, M. & Ota, H. 1996. Reproductive biology of the brahminy blind snake (Ramphotyphlops braminus) from the Ryukyu archipelago, Japan. Journal of Herpetology, 9–14.

12. Nussbaum, R. A. 1980. The brahminy blind snake (Ramphotyphlops braminus) in the Seychelles Archipelago: distribution, variation, and further evidence for parthenogenesis. Herpetologica, 215–221.