クチノシマトカゲ

 Plestiodon kuchinoshimensis Kurita et Hikida, 2014

爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ科 > トカゲ属 > クチノシマトカゲ

概要

[大きさ] 

  • 頭胴長 6.0~8.5 cm

[説明]

  • 鹿児島県十島村の口之島にのみ生息する固有種
  • 遺伝的・形態的に識別できることから、2014年に新種記載された
  • 島全体に分布し、集落近くでも見られる

[保全状況]

  • 鹿児島県レッドデータブック2003:絶滅危惧Ⅱ類(口之島のオキナワトカゲ)
  • 環境省レッドリスト2020:情報不足
分布

[分布]

  •  口之島

[生息環境]

  • 集落付近から林道、海岸近くまで島全体に生息している[1, 4]
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > トカゲ科 > トカゲ属 > クチノシマトカゲ

[タイプ産地] [4]

  • 鹿児島県十島村 口之島

[説明][2, 3, 4]

  • 過去、ニホントカゲやオキナワトカゲと同定されてきたが、遺伝的・形態的に差があることから、2014年に新種記載された
  • 和名と学名は、唯一の生息地である口之島に由来する
  • アロザイム分析では、オキナワトカゲと近縁であるとされた
  • 核DNA・mtDNA解析の結果から、本種は形態的に近いオキナワトカゲではなく、地理的に大きく離れたイシガキトカゲと最も近縁であると判明した
体の特徴

[形態]

  • 成体は褐色で、体側に赤褐色の縦条が見られる
  • 幼体は褐色で、淡褐色の縦条が5本ある。尾は青色
  • なお、近縁なイシガキトカゲの幼体は黒色の体色に鮮やかな青色の尾を持つのに対し、本種の体色は薄い。これは外来の捕食者が侵入する以前の口之島に、本種を捕食する生き物がほとんどいないためであると推測されている[4]
  • 体鱗は胴の中央部で30列が普通だが、27~32列の変異がある
  • 頭部は短く、後鼻板が左右ともにない

[似た種との違い]

  • 口之島ではヘリグロヒメトカゲも生息しているが、ヘリグロヒメトカゲは手足がかなり短く胴部が長いなど形態差が大きく、識別は容易である
  • オキナワトカゲと形態が似るものの、体鱗列数が通常26列(クチノシマトカゲで通常30列)、幼体の体色が黒褐色(クチノシマトカゲは褐色)などの点が異なる。また、分布域は重ならない
生態

[行動・繁殖][4]

  • 昼行性である
  • 孵化幼体は7月下旬ごろに得られている
その他

[その他]

  • 本種の祖先は、八重山諸島から海洋分散することで、トカラ列島に分布するようになったと推測されている[4]
  • 本種は外来種であるニホンイタチやシマヘビの捕食圧によって減少していると考えられている[5, 6]
  • 本種は食性や産卵数など基礎的な生態情報が不足している。調査・研究が待たれる

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

  1. Hikida T., Ota H., Toyama M. 1992. Herpetofauna of an encounter zone of Oriental and Palearctic elements: amphibians and reptiles of the Tokara Group and adjacent islands in the northern Ryukyus, Japan. Biological Magazine Okinawa 30: 29–43.
  2. Kato J., Ota H. and Hikida T. 1994. Biochemical systematics of the latiscutatus species-group of the genus Eumeces (Scincidae, Reptilia) from East Asian islands. Biochem Syst Ecol 22: 491–500
  3. Kurita K. and Hikida T. 2014. Divergence and long-distance overseas dispersals of island populations of the Ryukyu five-lined skink, Plestiodon marginatus (Scincidae: Squamata), in the Ryukyu Archipelago, Japan, as revealed by mitochondrial DNA phylogeography. Zoological Science 31: 187–194.
  4. Kurita K. and Hikida T. 2014. A New Species of Plestiodon (Squamata: Scincidae) from Kuchinoshima Island in the Tokara Group of the Northern Ryukyus, Japan. Zoological Science 31(7): 464–474.
  5. 太田英利. 2003. トカラ列島, 口之島のオキナワトカゲ. 鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 動物―鹿児島県レッドデータブック―. 鹿児島県環境技術協会, 鹿児島. p103.
  6. Ota H., Toyama M., Chigira Y., Hikida T. 1994. Systematics, biogeography and conservation of the herpetofauna of the Tokara Group, Ryukyu Archipelago: new data and review of recent publications. WWF Japan Science Report 2: 163–177.