サキシママダラ

Lycodon rufozonatus walli ( Stejneger, 1907 )

爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > マダラヘビ属 > アカマダラ > サキシママダラ

概要

[大きさ] 

  • 全長50〜100 cm。仲の神島では130 cmにも達する。

[説明]

  • アカマダラの八重山諸島、宮古諸島固有亜種。
  • 頭のくびれは小さく、全身が筋肉質で力強い。眼は小さく瞳孔は縦長。
  • 背面には黒または黒褐色の太くぼやけた横帯が入り、その境界は黄土色。帯の数や色合いは生息する島ごとに異なる。
  • 地表性で夜行性。森林や草地、畑や人家近くでよく見られる。路上に出て車に轢かれてしまうことが多い。石垣島、西表島
  • 主にカエル、トカゲ、ヘビを捕食する。ヘビの中では珍しく死体を食うこともある。無毒。卵生。
  • 捕まえると総排出腔からとても臭い液を出してなすりつけてくる。

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック指定:なし
  • 都道府県レッドデータブック指定:なし
  • 絶滅の恐れのある地域個体群(LP):宮古諸島のサキシママダラ
  • その他:竹富町自然保護条例にて希少野生動植物種指定・宮古島市自然保護条例にて保全種指定
分布

[分布]

  • 八重山諸島、宮古諸島に広く分布。

[分布]

  • 基本的に地表性だが、脱皮前に木に登り樹洞の水たまりに浸かることもある。(栗本, 2004)
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > マダラヘビ属 > アカマダラ > サキシママダラ

[タイプ産地] 

  • タイプ産地:石垣島(採集者 Owston)

[説明]

  • 種アカマダラの八重山、宮古諸島固有亜種である。基亜種アカマダラ L . r. rufozonatusは対馬、尖閣諸島、国外では台湾、韓国からインドシナ半島北部にかけて分布。
体の特徴

[形態]

  • 全長50〜100 cm。仲の神島では大型化し、130 cmにも達する。尾は全長の1/5程度を占める。
  • 体型は適度に太く、筋肉質で締めつける力が強い。頭と首の境界はあまり明瞭でない。
  • 体鱗は17列で滑らか、腹板は177〜195枚、尾下板は73〜87対。
  • 背面に太い帯が全身に渡って入り、その間隙は黄土色で鱗1枚程度の細さである。体の後半に向かって帯がぼやける個体が多い。帯の数は胴体で22〜34、尾で15〜20で、島ごとに数が異なる。宮古島では帯が少なく、与那国島では帯が多く全身で50本を超える個体もいる。体側面には小さい黒斑がたくさん入る。腹面は黄土色で体の後半では黒斑が点在する。
  • 眼はやや小さく(特に成体)、虹彩は黄色あるいは金色がかる。瞳孔は縦長の楕円で黒色。

[サキシマバイカダとの違い]

  1. より体型が太く頭があまりくびれていない。
  2. 眼が小さく、あまり突出していない。
  3. サキシママダラは地表で見つかることが多いが、サキシマバイカダは樹上で見つかることが多い。

系統的に近縁で、似たような白黒の帯模様が入るサキシマバイカダとは見間違えることもあるかもしれない。しかし、サキシマバイカダは樹上生活に適応して非常に細長く縦扁した体型をしていて、尾も長く鞭状に伸びている。比較的細い幼蛇のサキシママダラと比べてもずっと細長い印象を受ける。また、サキシマバイカダの眼は大きく左右に突出していて全体が黒っぽいのに対して、サキシママダラの眼はやや小さく、縦長の瞳孔がはっきり分かる。生態的には、サキシママダラはほぼ地表で見られるのに対し、サキシマバイカダは樹上で見られることが多い。ただし後者も時折車道上で見つかることはある。なお両者の生息地において、サキシマバイカダの方が圧倒的に見る頻度は少ないだろう。

生態

[食性]

  • ヒメアマガエル
  • サキシマヌマガエル
  • ヤエヤマアオガエル
  • オオヒキガエル(捕食中に死亡した例もいくつかある)
  • ホオグロヤモリ
  • キシノウエトカゲ
  • サキシマカナヘビ
  • サキシマキノボリトカゲ
  • ブラーミニメクラヘビ
  • サキシマハブ
  • サキシマスジオ(死体を捕食)
  • セグロアジサシ(仲の神島で成鳥、幼鳥、卵、死体の捕食例がある)
  • カグラコウモリ

以上の動物を捕食した例がある(Mori and Moriguchi, 1988;浜中ほか, 2014)。

様々な脊椎動物を捕食するが、特に生活圏が被り、大きさがちょうど良い両生類・爬虫類の捕食例が多い。生き餌を捕食することの多いヘビの中では珍しく、死体を食らうことが知られている。

石垣島で急速に増えている外来種のオオヒキガエルを捕食中に死んだ個体がいくつか確認されている。これはオオヒキガエルが皮膚から分泌する強力な毒によるものであろう。 ただし小型のオオヒキガエルを少数捕食した場合では死なず、致死量の毒を分泌する大型個体か、小型個体を複数捕食した場合に死に至るようである(Ota, 2008)。

他の爬虫両生類がほとんど生息しておらず、多数の海鳥の繁殖地となっている小さな無人島の仲の神島では、海鳥のセグロアジサシが主要な餌資源となっている。 この島に生息するサキシママダラは全長130 cmと大型化することが知られており、これは比較的大きな餌である海鳥を捕食するための適応と考えられる(Kohno and Ota, 1991)。

[捕食]

天敵として、イリオモテヤマネコによる捕食例が知られている(田中・森, 2000)。

その他

[保全]

  • 西表島や石垣島では未だ個体数は多いが、生息地の縮小や自動車に轢かれる事故の影響は受けている。宮古島では好適な環境が非常に少なく、絶滅の恐れがある。

執筆者: 藤島幹汰


引用・参考文献

  1. 栗本篤臣. 2004. 樹洞の水たまりに浸かる脱皮前のサキシママダラについて. 爬虫両棲類学会報 2004(1):1-2
  2. 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.
  3. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. The Snake 20:pp.98-113.
  4. 田中幸治, 森哲. 2004. 日本産ヘビ類の捕食者に関する文献調査. 爬虫両生類学会報 2000(2):88-98.
  5. 富田京一. 2011. 山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ. 山と渓谷社, 東京. pp.196-198.