アカマタ

Lycodon semicarinatus (Cope, 1860)

爬虫綱>有隣目>ヘビ亜目>ナミヘビ科>オオカミヘビ属>アカマタ

  • 成体(撮影地:久米島)
概要

[地方名] 

  • アカマタ(沖縄)、マッタブ(奄美大島)[1]

[大きさ] 

  • 全長 80 – 200 cm

性的二型があり、雄は頭胴長(SVL)が150cmを超えるが、雌は100cmを超えることはない[3]。

頭胴長に対する頭のサイズは雌のほうが雄よりも大きい[4]。

[説明]

  • 沖縄諸島及び奄美大島を含む中琉球のほとんどの島に分布[2]。
  • 夜行性で食性幅が広く、他のヘビやトカゲ、カエルのほか、小型哺乳類、鳥類から魚類まで、多様な脊椎動物を採餌する[6,7]。

[保全状況]

  • 現時点でレッドデータへの記載はない。

[毒性]

  • 無毒
分布

[分布]

  • 沖縄諸島及び奄美大島を含む中琉球のほとんどの島に分布[2]。

[生息環境]

  • 海沿いの砂浜から内陸の森林まで、幅広い環境に生息する
体の特徴

[形態]

  • 背面は褐色の地に比較的幅の広い黒色の横帯模様が入り、黒色の横帯模様の間は赤味がかる個体が多いが、体色や模様は地域や個体によって変異がある。
  • 頭部背面は黒色。
  • 個体により赤褐色の模様が入るが、その変異は大きい。
  • 胴中央部の体鱗列数は17列。
  • 腹板数は215~233。
生態

[食性]

  • 夜行性で食性幅が広く、他のヘビやトカゲ、カエルのほか、小型哺乳類、鳥類から魚類まで、多様な脊椎動物を採餌する[6,7]。
  • 慶良間諸島と沖縄島北部の個体群において、ウミガメの孵化幼体または卵を採餌するというヘビでは珍しい採餌生態が報告されている[3,8]。
  • ウミガメを捕食する時、砂浜を這い回って積極的に仔ガメを探す探索型と砂浜から脱出する仔ガメを産卵巣の直上で待つ待ち伏せ型を使い分けるという柔軟な採餌戦略を有する。
  • 車に轢かれたカエルなどの死体を採餌することがあり、日和見的な腐肉食を行う。

[繁殖][5, 10]

  • 地域により多少異なるが3月~6月に交尾を行う。
  • 6月~7月に産卵。
  • 産卵数は4~19個。
  • 卵は白色の長楕円形で、長径約40.0±5.88 mm、短径約17.3±1.86 mm(平均±標準偏差)。
  • 卵殻は皮革状で弾力がある。
  • 27℃以上で孵卵した卵の孵化日数は平均58.8日。
  • 繁殖期に雄は雌を獲得するために、コンバットダンスと呼ばれる儀式化された闘争を行う[9]。
  • アカマタのコンバットダンスは野外と飼育下の両方で観察されており、互いの体サイズが近い場合、1時間以上行うことがある。
  • コンバットダンスは他のヘビで報告されている行動様式[11]と同様に、互いの体を巻き付けあう。
  • 雄の体重は5月~8月に低下することが報告されており、この時期には摂食以外の繁殖等に関連した活動が盛んである可能性が示されている[10]。

[成長]

  • 現時点では、アカマタの成長率に関する長期間の野外調査が行われていないため、野外での幼蛇が成熟するまでの正確な成長率を示せるデータが不足している。
  • 頭胴長が40~55 cmの間を境にして、成長に伴う体重の変化が、やせ傾向から、肥満傾向へと変化する[10]。幼体期の途中において、体重の相対成長が肥満の方向へ変わる同様の現象は、ハブにおいても認められる[12]。
  • 繁殖状態の指標と推定される白色のクリーム状物質を排出した最小の雄の頭胴長82.5 cmが[13]、妊娠雌の最小の頭胴長70.1 cmよりも大きかったことから、成熟サイズは雄よりも雌のほうが小さい可能性が示されている[10]。
その他

[文化]

【沖縄の浜下り】

沖縄では浜下り(はまうい)と呼ばれる女の子の節句が、旧暦3月3日に行われる(女性が潮水に手足を浸して穢れを落とす儀礼)。女性が穢れを落とす由来となった昔話にアカマタが出てくる。

「娘の元に夜な夜な青年に化けたアカマタが訪れ、娘は青年(アカマタ)との子を身籠ってしまう。娘は青年がどこから来るのかが気になり、糸を通した針を青年の襟元に刺して身元を探ることで、青年の正体がアカマタの大蛇であることを知った。恐れた娘は母とともにユタに相談し、ユタは旧暦3月3日に潮水に体を浸すように言った。娘はユタの助言の通りに潮水に浸かると、大蛇の子が7匹流れ出た。」

執筆者:松本和将
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引用・参考文献

  1. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎.2002.日本の両生爬虫類.
  2. Toyama, M and Ota, H. 1991. Amphibians and reptiles of Ryukyu Islands. P. 233–254. In: WWF Japan (ed.), Study of Essential Factors for Preservations of Wild Life in the Nansei Islands. Japan Agency of Environments, Nature Conservation Department, Tokyo.
  3. Mori, A., Ota, H. and Kamezaki, N. 1999. Foraging on sea turtle nesting beaches: Flexible foraging tactics by Dinodon semicarinatum (Serpentes: Colubridae). pp. 99-128. In: H. Ota (ed.), Tropical Island Herpetofauna: Origin, Current Diversity, and Conservation. Elsevier Science, Amsterdam.
  4. Takiguchi, I and Ota, H. 2006. Sexual Dimorphism in a Colubrid Snake, Dinodon semicarinatum (Reptilia: Squamata), from Okinawajima Island of the Central Ryukyus, Japan. Current Herpetology 25(2): 79–92.
  5. 高田榮一・大谷勉.2011.原色爬虫類・両生類検索図鑑.
  6. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. Snake 20: 98–113.
  7. 浜中京介・森哲・森口一.2014.日本産ヘビ類の食性に関する文献調査.爬虫両棲類学会報.2014(2): 167–181.
  8. 松本和将・高岡千早.2013.沖縄県国頭村の東海岸においてウミガメの産卵巣から発見されたアカマタ.AKAMATA.24: 25–28.
  9. 西村昌彦.1990.琉球列島におけるヘビの社会行動の目撃例1.沖縄生物学会誌.27: 47–51.
  10. 寺田考紀・西村昌彦・香村昂男.2011.沖縄島産アカマタの繁殖に関する資料.沖縄県衛生環境研究報.45: 95–102.
  11. Carpenter, C, C. 1986. An inventory of combat ritual in snakes. Smithsonian herpetological information service. 69: 1–18.
  12. Nishimura, M and Kamura, T. 1994. Body mass changes in Trimeresurus flavoviridis (Viperidae) on Okinawa Island, Japan. Res. Popul. Ecol. 36: 173–179.
  13. 西村昌彦・香村昂男.2011.沖縄島産アカマタにおける主に尾部の計測に関わる資料-尾の相対成長,尾切れと白色クリーム状物質の排出の頻度―.沖縄県衛生環境研究報.45: 103–106.

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