ハナサキガエル

Odorrana narina (Stejneger, 1901)

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > ハナサキガエル

  • ハナサキガエル成体(緑型)
概要

[大きさ] 

  • 体長 4 – 7 cm

[説明]

  • 長い後脚を持つスマートなカエル
  • 茶褐色~青灰色と体色は変異に富む
  • ピッという高い音で鳴く
  • 沖縄島北部(やんばる)の渓流にのみ分布
  • 近縁種が奄美~台湾にかけて生息
  • 集団産卵を行う

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2017 – 絶滅危惧Ⅱ類。
  • 第3版沖縄県レッドデータブック – 絶滅危惧ⅠB類。
分布

[分布]

  • 沖縄県沖縄島北部(やんばる)
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > ハナサキガエル

[タイプ産地] 

  • 沖縄島

[説明]

  • ニオイガエル属はアカガエル属から分割された分類群である[1]。
  • 学名のnarinaは「鼻の」の意で、外鼻孔が吻端近くにあることが由来である[3]。
  • かつて本種は南西諸島に広く分布するとされていたが、形態および遺伝的な差からハナサキガエル、アマミハナサキガエルO. amamiensis、オオハナサキガエルO. supranarina、コガタハナサキガエルO. utsunomiyaorumの4種に分けられた[4]。
体の特徴

[形態]

  • 背面の体色は褐色から緑色と様々.まれに青灰色の個体も見られる。体表はほぼ平滑。
  • 後脚がよく発達しており、ジャンプ力に優れる。
  • ♀は♂よりも大型化する。

[似た種との違い]

  • 同所的に生息するホルストガエルはより大型であり、後脚が短い。ハナサキガエルと同じく後脚の長いリュウキュウアカガエルは鼓膜が黒く目立たず、背面と体側面の色彩が同じである。近縁種であるアマミハナサキガエル(奄美大島、徳之島)やオオハナサキガエル(石垣島、西表島)はより大型化する。コガタハナサキガエル(石垣島、西表島)は吻が短く、四肢が短い。
生態

[食性]

  • トビムシ類、ミミズ類、多足類、クモ類やバッタ類、カメムシ類、チョウ類の幼虫、アミメカゲロウ目、アリ類などを捕食する。特に大型の個体はバッタ目を、小型の個体はカメムシ目やアリ類を良く食べる[2]。比較的小型の餌を好む[5]。

[繁殖]

  • 繁殖は12~2月の厳冬期に行う[5]。
  • 山地渓流の滝壺や流れの緩やかな淵などで集団産卵を行う。卵はぶどうの房状で川岸や流木などにぶら下げられる[3,5]
  • 毎年ほぼ決まった場所で産卵を行う[5]。

[卵]

  • 蔵卵数は150~250個程度である[3]。

[幼生]

  • 40mm近くまで成長する。地色は茶褐色で細かな黒斑が入る。
  • 孵化したばかりの幼生は白色で、しばらくは卵殻を食べて成長する[5]。
  • 変態時の体長は13mm前後である[3]。

[鳴き声]

  • ピッ・ピヨ・ピーなど多様
その他

[その他]

  • 毎年、決まった場所で産卵を行う特性から、産卵場所が破壊されると、個体群維持に大きな影響が出る可能性がある。そのため、本種の保全には水系とその周辺の森林を意識した活動が重要である[5]。

執筆者:高田 賢人


引用・参考文献

  1. Fei, L., C.-y. Ye, & Y.-z. Huang. 1990. Key to Chinese Amphibians. Chongqing, China: Publishing House for Scientific and Technological Literature.
  2. Isamu Okochi & Seiki Katsuren. 1989. Food Habits in Four Species of Okinawan Frogs. Current Herpetology in East Asia: 405-412.
  3. 松井正文・前田憲男. 2018. 日本産カエル大鑑. 株式会社文一総合出版, 東京. 272pp.
  4. Masahumi Matsui. 1994. A taxonomic study of the Rana narina complex, with description of three new species (Amphibia: Ranidae). Zoological Journal of the Linnean Society, Volume 111 (4): 385–415.
  5. 千木良芳範・当山昌直. 2017.ハナサキガエル. “改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版”, 沖縄県環境部自然保護課(編), 沖縄県環境自然保護課, 那覇, 221-222.