Odorrana splendida Kuramoto, Oumi, Kurabayashi et Sumida 2011
両生綱 > 無尾目(カエル目) > アカガエル科 > ニオイガエル属 > アマミイシカワガエル
概要
[大きさ]
[説明]
黄緑色の地に黒く縁取られた褐色の斑紋が散らばる
日本一美しいカエルと称されることも
大型で平たい体型
世界で奄美大島のみに分布
湿潤な林の沢沿いや林道上でよくみられる
繁殖期(1~4月)には渓流沿いで、“クオッ”という甲高い鳴き声を聞くことができる
昆虫などの小動物を食べる
法律により捕獲・採集が禁止されている
[保全状況]
環境省:絶滅危惧ⅡB類
国内希少野生動植物種(種の保存法対象種)
鹿児島県指定天然記念物
IUCN:LEAST CONCERN
分布
[分布]
奄美大島のほぼ全域
徳之島からも記録があるが、誤りと考えられている[4]
[生息環境] [3]
常緑広葉樹林の自然林。渓流源流部の岩穴などを産卵地として利用する。
繁殖期は水量の少なく、産卵場所になるような岩の隙間が多い沢を利用し、
非繁殖期は水量が多く巨岩からなるような沢を生息地として利用している傾向がある。
分類
[分類]
両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > アマミイシカワガエル
[タイプ産地]
[説明] [2]
種小名のsplendidaという単語は、ラテン語で「鮮明な」「鮮やかな」という意味を持ち、本種の美しい色彩に基づいている。
アマミイシカワガエルは近年まで沖縄島に生息する近縁種と同種され、和名もイシカワガエルとされてきた。
2011年、イシカワガエルの奄美集団と沖縄集団が別種であることが明らかにされ、新種として記載された本種に アマミイシカワガエル、もともとイシカワガエルと呼ばれてきた沖縄集団に、オキナワイシカワガエルという新称がつけられた。
オキナワイシカワガエルとの遺伝的差異は小さいものの、交雑実験を行うと正常に発生しない、もしくは成長しても精子形成に異常が生じることが分かっている。
[形態] [2]
大型で、比較的平たい体型
背面には多数の隆起・顆粒が存在する
目は大きい
吸盤や水かきが発達する
黄緑色の地に黒く縁取られた褐色の斑紋が散らばる
腹面はほぼ単一な白色で、グレーの斑紋が少し散らばる
[似た種との違い]
同所的に分布するアマミハナサキガエルは色彩のバリエーションが多く、アマミイシカワガエルのような緑色の個体も時折見られる。アマミイシカワガエルの背面には黒く縁取られた褐色の斑紋が多数あるが、アマミハナサキガエルにはこのような斑紋が見られない。
同所的には分布しないものの、オキナワイシカワガエルとは以下の特徴により区別できる。
アマミイシカワガエルの方が背中の斑紋は小さく、荒く縁取られる[2]
アマミイシカワガエルは腹面の斑点が少ない[2]
頭部はオキナワイシカワガエルの方が大きい[2]
オキナワイシカワガエルの体色の方が黄色味が強い
背中には大型の斑紋が多数存在する
背中に大型の斑紋はない
頭部は小さく、黄色みは薄い
斑紋と頭部が大きく、黄色みがかった体色
生態
[食性]
[繁殖]
産卵は水量の少ない沢源流部の岩穴や土穴などで行われる。[6]
繁殖期は1月下旬〜5月上旬で、最盛期は2〜3月[6]
オスは繁殖期に産卵場所付近に集まり、“クオッ”という甲高い声で鳴く[5]
湧水があって水の枯れない穴が好んで用いられる[6]
一回の産卵数は1000個前後。全体的にクリーム色をした3mm強の卵が産卵される。
[鳴き声]
その他
[種内変異]
奄美大島西部の個体群(大型個体群)は、通常のアマミイシカワガエルより一回り以上大きいことが知られて おり、これらの分布域は通常サイズの個体群(通常個体群)の分布域とは重ならないことが知られている。
ミトコンドリアDNAを用いた解析では、大型個体群と通常個体群に遺伝的差異はほとんど現れない[2]。 一方、核DNAを用いた研究では、大型個体群と通常個体群の間で遺伝的差異が見られ、 この差異が体サイズの違いをもたらしている可能性が示唆されている[1]。
大型個体群は背面の斑紋が大きく、オキナワイシカワガエルに似た模様をしている。
西部の大型個体群
[生息状況]
大型の美麗種で日本一美しいカエルと称されることもある本種は、森林伐採や産卵流域の開発により、生息地の縮小・分断が引き起こされている。[5]
島内の個体群はいくつかの遺伝的に異なるグループに別れており、北東部の個体群は孤立しているものと思われる。[1][5]
また、ロードキルや外来動物による捕食、販売目的での密猟なども、本種の存続を脅かす要因としてあげられる。[5]
本種はコンクリートの林道上でも目にする機会が多い。奄美大島の林道では路上の生物に最大限注意を払い、徐行して通行することが重要である。
執筆者:福山亮部 このページはちずけきさまのご支援により作成されました。
引用・参考文献
Igawa, T., Oumi, S., Katsuren, S., and Sumida, M. 2013. Population structure and landscape genetics of two endangered frog species of genus Odorrana : different scenarios on two islands. Heredity, 110(1), 46.
Kuramoto, M., Satou, N., Oumi, S., Kurabayashi, A., and Sumida, M. 2011. Inter-and intra-island divergence in Odorrana ishikawae (Anura, Ranidae) of the Ryukyu Archipelago of Japan, with description of a new species. Zootaxa, 2767(1), 25–40.
岩井紀子・亘悠哉. 2006. 奄美大島におけるイシカワガエル, オットンガエルの生息状況. 爬虫両棲類学会報, 2006(2), 109-114.
大河内勇. 2002. 奄美大島で採集され,徳之島で撮影されたイシカワガエル. AKAMATA, 16, 9–12.
太田英利. 2014. 環境省(編)レッドデータブック2014 ー日本の絶滅のおそれのある野生生物ー 3爬虫類・両生類. (株)ぎょうせい, 東京.
大海昌平. 2006. 奄美大島におけるイシカワガエルの繁殖生態: 繁殖期における雌雄の動きと飼育下の産卵行動. 爬虫両棲類学会報, 2006(2), 104-108.
松井正文. 2006. 最近の日本産両生類の学名の変更について. 爬虫両棲類学会報, 2006(2), 120–131.
松井正文. 2018. 日本産カエル大鑑. 文一総合出版, 東京.