オキナワイシカワガエル

Odorrana ishikawae (Stejneger, 1901)

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > オキナワイシカワガエル

概要

[大きさ] 

  • 全長 9-12 cm

[説明]

  • 沖縄県の北部、自然度の高い森「やんばる」にのみ生息する、日本固有種
  • 緑地に黒色斑点という背面の模様が特徴的であり、苔むした岩の上などにいると発見するのに一苦労する
  • 繁殖期である11月~4月になると、「クオッ…!」や「グルル!」など、とても特徴的な声で鳴く。これらの鳴き声は1対の鳴嚢によって生み出される
  • 近縁種であるアマミイシカワガエルとは、背面の模様(該当頁で説明)や腹部の黒色斑点の配置などで十分判別可能
  • 学名のishikawaeは、当時タイプ標本を所有していた東京大学の石川千代松氏にちなむ[1]
  • 一部の個体群では、アザンティック(黄色色素が抜け、体表が青色になったもの)の個体が見受けられる

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック指定:絶滅危惧IB類
  • 希少野生動植物種 (種の保存法)
  • 沖縄県指定天然記念物
分布

[分布]

  • 沖縄県の北部に位置する「やんばる」

[生息環境]

  • 「やんばる」内を流れる河川の上流、源流域、そしてその周辺の森林[2]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > オキナワイシカワガエル

[タイプ産地] 

  • 沖縄島

[説明]

  • Odorrana属は東アジアに広く分布する、アカガエル科最大の属である。四肢の先端には吸盤を備え、水かきの発達は前肢においては悪いことが多いが、後肢においては著しい。またニオイガエルの名前の通り、掴むなどの外的な刺激が加わると、特徴的な匂いを分泌する種が多い。
  • 本種オキナワイシカワガエルは、1901年琉球列島に生息する種として、Stejngerによって記載された。[1]ここでいう琉球列島とは、奄美大島と沖縄本島を指す。しかし2011年、倉本、佐藤、大海、倉林、住田によって、奄美大島のグループと沖縄本島のグループ間の交雑個体における生存不能や精子形成の異常が報告され、遺伝的な差異は大きくないもの両グループは別種とされることになった。[2]
体の特徴

[形態]

  • 大型のカエルであり、前肢後肢共に吸盤が備わる。水かきは後肢において発達している。
  • 背面は隆起で覆われ、隆起の先端は金色に近い茶色になっているのが普通。

[似た種との違い]

  • 近縁種のアマミイシカワガエルとは背面の模様や隆起が異なっている。アマミイシカワガエルは隆起に重なって存在する茶色斑紋が小さく、その周りを小さな隆起が囲むことが多いが、オキナワイシカワガエルにおいてはその斑紋が大きく、その周りに小さな隆起が囲むことは通常ない。
  • また腹部における黒色斑点は、アマミイシカワガエルでは喉から上肩にのみ広がっているが、オキナワイシカワガエルでは全体に広がる傾向がある。
  • アマミイシカワガエルの記事も参照
オキナワイシカワガエルアマミイシカワガエル
生態

[食性]

  • 主にヤスデやサワガニなどを食べるといわれている。[3]

[繁殖]

  • 繁殖期は11月~4月とされている。近縁種のアマミイシカワガエルのオスは、渓流沿いの岩上で広告音を発するケースが多いが、本種のオスは岩と岩の隙間などで鳴くことが多い。

[卵]

  • 卵塊は無色透明であり、岩穴内の地下水や、森林部を流れる河川の上流域近くの岩肌などに産み落とされる。
  • ちなみに精子はとても大きく、アカガエル科の中でも最大サイズを誇る。

[鳴き声]

  • 鳴き声は「コオッ…!」、「グルル!」など非常に特徴的で、繁殖期の生息地においては比較的よく耳にする。
その他

[持論暴論]

ある年の5月、ゴールデンウィーク真っ只中に、苔むした岩上にいる本種を見た。自分にとって初めて見たオキナワイシカワだった。自分はそのあまりの美しさに、下半身ずぶ濡れになっているのも忘れて観察したものだった 。満足げにカエルと、先輩方から心無い一言。

「アマミイシカワの方が綺麗じゃない?」

確かに、近縁種のアマミイシカワガエルは日本で一番美しいカエルだと言われている。周りのカエル好きも、口々にアマミイシカワを囃し立てる。しかし自分はここで宣言させてもらう。オキナワイシカワの方が美しい、と。

そして全国のオキナワイシカワガエル好きよ、立ち上がるのだ!

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. 松井正文. 2016. 日本のカエル 分類と生活史~全種の生態、卵、オタマジャクシ 誠文堂新光社, 東京.
  2. 松井正文. 2016 野外観察のための日本産両生類図鑑 緑書房, 東京.
  3. Stejneger, L. 1901. Diagnoses of eight new batrachians and reptiles from the Riu Kiu Archipelago, Japan. Proceedings of the Biological Society of Washington 14: 189–191.
  4. Mitsuru, K 2011. Inter-and inter-island divergence in Odorrana ishikawae (Anura, Ranidae) of the Ryukyu Archipelago of Japan, with description of a new species. Zootaxa 2767: 25-40.

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