オオハナサキガエル

Odorrana supranarina (Matsui, 1994)

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > オオハナサキガエル

  • 成体(石垣島)
概要

[大きさ] 

  • 全長 6.0 – 11.5 cm

[説明]

  • 八重山諸島に分布する大型の種。
  • 低地から山地までの水辺近くに生息する。
  • ジャンプ力に優れる。
  • 同所的に良く似たコガタハナサキガエルが見られることもある。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2017 – 準絶滅危惧
  • 第3版沖縄県レッドデータブック – 準絶滅危惧
分布

[分布]

  • 八重山諸島の石垣島、西表島

[生息環境]

  • 海岸沿いから山地まで生息する。
  • 渓流、用水、湿地、小河川など水場近くで見られることが多い。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ニオイガエル属 > オオハナサキガエル

[タイプ産地] 

  • 竹富町古見・前良川(西表島)

[説明]

  • ニオイガエル属Odorranaはアカガエル属Ranaから分割された分類群である[1]。
  • かつては奄美諸島から八重山諸島までハナサキガエル一種とされていたが、地域ごとに形態的・遺伝的に異なることから、奄美諸島に分布するアマミハナサキガエル、沖縄諸島に分布するハナサキガエル、八重山諸島に分布するオオハナサキガエル・コガタハナサキガエルの4種に分けられた。特にオオハナサキガエルは他種と比べて大型となる[3, 4]。
  • ハナサキガエル・アマミハナサキガエル・オオハナサキガエルは単系統をなす[3]。
  • タイプ標本は京都大学に保管されている[3]。
  • 種小名”supranarina“はハナサキガエルを超えるの意味で、沖縄諸島のハナサキガエルより大型化することに由来する[3]。
体の特徴

[形態]

  • 体は頑丈で頭部は細長く、鼻先が尖る。
  • 背面は茶褐色~緑色で変異に富む。体側面は茶褐色~灰褐色で背面と異なる色の場合もある。
  • 体表・腹面はほぼ平滑。
  • 手足は長く、指先には吸盤がある。後肢には水掻きが発達する。

[似た種との違い]

石垣島・西表島の山地渓流付近では見た目の良く似たコガタハナサキガエルが見られることがある。コガタハナサキガエルはオオハナサキガエルに比べて体は小型(3分の2程度)で、眼から鼻先までの距離が相対的に短い。

奄美諸島に分布するアマミハナサキガエルと沖縄諸島に分布するハナサキガエルは形態が良く似るものの、オオハナサキガエルは相対的に手足が短く、鳴き声も異なる。

生態

[食性]

  • ゴキブリ類やワラジムシ類など、湿った林床に生息する小型無脊椎動物を捕食する[5]。
  • イシガキトカゲの捕食例がある[2]。

[繁殖]

  • 繁殖期は7月下旬~4月までと非常に長いが、この間に短期間の集団産卵を繰り返すと推定されている[4, 6]。
  • 山地渓流の流れの緩やかな滝壺、たまり、岩盤上の水溜まり(ピットホール)、小河川、湿地、湧き水だまりなど多様な水環境で産卵する[4, 6]。

[卵]

  • 卵径2.6 – 2.9mm。蔵卵数は680 – 1600個[4]。

[幼生]

  • 全長 50mmほどまで成長する[4]。
  • 孵化時は半透明だが、成長するにつれて茶~黄褐色に変化する。
その他

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

  1. Fei, L., C.-y. Ye, & Y.-z. Huang. 1990. Key to Chinese Amphibians. Chongqing, China: Publishing House for Scientific and Technological Literature.
  2. Fukuyama, I. 2018. ODORRANA SUPRANARINA (Large Tip-nosed Frog). DIET. Herpetological Review 49(4): 729.
  3. Matsui, M. 1994. A taxonomic study of the Rana narina complex, with description of three new species (Amphibia: Ranidae). Zoological Journal of the Linnean Society, Volume 111 (4): 385–415.
  4. 松井正文・前田憲男. 2018. 日本産カエル大鑑. 株式会社文一総合出版, 東京. 272pp.
  5. 太田英利. 2014. オオハナサキガエル.”レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 3 爬虫類・両生類”, 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編), 環境省自然環境保護課, 東京都, 149.
  6. 富永篤. 2017.オオハナサキガエル. “改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版”, 沖縄県環境部自然保護課(編), 沖縄県環境自然保護課, 那覇, 221-222.