トウキョウダルマガエル

Pelophylax porosus porosus (Cope, 1868)

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > トノサマガエル属

成体(東京都)/ Adult
概要

[大きさ] 

  • 体長 4.5–9㎝。メスの方が大きい。

[説明]

  • 関東地方、仙台平野、信濃川の流域に分布する。北海道には移入。トノサマガエルとは形態的に似るが、四肢がより短い、背面の隆起が少なく比較的なめらかである、といった違いがある。平地や水田、池などにふつう。4~7月の繁殖期に水田などで卵を産み落とす。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧種(VU)
分布

[分布]

  • 関東地方、仙台平野、信濃川の流域。1990年代には北海道への移入が確認されている[1]。

[生息環境]

  • 平地の河川周辺や水田に生息する。ただしどんな水田でも生息できるわけではなく、圃場整備の有無など水田環境の違いによって、本種が多く棲む水田とそうでない水田がある。そこで、どのような環境要因が重要かを明らかにしようとする研究がなされている。畦が草で覆われていること、水路や畦が(コンクリートではなく)土でできていること、また周辺地域をふくめてまとまった水田面積が確保されていることなどが生息にプラスに働くという。[2–4]
分類

[タイプ産地] 

  • 神奈川県

[説明]

  • 長野県の松本盆地ではトウキョウダルマガエルと同所的に分布し、両種の間で交雑個体も見つかっているが、頻度は高くない[5]。
  • 西日本に分布する亜種ナゴヤダルマガエルとは遺伝的には大きく異なり、別種の関係にあるかもしれない[6]。
体の特徴

[形態]

  • トノサマガエルとナゴヤダルマガエルの中間的な特徴を示す。
  • 背面は薄い褐色や緑色の地に、黒い斑紋がある。背中線はある個体と無い個体がいる。
  • 吻はやや尖る。脚はトノサマガエルと比べれば短い。背面に短く弱い隆起がいくつもある。
生態

[繁殖]

  • 繁殖期は4月下旬から7月と長く、メスは複数回産卵するといわれる。[7, 8]
  • オスは両頬の鳴のうを大きく膨らませて、水面に浮きながらか、もしくは地面に座って鳴く。

[食性]

  • 昆虫やクモ、巻貝といった水陸両方の小型動物をよく食べる。カエルや小型のヘビも捕食するらしい[8–10]。

[成長]

  • 素早く成長し、寿命を終える種のようで、関東平野における研究によれば、雄は0–1歳、雌は1–2歳で繁殖に参加しはじめ、長くとも4歳までしか生きない [11, 12]。

[冬眠]

  • 水田わきの、水のない水路で土中に浅く潜って冬眠していた報告がある[13]。

[卵]

  • 水田や湿地などで、合計800~2000個の卵を複数回に分けて産む。[8]

[幼生]

  • 褐色で、背面に黒点が散る。成長すると背中線をもつ。
  • 全長50mm。約2か月で変態する。[14]
その他

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. 国立環境研究所 侵入生物データベース. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/. Accessed 22 Jul 2020
  2. Fujioka M, Lane SJ (1997) The impact of changing irrigation practices in rice fields on frog populations of the Kanto Plain, central Japan. Ecol Res 12:101–108
  3. 山本康仁, 千賀裕太郎 (2012) 都市化により分断化された水田におけるトウキョウダルマガエル Rana porosa porosaの分布と環境要因の関係. 保全生態学研究 17:175–184
  4. 大澤啓志 (2014) 孤立的な水田におけるトウキョウダルマガエルの畦畔利用から見る生息要因についての考察. 農村計画学会誌 33:293–298
  5. Komaki S, Kurabayashi A, Islam MM, et al (2012) Distributional Change and Epidemic Introgression in Overlapping Areas of Japanese Pond Frog Species Over 30 Years. Zoolog Sci 29:351–358
  6. Komaki S, Igawa T, Lin S-M, et al (2015) Robust molecular phylogeny and palaeodistribution modelling resolve a complex evolutionary history: glacial cycling drove recurrent mt DNA introgression among Pelophylax frogs in East Asia. J Biogeogr 42:2159–2171
  7. 芹沢孝子, 芹沢俊介 (1990) トノサマガエル-ダルマガエル複合群の繁殖様式 III.トウキョウダルマガエルの性成熟と産卵. 爬虫両棲類学雑誌 13:70–79
  8. 松井正文 (2018) 日本産カエル大鑑. 文一総合出版
  9. 小野亨., 城所隆., 藤崎祐一郎, 小山淳. (2001) 水田に生息するカエル類の餌生物の種類と量(講演要旨). 北日本病中研報 52:257
  10. 更科美帆, 吉田剛司 (2015) 北海道における4種の国内外来カエルの捕食による影響 : 胃重要度指数割合からの把握. 保全生態学研究 20:15–26
  11. Togane D, Fukuyama K, Kuramoto N (2009) Size and age at sexual maturity of female Rana porosa porosa in valley bottoms in Machida city, Tokyo, Japan. Curr Herpetol 28:71–77
  12. Togane D, Fukuyama K, Takai K, Kuramoto N (2018) Body Size and Age Structure in Two Populations of Tokyo Daruma Pond Frog, Pelophylax porosus porosus. Current Herpetology 37:58–68
  13. 伊藤寿茂 (2007) U字溝用水路内で越冬するトウキョウダルマガエルの観察例. 爬虫両棲類学会報 2007:127–128
  14. 松井正文, 関慎太郎 (2008) カエル・サンショウウオ・イモリのオタマジャクシハンドブック. 文一総合出版