トノサマガエル

Pelophylax nigromaculatus (Hallowell, 1861)

両生綱>無尾目>アカガエル科>>トノサマガエル属>トノサマガエル

  • 雄成体
概要

[大きさ] 

  • 雄38 – 81(平均69)cm、雌63 – 94(平均77)cm [9]

[説明]

  • 水田によくみられる日本では代表的なカエルだが、関東などには分布しない
  • その姿勢のいかめしさから殿様の名で呼ばれる[9]
  • 色彩や大きさが雌雄ではっきり異なる
  • グルルルルッグルルルルッと鳴く

[保全状況]

  • 環境省レッドリストの準絶滅危惧(NT)
分布

[分布]

  • 関東地方から仙台平野を除く本州、四国、九州。北海道、対馬の一部に人為移入。なお、朝鮮半島、中国、ロシア沿海州の一部にも分布する [9]

[生息環境]

  • 水田に多い。池や川などにも生息する。非繁殖期には水辺から離れた場所でも生活する [9,12]。
分類

[分類]

  • 両生綱>無尾目>アカガエル科>>トノサマガエル属>トノサマガエル

[タイプ産地] 

  • 日本 [9]

[説明]

  • 近年まではアカガエル属Ranaに含まれる考えが主流だった。
  • Dubois(1981)は、トノサマガエルに近縁なヨーロッパトノサマガエルRana esculentaにはPelophylaxという適用可能な名称があることを指摘した[7]*。
  • 費ら(1991)は、体色の赤いアカガエル類のみをアカガエル属に残し、他の類のほとんどに独立属を設定する体系を提案した。ここではトノサマガエルやその近縁種は独立したトノサマガエル属Pelophylaxとした[7]*。
  • Dubois(1992)は、費ら(1991)の考えをもとに、PelophylaxRanaの亜属とした[7]*。
  • その後Frostら(2006)が分子系統解析をもとに、改めてトノサマガエル類を独立属Pelophylaxとした。この考えが現在主流となっている[2,7,8]。
  • Pyronら(2011)などの分子系統解析の結果はこの分類群の単系統性を支持する。しかし、これを独立属とする根拠はあいまいで、よく吟味されないままになっている[8,10]。
  • 核DNAによる系統樹では、日本、朝鮮半島、中国を含む全個体群が単系統群となるが、ミトコンドリアDNA系統樹では朝鮮半島産以外の個体群が近縁種プランシーガエルP. Plancyiと単系統群をなしている。これは、トノサマガエルの移入による遺伝子浸透のためと考えられている[6,9]。
  • トウキョウダルマガエルとは分布が重ならないが、その接点ではしばしば自然交雑が起きる。また、同所的に分布するナゴヤダルマガエルとの自然雑種も見つかっている [5,9]。
  • シノニム[1] Rana nigromaculata、Rana marmorata、Hoplobatrachus reinhardtii、Hoplobatrachus davidi、Hylarana nigromaculata など

[別名・地方名]

  • シマガエル、シマビキ、アオガエル、アオビキ、ヒャッケントビなど[11]
体の特徴

[形態]

  • 背面の基色は緑、褐色、淡灰褐色または黄色味を帯びた白。背中線上に吻端から肛門まで達する色の淡い縦条がある [10]。
  • 体背面の皮膚はほぼ平滑だが、はっきりとした背側線隆条をもち、その間にやや長く不規則な隆条が並ぶ [9]。
  • 雄では黒または黒褐色の斑紋はあまり明瞭ではないが、雌ではこれらの斑紋が広がって互いにつながり合い、全体に黒っぽく見える [10]。
  • 腹面は一様に乳白色で、斑紋をそなえていない [10]。
  • 身体は比較的細く、吻も突出していて、頭長が頭幅より大きい。吻端から目の前端までの長さが眼径より大きく、吻端が鈍くとがる [9,10]。
  • 四肢は長く、大腿部と頸部を合わせた長さが目の前端から肛門までの長さと同等かそれより大きい [9,10]。
  • かきはよく発達するが、第4趾では最後の関節を超えない [10]。
  • トウキョウダルマガエルやナゴヤダルマガエルとよく似ているが、この2種と違いトノサマガエルでは黒斑がつながる。また、トノサマガエルの方が四肢が長い [12]。
生態

[食性]

  • 主にクモ類や様々な昆虫などの節足動物を餌とするが、それに加えて、同種の幼蛙や他種のカエル等も食べる [3,9]。
  • 季節等に応じて出会いやすいものを食べ、成長に伴いより大きな餌も食べるようになる[3]

[繁殖]

  • 繁殖期は4-6月で、水田や浅い止水で産卵する [9]。
  • 雌を待つ雄は、水面に浮きながら鳴き、1.6m2ほどの縄張りを持つ [9]
  • 鳴き声はグルルルル…あるいはグルルッグルルッといったように聞こえ、1声あたり0.3-0.5秒ほど続き、4-6ノートからなる。優位周波数は2.1kHzで周波数変調は見られない。倍音も不明瞭 [9,12]。
  • 繁殖期の水温は20℃前後 [9]。
  • 同種あるいはナゴヤダルマガエルの雄に対して雌が鳴き声を発することがある。これには、産卵済みの雌が雄の抱接を回避したり、交雑を回避したりする役割が示唆されている [4,9]。

[卵]

  • 卵は1800-3000個で、球を圧平したような形の卵塊として一度に水底に産み落とされる [9]。

[成長][9]

  • 幼生は成長すると全長69㎜ほどになり、体背面に不明瞭な黒点があり多くの場合背中線をもつ。歯式は若齢で1/1+1:2、成熟個体で1:1+1/1+1:2
  • 変態期は6月下旬から9月。変態時の体長は20-30㎜ほど。
  • 雄は変態の翌年秋に性成熟に達し、2歳から繁殖に参加する。
  • 雌は雄より1年遅れて繁殖に参加し、1繁殖期に1度のみ産卵する。
  • 雌は雄よりも明らかに大型になる。雄は雌より上腕部が頑強で、顕著な婚姻色が現れる。

執筆者:浜中京介


引用・参考文献

  1. Frost, D. and American Museum of Natural History. Amphibian Species of the World 6.0, an Online Reference. Pelophylax nigromaculatus. http://research.amnh.org/vz/herpetology/amphibia/Amphibia/Anura/Ranidae/Pelophylax/Pelophylax-nigromaculatus 参照 2019-07-26.
  2. rost, D. R., T. Grant, J. Faivovich, R. Bain, A. Haas, C. F. B. Haddad, R. O. de Sá, S. C. Donnellan, C. J. Raxworthy, M. Wilkinson, A. Channing, J. A. Campbell, B. L. Blotto, P. Moler, R. C. Drewes, R. A. Nussbaum, J. D. Lynch, D. Green, and W. C. Wheeler. 2006. The amphibian tree of life. Bulletin of the American Museum of Natural History. 297: 1–370.
  3. Hirai, T., and M. Matsui. 1999. Feeding habits of the pond frog, Rana nigromaculata, inhabiting rice fields in Kyoto, Japan. Copeia, 1999(4). 940-947.
  4. Itoh, M. M. 2017. Acoustic analysis of novel female calls in Japanese Pond Frogs, Pelophylax nigromaculatus and Pelophylax porosus brevipodus. Current Herpetology. 36(2): 135–141.
  5. Komaki, S., A. Kurabayashi, M. M. Islam, K. Tojo and M. Sumida. 2012. Distributional change and epidemic introgression in overlapping areas of Japanese pond frog species over 30 years. Zoological science, 29(6): 351-359.
  6. Komaki, S., T. Igawa, S. M. Lin, K. Tojo, M. S. Min, and M. Sumida. 2015. Robust molecular phylogeny and palaeodistribution modelling resolve a complex evolutionary history: glacial cycling drove recurrent mt DNA introgression among Pelophylax frogs in East Asia. Journal of Biogeography. 42(11): 2159-2171.
  7. 松井正文. 2006. 最近の日本産両生類の学名の変更について. 爬虫両棲類学会報. 2006(1): 120-131.
  8. 松井正文. 2013. 2007年以降に記載ないし,分類変更された日本産両生類について. 爬虫両棲類学会報. 2013(2): 141–155.
  9. 松井正文・前田憲男. 2018. 日本産カエル大鑑. 文一総合出版. 東京. 274p.
  10. 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 大阪. 214p.
  11. 太平洋資源開発研究所(編). 2005. 全国爬虫両生類地方名検索辞典. 生物情報社. 千葉. 56p.(北日本編)、58p.(南日本編)
  12. 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎. 2002. 決定版日本の両生爬虫類. 平凡社. 東京. 336p.

*分類に関する引用文献について:[7]を引用元としている*印を付した項目については本来以下の文献を引用すべきところだが、入手困難かつ原文がフランス語および中国語であるため、これらをまとめた松井氏のレビューを引用している。

・Dubois, A. 1981. Liste des genres et sous-genres nominaux de Ranoidea (amphibiens anoures) du monde, avec identification de leurs especes types; consequences nomenclaturales. Monit. Zool. Ital. N. S. Suppl. 15: 225-284.

・Dubois, A. 1992. Notes sur la classification des Ranidae (Amphibiens Anoures). Bull. Mens. Soc. Linn. Lyon 61: 305-352.

・費梁・叶昌媛・黄永昭 (編).1991 (1990).中国両棲動物検索.科学技術文献出版社重慶分社, 重慶.364p.