Protobothrops elegans (Gray, 1849)
爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > クサリヘビ科 > マムシ亜科 > ハブ属 > サキシマハブ
概要
[大きさ]
- 全長60〜120 cm。体型は沖縄諸島や奄美諸島に生息するハブ Protobothrops flavoviridisに似て細身だが、長大なハブと比べると小型。とぐろを巻くと大人の握りこぶしより少し大きいくらい。
[説明]
- 八重山諸島でよく見かけるほぼ唯一の陸生毒ヘビ。頭部は三角形で大きく、細い首と明瞭に分かれている。瞳孔は縦長。
- 背中には茶褐色あるいは灰褐色の地に暗褐色の斑紋が左右交互に並ぶ。琥珀色した淡色型も散見される。
- 地表性で夜行性。森林の小川沿いに多いが、畑や人家近くにも現れる。
- 主にカエル類やトカゲ類を捕食する。
- 7月に5〜13卵を生む。
[毒性]
- 出血毒を持つ。ハブに比べて毒性は低く、毒の注入量も低いため治療に血清が用いられることは少ない。しかし患部が腫れ上がり、重症に至る場合もあるので注意が必要。
分布
[分布]
- 自然分布は八重山諸島(石垣島、西表島、竹富島、嘉弥真島、小浜島、黒島、上地島、下地島)。
- 沖縄島、糸満市南部に移入・定着している。玉城村、名護、那覇、宮古島などで捕獲された記録もある。
分類
[分類]
- 爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > クサリヘビ科 > マムシ亜科 > ハブ属 > サキシマハブ
[タイプ産地]
- 当初West coast of America (採集者:Belcher)。後にStejneger(1907)が石垣島に訂正した。
体の特徴
[形態][1,2]
- 全長60〜120 cm。尾は全長の1/5程度を占める。
- 体鱗は23〜25列、腹板は179〜191枚、尾下板は69〜76対。肛板は1枚。上唇板は通常8枚、稀に7枚。体鱗には最も外側の1列を除いて明瞭なキールがあり、ざらざらしている。
- 背面は灰褐色の地に背中央9鱗列にまたがる暗褐色の斑紋が2列、互い違いに並ぶ。斑紋の数は胴に40、尾に23程度。胴の体側には背面の斑紋よりも濃い黒褐班が背面の斑紋の下に並ぶ。腹面は黄色で、格子状に灰色班が入る。
- 眼は大きく、瞳孔はわずかに縦方向に長い楕円形。虹彩はオレンジ色。
- クサリヘビ科のヘビの特徴として、上顎骨の前部に可動式の毒牙を持つ。毒牙は長く、口を閉じているときは後方に倒れている。口を大きく開くと、方骨、翼状骨が前に引き寄せられ、これに連動する外翼状骨が働いて上顎骨を動かし、毒牙が上顎に直角に立つ。 毒牙は毒腺につながった注射器のような管状の構造をしており、噛み付いた対象に毒液が一瞬で注入される。このような牙を持つヘビを管牙類と呼ぶこともある。
生態
[食性][3,4]
- リュウキュウカジカガエル
- サキシマヌマガエル
- オオハナサキガエル
- シロアゴガエル
- サキシマキノボリトカゲ
- イシガキトカゲ
- キシノウエトカゲ
- サキシマスベトカゲ
- ホオグロヤモリ
- オキナワキノボリトカゲ(沖縄本島の移入個体による)
- クロイワトカゲモドキ(沖縄本島の移入個体による)
- セッカ(スズメ目)
- ジャコウネズミ
- クマネズミ幼体
執筆者:藤島幹汰
引用・参考文献
- 牧茂一郎. 1931. 原色版日本蛇類圖説. 第一書房, 東京.
- 富田京一. 2011. 山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ. 山と渓谷社, 東京. pp.228-229.
- Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. The Snake 20:pp.98-113.
- 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.
- 堺淳, 森口一, 鳥羽通久. 2002. フィールドワーカーのための毒蛇咬症ガイド. 爬虫両棲類学会報 2002(2):75-92.