ニホンカナヘビ

Takydromus tachydromoides Schlegel, 1838

爬虫綱 > 有鱗目 > カナヘビ科 > カナヘビ属 > ニホンカナヘビ

概要

[大きさ] 

  • 全長 16 – 20 cm

[説明]

  • 北海道から九州にかけて最も普通に見られるトカゲの一種
  • 都市部から山林まで、様々な環境に見られる。昼行性
  • 体表はざらっとしており、ニホントカゲと比較して全長に占める尾の割合が大きい
  • 小型の節足動物を捕食する

[保全状況]

  • 絶滅危惧Ⅱ類(東京都)
  • 準絶滅危惧種(千葉県)
  • 絶滅の恐れがある地域個体群(天売島個体群、焼尻島個体群)
分布

[分布]

  • 北海道、本州、四国、九州および大隅半島とトカラ列島の中之島、諏訪之瀬島

[生息環境]

平地や低山地の草地、農耕地や川岸、都市部の小緑地など様々な環境に広く見られる[7][8]

分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > カナヘビ科 > カナヘビ属 > ニホンカナヘビ

[タイプ産地] 

  • 日本

[説明]

  • 大隅半島やトカラ列島の個体群は、それ以外の地域の個体群と遺伝的に分化していることが知られている。また、西日本の集団はいくつかの地域個体群に分かれる一方で、東日本の集団における遺伝的多様性は低いことが知られている。
体の特徴

[形態][4]

  • 背面は灰褐色から褐色で、腹面は白色ないしは黄褐色。体側に黒褐色の2本の帯と、その間に白色の帯を持つ。
  • 体はキールのある鱗で覆われる。背面は四角い鱗が並ぶ。咽頭板は4対。
  • 体は細く、尾は全体の2/3ほどを占める。また、南へ行くほど全長に占める尾の割合が増える傾向が見られる。尾は自切する。
  • 太ももの裏には鼠径孔が通常2対存在するが、1対または3対の個体もいる。
生態

[食性]

  • 小型の節足動物を捕食する。昆虫やクモを多く捕食し、そのほかにはムカデ、ヤスデ、ワラジムシ、カタツムリなどを捕食する[2][3][9]。
  • 栄養段階はあまり高くなく、餌に占める植食性昆虫の占める割合が高いと考えられている[9]。
  • 幼体の方が、成体と比較して、餌に占めるクモの割合が高いことが報告されている[2][3]。
  • 餌生物の生息状況などによって捕食する餌を変化させる日和見的捕食者(Opportunistic feeder)であり、季節ごとに餌生物の構成が変化する。春頃は甲虫が多いが、秋にかけてヨコバイやアリなどを多く捕食するようになること、また、春から秋にかけて、餌全体に対するクモ類の占める割合が低くなっていくことも報告されている[3]。

[繁殖]

  • 交尾は4月から8月にかけて、主に日中に行われる。オスはメスに噛み付いて押さえつけたのちに、体を曲げ、尾を絡ませるようにして交尾する。1回の交尾は通常15分ほどかかる。また、交尾の結果、メスの体にオスの噛み跡が残ることがある。繁殖期を通じて複数回交尾を行うメスもいる[1]。
  • 産卵は5月から8月の半ばごろまで行われるが、初めて産卵期を迎えるメスの産卵が始まるのは少し遅く、6月ごろからである。いずれも、冬眠明けにはすでに卵黄を持った卵胞を持っている[5][7]。
  • 一度の産卵で1個から7個程度産卵する。年齢の高いメスほど多くの卵を産卵する傾向にある[5][7]。
  • 卵は産卵後30–40日ほどで孵化し、孵化は7月から10月にかけておこる。孵卵温度は性比に影響しない[5][7] 。
その他


引用・参考文献

  1. Inukai, T. 1930. NOTES ON THE BREEDING HABITS OF TAKYDROMUS TACHYDROMOIDES SCHLEGEL. Journal of Faculty of Science, Hokkaido Imperial University. 1(1): 33-43.
  2. Jackson, D. R. & Telford S. R. 1975. Food Habits and Predatory Role of the Japanese Lacertid Takydromus tachydromoides. Copeia 1975(2): 343-351.
  3. Minobe, H. 1927. Notes on the food habits of Takydromus tachydromoides. Proceedings of the Imperial Academy. 3(8): 547-549.
  4. 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 132-133.
  5. Sen, T. 1981. Maturity and Other Reproductive Traits of the Kanahebi Lizard Takydromus tachydromoides (Sauria, Lacertidae) in Mito. Japanese Journal of Herpetology. 9(2): 46-53.
  6. Takeishi, M. & Ono, Y. 1986. Spatial Relationship among Individuals Japanese Lacertid Takydromus tachydromoides (Sauria, Lacertidae). Ecological Research. 1: 37-46.
  7. Telford, S. R. 1969. The Ovarian Cycle, Reproductive Potential, and Structure in a Population of the Japanese Lacertid Takydromus tachydromoides. Copeia 1969(3): 548-567.
  8. 土金慧子・大澤啓志.  2008.トカゲ類から見た都市緑地のハビタット質について. 環境情報科学. 36(4): 120-121.
  9. 土金慧子. 2010. ニホンカナヘビの生息適地と草地生態系における捕食者としての位置. 環境情報科学. 39(1): 118-119.