ヤクシマタゴガエル

Rana yakushimensis Nakatani et Okada, 1966

両生綱>無尾目>アカガエル科>アカガエル属

  • 成体(屋久島)
概要

[大きさ] 

  • 全長 雄37~48 mm, 雌42~54 mm[7]

[説明]

  • 屋久島固有種
  • タゴガエル(Rana tagoi)の屋久島亜種であったが、2023年に別種とされた
  • タゴガエルとの形態差は大きくないが、遺伝的には大きく異なる[7]
  • 体色は褐色あるいは淡褐色[6]で, 体側に鈍い顆粒をもつ[7]

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック選定 : 準絶滅危惧種(NT)[2]
分布

[分布]

  • 鹿児島県屋久島. 屋久島固有種.

[生息環境]

  • 標高1,800 mまでの山地の森林内や渓流, 高層湿原など[7]
分類

[分類]

  • 両生綱>無尾目>アカガエル科>アカガエル属

[タイプ産地] 

  • 鹿児島県屋久島安房川[7][9] 

[説明]

  • タゴガエル(Rana tagoi)及びオキタゴガエル(R. okiensis)との遺伝的関係については諸説あり, タゴガエルとヤクシマタゴガエルがより近縁であるとされる[11]が, タゴガエルとオキタゴガエルの方がタゴガエルとヤクシマタゴガエルよりも遺伝的に近いとする研究結果もある[10]
  • 近年では、本土のタゴガエルも地域によって遺伝的に大きく異なることが明らかになっており、近畿、中国地方の一部の個体は比較的オキタゴガエルと近縁であるとされる[8]
  • 近年まで、タゴガエルの屋久島亜種R. t. yakushimensisとされていたが、Eto and Matsui (2023)は本種を含めたタゴガエル類の分類学的再検討を行い、形態、遺伝子、鳴き声の違いから、本種を種に格上げし、R. yakushimensisとした[7]。
体の特徴

[形態]

  • 体型は比較的幅広い[6][7]
  • 体色は褐色あるいは淡褐色で, 個体によっては背面に黒色や暗褐色の斑紋を有する[6]
  • 体背面はほぼ平滑だが, 体側に鈍い顆粒をもつ[7]
  • 頭部は上から観ると直線状に狭まり, 吻は横から観ると円形で短い[7]
  • 鼓膜はほぼ円形で, 直径は眼径の半分以上[7]

[他の亜種との形態比較]

  • 頭部は幅広く[9], 吻端はやや尖る[7]
  • 吻長は左右の上瞼の間の距離より小さい[9]
  • 背側線は細いがはっきりしており, 外側に折れ曲がっている[9]
  • 顎や四肢の腹面の斑紋が多い[7]
  • みずかきがより発達している[7]

[ニホンアカガエルとの見分け方]

屋久島にはヤクシマタゴガエルと同じアカガエル属のニホンアカガエル(Rana japonica)も生息している. 
  ただし, 前者が山地性であるのに対し, 後者は平地ないし丘陵地性の種である[7]ため, 生息地の標高は異なると考えられる. 

また, 形態的には以下のような点で見分けることができる[7]

ヤクシマタゴガエルニホンアカガエル
比較的幅広い比較的細い
頭部短く幅広い細長い
比較的短い比較的長い
腹面[3]斑点がある斑点がない
水かきあまり発達せず切れ込みがやや深いよく発達する
背側線外側へ曲がる曲がらない
生態

[食性]

  • 地表徘徊性の小型クモ類や昆虫類を捕食[6]

[繁殖]

  • 繁殖期は10~4月[4][6][7]で, 繁殖期の水温は8~17 ℃[6][7]
  • 産卵場所は, 伏流水中の岩石の隙間, 湿地のミズゴケの下, 穴の中など[6][7]

[卵]

  • 卵数は60~120個ほどで, 卵形は3.0 mm. 球形の卵塊として, 一時に産みつけられる

[幼生]

  • 最大で36 mmにまで成長するが, これはタゴガエルの仲間としては非常に大型である[1][4][7]
  • 尾はかなり長く, 口器は大きくない[4][7]
  • 近縁他種と同様に、食物を食べなくても, 卵黄の栄養だけで子ガエルまで変態できるとされる[1]
その他

[鳴き声]

「クォッ」 「クォー」と聞こえる[4][7] 繁殖音(Mating call)は一声が1~4ノートからなり, その持続時間は短い. 
また, ノート間隔は一定である. これに対し, 抱接音(Coupling call) ※は一声のノート数が多く, その持続時間が長いことに加え, ノート間隔が不規則であるため, 繁殖音と容易に識別できる[5]

※交尾の際, メスの背中の上に乗ったオスがメスの腹部を刺激して, 産卵を促しながら発する声

執筆者:鈴木洋平

20231017 Eto and Matsui 2023による種への格上げに伴い、情報をアップデート


引用・参考文献

  1. 引用・参考文献奥山風太郎, 松橋利光. 2002. 日本のカエル+サンショウウオ類. 山と渓谷社. p. 71.
  2. 環境省. 環境省レッドリスト2019. https://www.env.go.jp/press/files/jp/110615.pdf 参照2019-05-07.
  3. 関慎太郎(著), 松井正文(監修). 2016. 野外観察のための日本産両生類図鑑. 緑書房. pp. 151, 157.
  4. 大東義徹. 1980. ヤクシマタゴガエルの新しい集団の産卵と形態的特徴について. 神戸大学教育学部研究集録(63), pp. 13-24, 1980-03.
  5. 大東義徹. 1980. ヤクシマタゴガエルの新しい集団の鳴き声について. 神戸大学教育学部研究集録(64), pp. 119-125, 1980-07.
  6. 高田榮一, 大谷勉. 2011. 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. p. 185.
  7. 前田憲男, 松井正文. 1989. 日本カエル図鑑. 文一総合出版. p 66.
  8. Eto, K., M. Matsui, T. Sugahara, and T. Tanaka-Ueno. 2012. Highly Complex Mitochondrial DNA Genealogy in an Endemic Japanese Subterranean Breeding Brown Frog Rana tagoi (Amphibia, Anura, Ranidae). Zoological Science, 29(10): 662-671.
  9. Nakatani, T., and Okada, Y. 1966. Rana tagoi yakushimensis n. Subsp. from Yakushima, Kagoshima prefecture, Japan. Acta Herpetologica Japonica, 1(4): 64-66.
  10. Nishioka, M., S. Ohta, and M. Sumida. 1987. Interspecific Differentiation of Rana tagoi Elucidated by Electrophoretic Analyses of Enzyme and Blood Proteins. Scientific report of the Laboratory for Amphibian Biology , 9: 97-133.
  11. Tanaka, T., M. Matsui, and O. Takenaka. 1996. Phylogenetic Relationships of Japanese Brown Frogs (Rana: Ranidae) Assessed by Mitochondrial Cytochrome b Gene Sequences. Biochemical Systematics and Ecology, 24(4): 299-307.
  12. Eto, K., & Matsui, M. (2023). A New Brown Frog from the Goto Islands, Japan with Taxonomic Revision on the Subspecific Relationships of Rana tagoi (Amphibia: Anura: Ranidae). Current Herpetology, 42(2), 191-209.

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