リュウキュウヤマガメ

Geoemyda japonica Fan, 1931

爬虫綱 > カメ目 > イシガメ科 > ヤマガメ属 > リュウキュウヤマガメ

  • 成体(沖縄島)
概要

[別名] 

ヤンバルガーミー(沖縄島南部)、 ヤマガーミー、 ガーミー (沖縄島全域) [11]

[大きさ] 

甲長 約15cm

[説明]

  • 沖縄島北部と渡嘉敷島、久米島にのみ分布する日本固有種
  • 背甲には3本のキールがある
  • 雑食性で、河川沿いなど湿った場所に生息する
  • 国および県指定天然記念物で、採集が規制されている

[保全状況]

  • 沖縄県指定天然記念物(1972年)
  • 国指定天然記念物(1975年)
  • 国内希少野生動植物種(2020年)
  • 沖縄県レッドデータブック第3版(2017年):絶滅危惧ⅠB類
  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧Ⅱ類
  • IUCNレッドリスト2000:EN
分布

[分布]

  • 沖縄島北部(恩納村–うるま市以北)、渡嘉敷島、久米島[12, 13]
  • 南風原町など沖縄島南部でも記録はあるが、人為的な移入と考えられる[5, 12]
  • 化石記録より、後期完新世までは沖縄島全体に分布していたと考えられている[10]

[生息環境]

森林域に生息する。湿った場所を好み、渓流付近で見られることが多い[12]

分類

[分類]

爬虫綱 > カメ目 > イシガメ科 > ヤマガメ属 >リュウキュウヤマガメ

[タイプ産地] 

沖縄島Nawa(那覇?)[1, 13]

[説明]

  • 1931年にスペングラーヤマガメの亜種Geoemyda spengleri japonicaとして記載された[1]
  • 形態の差異が大きいことから、1992年に種へ格上げされた[13]
  • スペングラーヤマガメとリュウキュウヤマガメ間では遺伝的に差があるものの、リュウキュウヤマガメ種内での遺伝的変異は非常に小さい[2, 14]
体の特徴

[形態]

  • 背甲はやや盛り上がったドーム型で、中央とその両側面にキールが発達する。後縁は鋸歯状の切れ込みが入る
  • 頭部は褐色~黄褐色で、黄色や赤色の模様が不規則に入る。甲は黒褐色~黄褐色

[似た種との違い]

沖縄島では外来種のヤエヤマイシガメ、ミシシッピアカミミガメも生息するが、両種はリュウキュウヤマガメのような背面の明瞭な3本のキールはない。また、ヤエヤマイシガメ・ミシシッピアカミミガメが平地の河川や湖沼で生息するのに対し、リュウキュウヤマガメは森林で見られることが多い

生態

[食性]

植物の芽や実、ミミズ類、昆虫類、陸産貝類など。糞分析では陸産貝類が最も多い[12]

[繁殖][7, 8, 11, 12]

  • 交尾はおもに8~12月
  • 産卵期は4~9月上旬
  • 一腹卵数は4~6個で1シーズンに2–3回産卵し、1回の産卵数は普通1–2個

[卵・幼体][7, 8, 12]

  • 卵は細長い回転楕円形で、長径約40~50mm、短径約20~25mm
  • 孵化直後の幼体の甲長は約35mm
その他

[その他]

  • 密猟、密輸が横行しているとされ、対策が急がれる[4, 6]
  • 個体数が減少しており、沖縄島においては近年の記録が名護市北部~大宜味村に限られ、分布範囲も縮小していると考えられている。主な原因は開発による生息環境の消滅や車による轢死、マングースやイヌ、ネコによる食害が原因とされる[3, 12]
  • 沖縄島では外来種であるセマルハコガメとの交雑個体が見つかっている[9]

執筆者:高田賢人


引用・参考文献

  1. Fan T. 1931. Preliminary report of reptiles from Yashan, Kwangsi, China. Bull. Dept. Biol. Coll. Sci. Sun Yatsen Univ., Canton, 11(4): 1–154.
  2. 本多正尚. 2006. 琉球列島の絶滅危惧爬虫類に関する遺伝的多様性の解明とその保全. KAKEN実績報告書,
  3. いきものログ<https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/zukan?_action=rn031>, 参照: 2021年8月23日.
  4. 伊澤雅子, 傳田哲郎, 玉城 歩, 小林 峻. 2019. 琉球列島における希少カメ類の密猟防止対策としての普及啓発活動. 自然保護助成基金助成成果報告書29: 394–398.
  5. 金城実倫. 2020. 洗濯物を干していたら…天然記念物がいた リュウキュウヤマガメ、生息地外の南部で発見. 琉球新報<https://ryukyushimpo.jp/photo/entry-1170144.html>, 参照: 2021年8月23日.
  6. 益満雄一郎. 2019. 手荷物にカメ60匹「密輸中継地」で日本人に実刑判決. 朝日新聞デジタル<https://www.asahi.com/articles/ASM573SMYM57UHBI01G.html>, 参照: 2021年8月23日.
  7. 太田英利. 2014. リュウキュウヤマガメ. レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 3 爬虫類・両生類. 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編), 環境省自然環境保護課, 東京:32–33.
  8. 大谷 勉. 1989. 飼育下におけるリュウキュウヤマガメの仔ガメの成長. Akamata6: 7–8.
  9. 大谷 勉. 1995. 沖縄島で保護されたリュウキュウヤマガメとセマルハコガメの異属間雑種と思われる個体について. AKAMATA11: 25–26.
  10. 髙橋亮雄. 2017. 琉球列島の第四紀陸生および淡水生カメ類相とその動物地理学的意義. Journal of Fossil Research 50(1): 10–21
  11. 高良鉄夫. 1969. 琉球の自然と風物. 琉球文教図書株式会社, 那覇, 206 p.
  12. 当山昌直. 2017.リュウキュウヤマガメ. “改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版”, 沖縄県環境部自然保護課(編), 沖縄県環境自然保護課, 那覇, 183–184.
  13. Yasukawa Y., Ota H., and Hikida T. 1992. Taxonomic Re-evaluation of the Two Subspecies of Geoemyda spengleri spengleri (Gmelin, 1789) (Reptilia: Emydidae). Japanese Journal of Herpetology 14 (3): 143–159.
  14. Zhao B., Wang H., He J., Mrope P. and Mu Y. 2020. Complete mitochondrial genome of Geoemyda spengleri. Mitochondrial DNA B Resour 5(3): 3146–3148.

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