アマミアオガエル

Zhangixalus amamiensis (Inger, 1947)

両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属 > アマミアオガエル

概要

[大きさ] 

5-8 cm [7]

[説明]

  • 奄美諸島において見られるアオガエル
  • 近年、独立種として扱われるようになる
  • 平地から山地まで幅広い環境に生息
分布

[分布]

奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島に自然分布。伊豆諸島の青ヶ島には移入されている[3]。骨格が発掘されるために与論島にもかつて分布していたことが明らかになっているが、20世紀中頃に絶滅したと推測されている[9]。

[生息環境]

低地から高地、海岸付近まで幅広い環境で見られるが、平地に多いとされる[4]。

分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属 > アマミアオガエル

[タイプ産地] 

  • 奄美大島の名瀬

[説明]

  • 学名 は「奄美の」という意味で、分布に由来している。
  • 本種は長らくRhacophorus viridis amamiensis とされ、オキナワアオガエルとの亜種の関係にあるとされてきた。一方、遺伝的な分化の程度は著しく分布域も重ならないために、松井・前田 (2018) は両者を別種として扱うべきだと指摘し[4]、現在は日本爬虫両棲類学会もこれに従い両者を別種としている[10]。
  • またJiangら(2019)の研究によって、これまで東南アジアに生息するアオガエルを含んでいたRhacophorus属の分類学的再検討がなされ、日本に分布する種はZhangixalus という新しい属に含まれることとなった[2]。
体の特徴

[形態]

  • 背面の体色は暗褐色から緑色まで幅広いが、腹面は白色。
  • 背表は顆粒が著しく、鮫肌状になる。
  • 虹彩は黄色のことが多いが、緑がかることもある。
  • 後肢の側面に黒色斑紋が見られ、これが前肢の腋にかけて体側面に広がる個体も多い。    [4,6,7]

[似た種との違い]

野外において、同所的に分布し体色が似るハロウェルアマガエルとは判別に困ることもあるかもしれない。両者に判別する際は頭部に注目してみよう。ハロウェルアマガエルは吻端が鼻孔から垂直に落ちる (裁断的とも) がアマミアオガエルは吻端が尖っている。同じ方法はそのままアマガエルとアオガエルの判別に適用することができるので、沖縄本島でオキナワアオガエルとハロウェルアマガエルを識別したい場合や本州でシュレーゲルアオガエルとニホンアマガエルを識別したい場合にも役にたつ。

アマミアオガエルハロウェルアマガエル

また、同所的に分布することはないが近縁種であるオキナワアオガエルやヤエヤマアオガエルとの識別点についても言及しておく。

アマミアオガエルを初めて記載した (その時はシュレーゲルアオガエルの亜種と考えていた) Inger は、後肢腿部の黒色斑紋に着目してそれらの (亜) 種の違いを説明しようとした。アマミアオガエルはオキナワやヤエヤマと比べて、アマミの後肢内部の黒色斑紋が大きく、さらに広範囲にわたるとした。また彼は背表にも着目しており、アマミアオガエルがオキナワやヤエヤマに比べて顆粒が著しく全体的にざらついた皮膚を持つ、としている[1]。また、オキナワやヤエヤマと比較して体サイズが大きいことも特徴の一つである。

生態

[食性]

  • 成体はクモやハエなどを捕食する[7]。

[捕食]

ヒメハブやガラスヒバァによる捕食例が知られている[8,11]。

[繁殖]

繁殖期は12-5月で、樹の樹上や地表に泡巣をつくる[6]。場合によっては地中に産卵することもある。

[鳴き声]

クックックックックックッ…ピロロロリロ…

[卵]

泡巣状の卵塊を産む。

[幼生]

  • 体表には黒色素が点在し、目立った斑紋はない。
  • 尾はやや長く、口器は小さい。
  • 主に止水域で成長する。         [5]
その他

執筆者:野田叡寛


引用・参考文献

  1. Inger, R. F. (1947). Preliminary survey of the amphibians of the Riukiu Islands. Fieldiana: Zoology, 32, 297-352.
  2. Jiang, D., Jiang, K., Ren, J., Wu, J., & Li, J. (2019). Resurrection of the genus Leptomantis, with description of a new genus to the family Rhacophoridae (Amphibia: Anura). Asian Herpetological Research, 10(1), 1-16.
  3. 国立環境研究所(2021). 侵入生物データベース-アマミアオガエル-. <http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/40120.html>, 参照 2021-03-20
  4. 松井正文, & 前田憲男. (2018). 日本産カエル大鑑. 文一総合出版.
  5. 松井正文, & 関慎太郎. (2008). カエル・サンショウウオ・イモリのオタマジャクシハンドブック.文一総合出版.
  6. 松井正文, & 関慎太郎. (2016). 日本のカエル: 分類と生活史-全種の生態, 卵, オタマジャクシ. 誠文堂新光社.
  7. 松井正文, & 関慎太郎. (2016). 野外観察のための日本産両生類図鑑.緑書房.
  8. 三島章義. (1966). 奄美群島産ヒメハブの食性に関する研究. 爬蟲兩棲類學雑誌, 1(4), 67-74.
  9. Nakamura, Y., Takahashi, A., & Ota, H. (2009). Evidence for the recent disappearance of the okinawan tree frog Rhacophorus viridis on yoronjima Island of the Ryukyu Archipelago, Japan. Current herpetology, 28(1), 29-33.
  10. 日本爬虫両棲類学会.(2021). 日本産爬虫両生類標準和名リスト. <http://herpetology.jp/wamei/index_j.php>, 参照 2020-03-20
  11. 島田知彦. (2003). ガラスヒバァのナミエガエル捕食例. 爬虫両棲類学会報2003(2), 76-77.