サキシマスジオ

Elaphe taeniura schmackeri (Boettger, 1895)

爬虫綱>有鱗目>ヘビ亜目>ナミヘビ科>ナメラ属>スジオナメラ>サキシマスジオ

概要

[大きさ] 

  • 全長 130–250 cm [4]

[説明]

  • 国内のヘビで最も大きな種の一つ
  • 山地だけでなく人家の近くでもよく見られる
  • 褐色で、背面に黒い模様があり、尾には黒い条線がある
  • 尾に黒いすじがあることが、「スジオ」という名前の由来
  • 主にネズミや鳥などを食べる

[保全状況]

  • 絶滅危惧Ⅱ類(環境省RDB)
分布

[分布] [4]

  • 宮古諸島(宮古島、大神島、池間島、伊良部島、下地島、来間島、多良間島)
  • 八重山諸島(石垣島、小浜島、西表島)

[生息環境][4]

  • 主に常緑広葉樹の自然林や、二次林など。灌木林や石灰岩植生、耕作地や民家の周りで見つかることもある。
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>ヘビ亜目>ナミヘビ科>ナメラ属>スジオナメラ>サキシマスジオ

[タイプ産地] 

  • 宮古島[1]

[説明]

  • 本種は東アジアから南アジア、東南アジアにかけて広く分布する種スジオナメラ Elaphe taeniura の一亜種であり、サキシマスジオ Elaphe taeniura schmackeri はその分布域の東限に位置する。
  • BoettgerによってColuber schmackeriとして記載された(中国在住のB. Schmacker氏に因む)[1]のち、StejnegerによってElaphe schmackeriとして属の移動が行われた[3]。その後、種から亜種への格下げが行われ、Elaphe taeniura schmackeriとして扱われるようになっている。
  • 分子系統学的解析により本種を含むグループをスジオナメラ属 Orthriophisに分ける考え方もあり[2]、海外の図鑑ではスジオナメラ種群をOrthriophis taeniuraと表記する例も散見される。その後の研究でOrthriophisはナメラ属 Elaphe に内含されることが明らかにされ、OrthriophisElapheのシノニムとされた[9]。
体の特徴

[形態][4,5,7,8,10]

  • 比較的細長い体型をしている。
  • 頭部は頸部より幅広く、前後方向に長い面長な顔つきをしている。吻端は尖らない。
  • 目の後ろに不明瞭な黒条がある。
  • 体鱗列数は胴中央で25–27枚で、弱いキールがある。頸部では27–29枚、肛門前では19–21枚となる。
  • 背面は褐色で、やや緑味を帯びることもある。
  • 背面にはH型や、分断された梯子状、断片的な模様と形容される黒い模様が並ぶ。
  • この模様は体の前半では不明瞭で、後半にかけて明瞭になっていき、最終的には尾の縦条に移行する。
  • 尾部は黒い縦縞状になる。
  • 基亜種と比較して、目の直径に対する吻端の長さが長いという違いがある。

[似た種との違い]

  • タイワンスジオElaphe taeniura friesiによく似るが、斑紋や舌の色が異なる[8]。タイワンスジオの舌が黒く、両脇は青いのに対し、サキシマスジオの舌は赤い[8]。体色はタイワンスジオが中国大陸のスジオナメラと酷似しており、黄色みが強いが、サキシマスジオは相対的に地味な緑やオリーブ色の個体が多い。
  • 尾に黒い条線があることから、同所的に生息する他の種(サキシマアオヘビ、ヤエヤマヒバァなど)と区別が可能である。
サキシマスジオタイワンスジオ
サキシマアオヘビヤエヤマヒバァ 
生態

[食性]

【詳細】[6]

鳥類や小型哺乳類。幼体ではサキシマキノボリトカゲを捕食していた例も知られる[4]

  • セッカ
  • メジロ
  • 小型鳥類(種不明)
  • 鳥類(種不明)
  • ヨナグニハツカネズミ
  • ドブネズミ
  • クマネズミ
  • ネズミ類
  • ネズミ科の一種
  • サキシマキノボリトカゲ

[繁殖][4]

  • これまでの知見から、6月下旬〜7月中旬に6–11個の卵を産むと考えられている。
  • 卵は2ヶ月程度で孵化すると考えられる。
その他

[コメント]

褐色で一見地味に見えますが、実物には甘美な光沢があり、英名Beauty Snakeの名に恥じない美しいヘビだと思えることでしょう。家のネズミを退治してくれる存在として重宝がられることも多いようです。昔からあった方言ではないと思いますが、現地ではアオダイショウと呼ばれることもあるようです。八重山ではなかなか狙って見ることができないので見つけると嬉しい種の一つです。

執筆者:福山亮部

2021年2月25日公開
2022年11月24日更新(背面の模様の情報を一部追記)


引用・参考文献

  1. Boettger, O. 1895. Neue Frösche und Schlangen von den Liukiu-Inseln. Zool. Anz. 18: 266-270
  2. Utiger, Urs, Notker Helfenberger, Beat Schätti, Catherine Schmidt, Markus Ruf and Vincent Ziswiler 2002. Molecular systematics and phylogeny of Old World and New World ratsnakes, Elaphe Auct., and related genera (Reptilia, Squamata, Colubridae). Russ. J. Herpetol. 9 (2): 105-124.
  3. Stejneger, LEONHARD H. 1907. Herpetology of Japan and adjacent territory. Bull. US Natl. Mus. 58: xx, 1-577
  4. 太田英利. 2014. 環境省(編)レッドデータブック2014 —日本の絶滅のおそれのある野生生物— 3爬虫類・両生類. (株)ぎょうせい, 東京.
  5. SCHULZ, K.-D 2010. Synopsis of the Variation in the Orthriophis taeniurus Subspecies Complex, with Notes to the Status of Coluber taeniurus pallidus Rendahl, 1937 and the Description of a new Subspecies (Reptilia: Squamata: Serpentes: Colubridae) [in German]. Sauria 32 (2): 3-26
  6. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. Snake 20(2): 98-113.
  7. 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. 保育社. 大阪. 214p.
  8. 富田京一・松橋利光. 2007. 山溪ハンディ図鑑10. 日本のカメ・トカゲ・ヘビ,  p173.
  9. X, Chen., Alan R, Lemmon., Emily M, Lemmon., R Alexander Pyron., Frank T, Burbrink. 2017. Using phylogenomics to understand the link between biogeographic origins and regional diversification in ratsnakes. Molecular Phylogenetics and Evolution. 111. 206–218
  10. 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.

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