アオダイショウ

Elaphe climocophora (Boie, 1826)

爬虫綱 > 有鱗目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > ナメラ属 > アオダイショウ

概要

[大きさ] 

  • 全長100〜200 cm。本州最大のヘビで、南西諸島のサキシマスジオ、シュウダ、ハブに次ぐ大きさとなる。

[説明]

  • 無毒のヘビで、人間に害はない。
  • 背面の色は地域や個体によって大きく変わり、灰褐色から暗褐色、暗緑色の個体もいる。北海道の個体は青みがかったもの多い。
  • 昼行性で半樹上性。低地から山地にかけての森林や里山、草地、畑など幅広い環境で見られる。餌となるネズミが豊富な人家周辺にもよく現れ、昔から人間との関わりが深い。
  • 山口県岩国市のアルビノ個体群は国指定天然記念物。
  • 幼蛇はカエルやトカゲを多く捕食する傾向があり、成蛇はネズミや鳥類を好んで捕食する。鳥類の卵もしばしば食べる。
  • 5〜6月に交尾を行い、7〜8月に7 cm弱の細長い卵を4〜17個産む。

[保全状況]

  • IUCNレッドリスト:軽度懸念(LC)
  • 環境省レッドリスト:記載なし
分布

[分布]

  • 北海道・本州・四国・九州・国後島・奥尻島・佐渡島・伊豆諸島の一部・隠岐・対馬・壱岐・五島列島・甑列島・大隅諸島などに分布
  • 伊豆諸島(八丈島)に移入。

[生息環境]

標高0〜2000 mまでの平地や丘陵地に生息し、水田や畑、民家周辺でよく目撃される[7]。木登りが得意で、側稜と呼ばれる腹板の両端にある鱗をひっかけるようにして樹木や垂直な壁を登ることができる。

分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > ナメラ属 > アオダイショウ

[タイプ産地]

  • Japan (採集者:Blomhoff)[1]

[説明]

  • 系統的に最も近縁な種は北東アジアに生息するカラダイショウ Elaphe schrenckii と、中国と内モンゴルに生息する Elaphe anomala とされる[9]。
体の特徴

[形態]

全長100〜200 cm。尾は全長の20–24%を占め、雄の方がやや尾が長い[1]。成体は背面の地色は褐色で、薄いオリーブ色の縦条が4本入る個体が多いが、まれにまったく縦条のない個体もいる。幼体はクリーム色がかった地色にはしご型の大きな褐色斑が並び、よくニホンマムシやシロマダラと間違えられる。吻端がやや角ばった顔つきをしており、眼はオリーブ色がかった褐色をしている[2]。体鱗列数は頸部で25、胴部で23。体鱗は最も外側の2、3列は滑らかだが、それ以外は弱いキールがある。腹板数は226–239で、尾下板数は99–107。

[似た種との違い]

アオダイショウの幼蛇は、ニホンマムシ、シロマダラや、シマヘビの幼蛇に似る。アオダイショウの成蛇はジムグリやシマヘビに似る場合がある。

  • マムシ:アオダイショウの幼蛇は模様がニホンマムシに似るが、アオダイショウの頭部は上から見ると角張って細長いのに対し、マムシは三角形をしている。アオダイショウは胴体と尾が細長いが、マムシはやや寸詰まりの体型で、尾は短く胴体から急激に細くなる。アオダイショウの瞳孔は丸いが、マムシの瞳孔は縦長である。マムシは目の前方に孔(ピット器官)があるが、アオダイショウにはそれがない。とはいえ、同定に自信がないなら捕まえるべきではない。
  • シロマダラ:アオダイショウは目の後ろに明瞭な黒い線が横に入る。アオダイショウは目が大きく瞳孔が丸いが、シロマダラの目は小さく、瞳孔は縦長である。アオダイショウの胴体の模様は複雑なはしご状をしているが、シロマダラは明瞭な黒い横帯が入る。
  • ジムグリ:アオダイショウに比べ、ジムグリは背面の色が赤みがかり、頭部と胴体の境目があまり明瞭ではない。アオダイショウは腹部の模様がないが、ジムグリは黒い市松模様があることが多い。
  • シマヘビ:幼蛇同士や、たまにいる縦縞模様のないシマヘビの成蛇は見分けにくい場合がある。シマヘビは目の上の鱗が出っ張り、目つきが鋭い。また、シマヘビの虹彩の色は赤い。幼蛇に関しては、シマヘビは胴体の色合いが赤みがかっていることが多いが、アオダイショウはオリーブ色から灰褐色である。
アオダイショウ(幼蛇)ニホンマムシ
シロマダラヒバカリ
シマヘビ(幼蛇)

生態

[食性]

様々な脊椎動物を捕食するジェネラリスト。幼体のうちはカエルトカゲ、鳥類や哺乳類などを幅広く捕食し、成体は主に鳥類や哺乳類といった内温性の動物を捕食する傾向があることが指摘されている[6]。獲物は丸呑みにし、大きい獲物の場合は特に絞め殺してから捕食する[10] 。鳥の卵も食べる。

捕食例一覧

  • フナ
  • 魚の切り身(甲虫のトラップとして野外に設置されたもの)
  • ニホンアマガエル
  • トノサマガエル
  • シュレーゲルアオガエル
  • モリアオガエル
  • キタサンショウウオ
  • アオダイショウ
  • オカダトカゲ
  • ニホンヤモリ
  • ビンズイ幼鳥
  • キビタキ
  • カケス雛鳥
  • リュウキュウツバメ卵
  • モズ成鳥・卵
  • キセキレイ雛鳥
  • シジュウカラ雛鳥
  • スズメ
  • ベニスズメ
  • オナガ
  • イワツバメ
  • ホオジロ成鳥・雛鳥
  • ヤブサメ
  • アカゲラ
  • メボソムシクイ
  • ゴジュウカラ
  • カワセミ
  • オオヨシキリ雛鳥・成鳥
  • ヨーロッパウズラ
  • コウライキジ卵
  • ヤマドリ卵
  • アヒル卵
  • カルガモ
  • カイツブリ卵
  • オオバン卵
  • オオミズナギドリ雛鳥
  • ベニイロフラミンゴ卵(動物園にて)
  • ニワトリ卵
  • コウベモグラ
  • ヒメネズミ
  • アカネズミ
  • エゾヤチネズミ
  • スミスネズミ
  • ヤマネ
  • ハタネズミ成体・幼体
  • ハツカネズミ
  • エゾモモンガ
  • ドブネズミ
  • クリハラリス
  • コキクガシラコウモリ
  • コテングコウモリ
  • イエコウモリ
  • ニホンノウサギ

引用:[3][4][5]

[繁殖]

  • 5–8月に交尾を行い、7–8月に4–17個産卵する。
その他

[その他]

  • ミトコンドリアDNAに基づく分子系統解析によると、本種は大きく2つの系統群に分けられ、それらの分布境界にあたる山口県や九州北部では両系統群が同所的に生息している。一方、本州と四国の間はあまり遺伝的分化が起こっておらず、氷期の間陸続きになっていたことによって遺伝的交流が行われたためと考えられる。また、北に行くほど本種の遺伝的多様性が下がる傾向が見られる。このことから、気温が著しく下がった最終氷期に、北日本において個体数や生息範囲が大幅に縮小したことが考えられる[8]。
  • 捕食者に対しては総排出孔付近にある臭腺から青臭い独特の防御臭を放つ。
  • かつては農家の穀物を食べるネズミを捕食することから重宝されていた。
  • 山口県岩国市では本種のアルビノ個体(シロヘビ)が自然下で時折見られ、神の使いとして崇められてきた。1924年から国の天然記念物に指定され、保護されている。近年では都市化により米倉、水路、石垣といった本種の生息環境が減少し、シロヘビも個体数を減らしている。現在では岩国市及び財団法人岩国白蛇保存会を主導として市内6箇所のシロヘビの繁殖施設において多くの個体が飼育繁殖されている。

[執筆者のコメント]

  • 都市部では他のヘビの種よりよく見かける。幅広い食性を持ち、物を登る能力が高いためだろうか。

執筆者:藤島幹汰


引用・参考文献

  1. 牧茂一郎. 1931. 原色版日本蛇類圖説. 第一書房, 東京.
  2. 関慎太郎、疋田努. 2018. 野外観察のための爬虫類図鑑 第2版. 緑書房, 東京.
  3. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. The Snake 20:98-113.
  1. 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.
  2. 児玉知理. 2017. アオダイショウのモリアオガエル捕食例. 爬虫両棲類学会報 2017(2):191-192.
  3. 福山伊吹, 森哲. 2017. アオダイショウの食性と体サイズの関係に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2017(2):180-186.
  4. Schulz, K. D., & Entzeroth, A. (1996). Monograph of the Colubrid snakes of the genus Elaphe Fitzinger (Vol. 7). Koeltz Scientific Books.
  5. Moriyama, J., Takeuchi, H., Ogura-Katayama, A., & Hikida, T. (2018). Phylogeography of the Japanese ratsnake, Elaphe climacophora (Serpentes: Colubridae): impacts of Pleistocene climatic oscillations and sea-level fluctuations on geographical range. Biological Journal of the Linnean Society124(2), 174-187.
  6. Chen, X., Lemmon, A. R., Lemmon, E. M., Pyron, R. A., & Burbrink, F. T. (2017). Using phylogenomics to understand the link between biogeographic origins and regional diversification in ratsnakes. Molecular phylogenetics and evolution111, 206-218.
  7. Mori, A. (1994). Prey‐handling behaviour of newly hatched snakes in two species of the genus Elaphe with comparison to adult behaviour. Ethology97(3), 198-214.

「アオダイショウ」への2件のフィードバック

    1. Thank you for your interest in our website. We are not aware of other websites that specifically account for Japanese species in the same detail.
      However, we can recommend several well-known online databases for global amphibians and reptiles. You may find some pictures and descriptions of the Japanese herps there.
      Amphibians: AmphibiaWeb (https://amphibiaweb.org/), Amphibian Species of the World (https://amphibiansoftheworld.amnh.org/; taxonomic account)
      Reptiles: The Reptile Database (http://www.reptile-database.org/)
      Endangered species: IUCN Red List (https://www.iucnredlist.org/)

      We would also like to note that our website is a work in progress. We plan to add more resources in the future, including English pages.

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です