サキシマバイカダ

Lycodon multifasciatus (Maki, 1931)

爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > オオカミヘビ属 > サキシマバイカダ

  • 石垣島
概要

[大きさ] 

  • 全長70〜80 cm。細長く華奢なヘビ。

[毒性] 

  • 無毒

[説明]

  • 頭は比較的大きく、首のくびれは顕著。頭に対して眼が大きく、左右に突出している。瞳孔は縦長だが、虹彩も黒っぽいので黒目ばかりに見える。
  • 背面は薄い茶色あるいは灰色の地に黒褐色の横帯が多数入る。
  • 夜行性で樹上性。夜に枝先で寝ているトカゲ類を狙って捕食する。森林に棲むが、ヤモリを捕食するためか人家近くにも出没することがある。卵生。

[保全状況]

  • 環境省レッドデータブック指定:準絶滅危惧(NT)
  • 都道府県レッドデータブック指定:準絶滅危惧(沖縄)
  • その他:竹富町自然保護条例にて希少野生動植物種指定・宮古島市自然保護条例にて保全種指定
  • 環境の良い森林の減少による生息地の縮小と餌動物の減少が本種にとっての主な脅威である。特に宮古島では好適な環境が少なく、絶滅の恐れが高い。 伊良部島では外来種のイタチによる食害も懸念される。
分布

[分布]

  • 西表島、石垣島、宮古島、伊良部島
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有隣目 > ヘビ亜目 > ナミヘビ科 > ナミヘビ亜科 > オオカミヘビ属 > サキシマバイカダ

[タイプ産地] 

  • 石垣島

[説明]

  • サキシマバイカダは、石垣島で採集された1個体を基にMaki(1931 [1])によってDinodon septentrionale multifasciatumとして記載された。その後鳥羽(1982 [2])はこれを、ヘミペニスの形態と上顎の歯式に基づき、種バイカダ Lycodon ruhstratiの1亜種L. r. multifasciatusとした。続いてOta(1988 [3])も台湾産のL. r. ruhstratiとの腹板数、尾下板数、黒褐色横帯の数の違いをもとにこれを支持した。
  • Vogel and Brachtel(2008 [4])はサキシマバイカダと台湾産のタイワンバイカダの体鱗や色彩のなどの形質の違いは、後者とインドシナ半島に生息するL. cardamomensisとの違いよりも大きいとした。そして種の概念に基づき、台湾産タイワンバイカダとL. cardamomensisが別種とされるならば必然的にタイワンバイカダとサキシマバイカダも別種とすべきと主張した。
  • オオカミヘビ属 Lycodonについて
    • Lycodonはアジアのナミヘビ科の中で最大の属の1つで、現在日本から東南アジア、中央アジアにかけて50種以上が知られている。近年の分子系統学的研究により、Lycodonはシロマダラ、アカマタ、 アカマダラを含むDinodonの他にDryocalamusLepturophisといった属(これらはかつて形態的な差異をもとに分類されていた)を内含する巨大な多系統群であることが分かってきている[5][6][7][8]。
体の特徴

[形態]

  • 全長70〜80 cm。尾は全長の1/4程度を占める。非常に細長く縦扁した体型。頭部と頸部の境は明瞭にくびれている。
  • 背面は薄い茶色あるいは灰色の地に黒褐色の横帯が胴に60本程度、尾に32本程度入る。石垣島、西表島の個体は首元で横帯の間隔が広く、体の後半に向かうにつれて間隔が狭くなり、小黒褐斑に変わっていく傾向がある。宮古島の個体は腹面は白色。体の後半では小黒斑が点在する。
  • 眼は大きく、左右に突出している。瞳孔は黒く縦長だが、石垣島、西表島の個体では虹彩も黒いので眼全体が黒く見える。宮古島の個体は虹彩の色が薄く、瞳孔の形が分かりやすい。
  • 体鱗列数は頸部から胴の2/3まで17列、胴の後部1/3で15列で、背面中央の9列(前方)ないし11列(後方)は弱いキールを伴う。それ以外の体鱗は平滑。腹板数は229枚で側稜は顕著。肛板は1枚、尾下板数は106対。尾下板は左右に2列並ぶ。

引用:[1][12]

[似た種との違い]

サキシママダラとの違い

  1. サキシマバイカダの方が体型がずっと細長く、側扁している。
  2. 眼が大きく、左右に突出している。
  3. サキシママダラと違い樹上で見つかることが多い。

似たような白黒の帯模様が入り、生息地では格段に見る機会の多いサキシママダラとは見間違えることもあるかもしれない。系統的に両者は近縁で、顔つきも少し似ている。しかしサキシマバイカダは樹上生活に適応して非常に細長く側扁した体型をしているのに対し、サキシママダラは比較的太く筋肉質な体をしている。比較的細い幼蛇のサキシママダラと比べてもサキシマバイカダはずっと細長い印象を受ける。また、サキシママダラの眼はやや小さく、縦長の瞳孔がはっきり分かるのに対し、サキシマバイカダは眼が大きく左右に突出しており、全体が黒く見える。

生態的には、サキシママダラは地表で見られることが多いのに対し、サキシマバイカダは樹上で見られることも多い。ただし後者も時折車道上で見つかることはある。

サキシマバイカダサキシママダラ 
生態

[食性]

  • サキシマスベトカゲ
  • サキシマキノボリトカゲ
  • オガサワラヤモリ
  • ミナミヤモリ
  • クモの1種(餌のトカゲが捕食したものと推測される)

引用:[9][10][11]

その他

[コメント]

  • 飛び出した大きなおめめが非常に可愛らしい。

執筆者:藤島幹汰


引用・参考文献

  1. Maki, M. 1931. A monograph of the snakes of Japan. Dai-ichi Shobo, Tokyo.
  2. 鳥羽通久. 1982.[1983] サキシマバイカダの分類学的位置づけ. 両生爬虫類研究会誌23:46.
  3. Ota, H. 1988. Taxonomic notes on Lycodon ruhstrati (Colubridae: Ophidia) from East Asia. Journal of Taiwan Museum 41(1):85-91.
  4. Vogel, G. and N. Brachtel. 2008. Contribution to the knowledge of Lycodon ruhstrati (Fischer, 1886) in Vietnam – taxonomy and biology of a littleknown species. Salamandra, 44(4):207-224.
  5. Guo, P., L. Zhang, Q. Liu, C. Li, R.A. Pyron, K. Jiang and F.T. Burbrink. 2013. Lycodon and Dinodon: One genus or two? Evidence from molecular phylogenetics and morphological comparisons. Molecular Phylogenetics and Evolution 68(1):144–149.
  6. Siler, C.D., C.H. Oliveros, A. Santanen and R.M. Brown. 2012. Multilocus phylogeny reveals unexpected diversification patterns in Asian wolf snakes (genus Lycodon). Zoologica Scripta, 42(3):262–277.
  7. Figuroa, A., A.D. McKelvy, L.L. Grismer, C.D. Bell, S.P. Lailvaux. 2016. A Species-Level Phylogeny of Extant Snakes with Description of a New Colubrid Subfamily and Genus. PLOS ONE 11(9):e0161070.
  8. Wostl, E., A. Hamidi, N. Kurniawan and E.N. Smith. 2017. A new species of Wolf Snake of the genus Lycodon H. Boie in Fitzinger (Squamata: Colubridae) from the Aceh Province of northern Sumatra, Indonesia. Zootaxa 4276(4):539-553.
  9. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan: A critical review. The Snake 20:98-113.
  10. 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.
  11. 角田羊平, 青柳克, 徳山孟伸, 才木美香, 笹井隆秀, 戸田守, 前之園唯史. 2016. 宮古島および伊良部島における稀少なヘビ2種,ミヤコヒバァとサキシマバイカダの観察例. AKAMATA 26:25-30.
  12. 富田京一. 2011. 山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ. 山と渓谷社, 東京. pp.188-189.

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