タダミハコネサンショウウオ

Onychodactylus fuscus Yoshikawa et Matsui, 2014

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > ハコネサンショウウオ属 > タダミハコネサンショウウオ

概要

[英名]

  • Tadami clawed salamander [3]

[別名]

  • サーカジカ(幼生)[5]

[大きさ] [2]

  • 全長  14~16cm

[説明]

  • 日本固有種。渓流性サンショウウオ。
  • ハコネサンショウウオ属(Onychodactylus)に共通する特徴として、細長い体と飛び出した目を持ち、成体にも肺がない。
  • 背中に模様がなく、ほぼ真っ黒に見えるのが特徴である。
  • 繁殖期は近縁種ハコネサンショウウオが初夏であるのに対し、初冬の11月ごろとされる。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧(NT)
  • 福島県レッドリスト2020:準絶滅危惧(NT)
  • 只見町の野生動植物を保護する条例による、町指定貴重野生動植物。
分布

[分布]

  • 福島県只見町と新潟県三条市の周辺に分布する[2]。

分類

[分類][3, 4]

  • 両生綱 > 有尾目 >サンショウウオ科 > ハコネサンショウウオ属 > タダミハコネサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 福島県只見町 [3]

[学名の由来]

  • 種小名fuscusは黒い、暗いという意味[2]。

[説明]

  • 日本国内のハコネサンショウウオ属(Onychodactylus)は長い間1種の広域分布種として認識されていたが、Yoshikawa et al(2008, 2014)の研究により国内のハコネサンショウウオ属には多くの隠蔽種が存在することが明らかになった[3][4]。
  • 本種はバンダイハコネサンショウウオO. intermediusの姉妹種である。只見町では同じ沢で本種の幼生とハコネサンショウウオO. japonicusの幼生が同所的に生息していることが報告されているが、この2種は生殖的に隔離されている[3]。
体の特徴

[形態][3,6]

  • 頭胴長より長い尾を持つ、前肢は短い、肋条数は12ー13。
  • オスとメスの頭胴長はほぼ同じで、オスの尾長はメスより長い。
  • 幼生と繁殖期の成体は黒い爪を持つ。
  • 背面の地色は暗い茶色で、黄土色の斑点が不規則に分布している。体の側面や腹面には銀白色の斑点が散在する。
  • 腹面は灰色。背面と腹面の色彩の境界は不明瞭で、徐々に色が薄くなる。

[似た種との違い][3, 5]

  • 本種の基本的な形態的、生態的特徴は多くのハコネサンショウウオ属の他種と共通している。色彩的な違いとして本種の背面は同属の他種に見られる特徴的な黄土色から褐色の縦条模様がなく、ほぼ黒褐色か暗褐色であることがあげられる。
生態

[生息環境][6]

  • 自然林の残る山地の源流部とその付近にみられる。
  • 只見町では大きさが異なる幼生が一つの沢の中で見つかる。

[繁殖]

  • 繁殖期は晩秋~初冬で、山地の源流域にある伏流水中に一対の卵嚢を産み付ける。
  • 繁殖期は指先に黒い爪が生じる、オスの場合、肥大した後肢、先端がヒレ状に側偏した尾も見られる[3]。

[卵]

  • 産卵数は少ない、一腹卵数は13~16個[3]。

[幼生]

  • 孵化した幼生は三年間渓流のなかで過ごし、三年目の秋ごろに上陸する。同種内での共食いはしない[6]。

[生態] [6]

  • タダミハコネサンショウウオは乾燥と高温に弱く、涼しく湿った場所を好む。
  • 夜行性で、昼間は林床の落ち葉や岩陰のほか、山中の湧水地のまわりに潜み、普段目にすることは少ない。
  • 幼生は渓流での生活に適応しており、水の抵抗を減らすためにエラや尾ビレは小さくなり、指先には滑り止めとなる湾曲した黒い爪を持っている。
その他

[コメント] [5]

  • 本種とその近縁種は、森林の伐採や道路工事などの環境の変化に脆弱であり、いったん減少すると個体数の回復が難しくなる可能性が高い。また、サンショウウオやイモリはペット目的で採集や売買が行われ、一部の愛好家や販売業者による過剰な採集が脅威となっている。

執筆者:叶林芸


引用・参考文献

  1. 環境省レッドリスト<http://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf> 最後閲覧日2021/5/2
  2. 関慎太郎・松井正文. 2018. 野外観察のための日本産両生類図鑑 第2版
  3. Yoshikawa, N., Matsui, M. 2014. Two new salamanders of the genus Onychodactylus from eastern Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa. 3866: p53-78.
  4. Yoshikawa, N., Matsui, M., Nishikawa, K., Kim, J. B., & Kryukov, A. (2008). Phylogenetic relationships and biogeography of the Japanese clawed salamander, Onychodactylus japonicus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its congener inferred from the mitochondrial cytochrome b gene. Molecular Phylogenetics and Evolution, 49(1), 249-259.
  5. 吉川夏彦. 2015/12. 只見町に生息するタダミハコネサンショウウオについて. 只見町文センター. No.4: 2-6
  6. 吉川夏彦. 2018/11-2019/1. 町史・とっておきの話. カエルとサンショウウオの楽園・ただみ①-③
  7. 只見町保全状況 https://www.town.tadami.lg.jp/information/2019/04/002217.html 最後閲覧日2021/5/2
  8. 福島県レッドリスト https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16035b/redlist-kaiteikouhyou.html 最後閲覧日2021/5/2

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