バンダイハコネサンショウウオ

Onychodactylus intermedius Yoshikawa et Matsui, 2014

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > ハコネサンショウウオ属 > バンダイハコネサンショウウオ

  • オスの成体(茨城県)
概要

[英名] [8]

  • Bandai clawed salamander

[大きさ] [5][8]

  • 全長  11–18cm
  • 頭胴長  5–7cm

[説明]

  • 日本固有種。東北地方南部、新潟県北部、茨城県北東部に分布している。
  • ハコネサンショウウオとキタオウショウサンショウウオの分布域に挟まれるように分布している。
  • 中型で、背面に黄褐色の縦条や不連続な斑紋を持つ。腹面には銀白色の斑点がある。
  • 初夏と初冬の両方繁殖する、渓流の伏流水中に1対の卵嚢を生む。

[保全状況] [1, 2, 3, 4]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧(NT)
  • 茨城県レッドリスト2016:絶滅危惧Ⅱ類
  • 福島県レッドリスト2021:準絶滅危惧(NT)
  • 宮城県レッドリスト2021:準絶滅危惧(NT)
分布

[分布] [7, 8]

  • 東北地方南部(山形県の北部から南東部まで、宮城県の南部、福島県の北部および東部)、新潟県の北部、茨城県の北東部に分布する。

[生息環境] [8]

繁殖期には冷涼な渓流で見つかる。非繁殖期の生態はよく知られてないが、冷涼で湿潤な森林内の渓流付近の林床を好む。

分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 >サンショウウオ科 > ハコネサンショウウオ属> バンダイハコネサンショウウオ

[タイプ産地][8]

  • 福島県郡山市

[学名の由来][8]

  • 種小名の”intermedius“は「中間の」という意味であり、ハコネサンショウウオとキタオウショウサンショウウオの分布域に挟まれるように分布していることから名付けられた。
  • 和名と英名はタイプ産地の北西にある磐梯山Mt. Bandaiに由来する。

[説明] [8]

  • 系統的にタダミハコネサンショウウオにもっとも近縁で、ツクバハコネサンショウウオと共に単系統群を形成する。側所的に分布するハコネサンショウウオとキタオウショウサンショウウオとの交雑個体が分布境界付近で数個体のみ見つかっている。
体の特徴

[形態][5, 8]

  • 体は小型から中型で、メスの尾長は頭胴長とほぼ同じ、オスの尾長は頭胴長より長い。
  • 肋条数は12か13。左右の鋤骨歯列は明瞭に湾曲し、歯列の間に隙間はない。
  • 背面の縦条または斑紋は黄色、黄土色、褐色または赤褐色。地色は灰褐色または紫褐色。
  • 腹面は紫褐色、紫灰色、または明るい灰色で白点を持つ。普通、胸部に一対の暗色斑を持たない。

[他種との違い] [8]

  • 分布域が接するハコネサンショウウオおよびキタオウショウサンショウウオとよく似る。キタオウショウサンショウウオと比べて、本種の吻端は比較的短いこと、頭幅が狭いことなどが異なる。キタオウショウサンショウウオと体色は非常に似るが、本種は胸部に一対の暗色斑を普通持たないことで見分けられる。ハコネサンショウウオと比べると、本種の尾は相対的に短く、オスの頭胴長が短く、鋤骨歯数が比較的多いことなどが異なる。本種の体色は東日本に分布するハコネサンショウウオとは似るが、タイプ産地(箱根)や西日本に分布するハコネサンショウウオは本種と異なり、背面にはっきりとした赤もしくはオレンジの縦条を持つことから区別できる。
生態

[繁殖][8]

  • 繁殖期は個体群によって異なり、初夏または晩秋またはその両方と推定されるが、不明点が多い。

[卵][6][8]

  • 1卵嚢対中の卵数は9~22個。野外での卵嚢は2018年に福島県で初めて見つかり、細流の石と砂利の間に産み付けられているのが確認されている。

[幼生][8]

  • 背面に斑模様を持つ個体と、ストライプを持つ個体の2タイプが存在する。
  • 幼生は2年以上かけて変態する。

[被食] [8]

  • ヒバカリに捕食された例が知られる。

執筆者:叶林芸


引用・参考文献

  1. 福島県レッドリスト https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/library/202106.pdf        閲覧日2022/6/26
  2. 茨城県レッドリスト https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/shizen/tayousei/redbook/documents/ibaraki_rdb2016_4web.pdf 閲覧日2022/6/26
  3. 環境省レッドリスト<http://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf> 閲覧日2022/6/26
  4. 宮城県レッドリスト https://www.pref.miyagi.jp/documents/38111/843174.pdf  閲覧日2022/6/26
  5. 松井正文・森哲. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑.
  6. 永山駿・平澤桂・稲葉修. 2020(2): 福島県川内村におけるバンダイハコネサンショウウオOnychodactylus intermedius卵嚢の初記録, 165-168.
  7. 吉川夏彦・富永篤. 2019(2). 爬虫両棲類学会報 特集:日本産爬虫両生類の分類に関する最近の動向. 2013年以降の日本産有尾両生類の分類について.
  8. Yoshikawa, N., Matsui, M. (2014). Two new Salamanders of the genus Onychodactylus from Eastern Honshu, Japan(Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa, 3866(1), 053-078.
  9. Yoshikawa, N., Matsui, M., Nishikawa, K. (2012). Genetic structure and cryptic diversity of Onychodactylus japonicus (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) in northeastern Honshu, Japan, as revealed by allozymic analysis. Zoological science, 29, 229-237.
  10. Yoshikawa, N., Matsui, M., Nishikawa, K., Kim, J. B., & Kryukov, A. (2008). Phylogenetic relationships and biogeography of the Japanese clawed salamander, Onychodactylus japonicus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its congener inferred from the mitochondrial cytochrome b gene. Molecular phylogenetics and evolution, 49(1), 249-259.

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