トウホクサンショウウオ

Hynobius lichenatus Boulenger, 1883

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > トウホクサンショウウオ

概要

[大きさ] 

  • 全長 93–140mm [11][16]

[説明]

  • 主に東北地方に分布する日本固有種の小型サンショウウオ。
  • 春先に小さな渓流や水路などのゆるい水流のある場所で繁殖する。
  • 卵嚢には明瞭な条線があり、ひも状またはバナナ状。
  • 遺伝的に大きく3つの集団に分かれる。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧
分布

[分布]

  • 東北地方と新潟県、群馬県、栃木県 [11]。

[生息環境]

  • 海岸付近から標高1800mまでの森林に生息する [11]。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

[タイプ産地] 

  • 青森(原記載ではAwomori, Japan)[2]

[説明]

  • 本種はトウキョウサンショウウオ、クロサンショウウオ、アベサンショウウオ、ミカワサンショウウオなどが含まれるクレードの中で最も祖先的な系統であり、これらの種と比較的近縁である[7]。
  • 遺伝的に東北地方北部(青森県、秋田県、岩手県付近)、東北地方南東部(宮城県、山形県、福島県北東部)、それ以南の地域 (山形県南西部から新潟県、福島県、群馬県、栃木県付近)の3集団に分かれる[1]。
体の特徴

[形態][1][3][6][7]

  • 頭部は扁平で眼は突出する。
  • 鋤骨歯列は浅く短いU字型。
  • 皮膚は滑らかで胴部背面中央に1本の縦溝がある。
  • 肋条は11本で稀に10または12本。
  • 四肢は長く胴に沿って向かいあわせると前肢の指と後肢の趾が重なる。
  • 尾は比較的短く、胴よりも少し長い程度[11]。
  • 背面は褐色で側面と腹面は色が淡く灰白色の地色に褐色の細かい斑点がある。胴部と四肢の背面及び腹面には青白い斑点が散在する[11]。
  • 基本的に前肢の指は4本で後肢の趾は5本だが、後肢の趾はしばしば4本となることが知られている[3][8][11]。
  • 第5趾の発達は悪い。

[似た種との違い][6]

  • ハコネサンショウウオ類やクロサンショウウオと同所的に生息するが、ハコネサンショウウオ類とは本種の方が胴や尾が短く、また、背面に黄色の帯状模様を持たないことから容易に見分けられる。クロサンショウウオとは本種の方が四肢や尾が短いこと第5趾の発達が悪いことなどで見分けられる。また、クロサンショウウオとは卵嚢形態が完全に異なる[11]。
生態

[食性][3]

  • 昆虫やミミズなど[11][12]。

[天敵]

  • 天敵として外来種のブラックバスが知られるほか、アライグマの影響も危惧されている[6][14]。

[繁殖][3][6][8]

  • 1〜6月に小さな渓流や水路などのゆるい水流のある場所で明瞭な条線を持つひも状またはバナナ状の卵嚢を産む[6][11]。
  • 卵数は1対で20〜100個ほど[11][15][16]。
  • 3〜7歳で性成熟する[6]。
  • 基本的に本種はゆるい流れがある環境に産卵し、クロサンショウウオは止水に産卵するが、稀にクロサンショウウオと同地的に産卵することがある[5][9]。

執筆者:福山伊吹

2023年6月公開


引用・参考文献

  1. Aoki, G., Matsui, M., & Nishikawa, K. (2013). Mitochondrial cytochrome b phylogeny and historical biogeography of the Tohoku salamander, Hynobius lichenatus (Amphibia, Caudata). Zoological science, 30(3), 167-174.
  2. Boulenger, G. A. (1883). Description of new species of reptiles and batrachians in the British Museum. Annals and Magazine of Natural History, Series 5, 12: 161–167.
  3. Hasumi, M., & Iwasawa, H. (1993). Geographic variation in the pes of the salamander Hynobius lichenatus: a comparison with tetradactyl Hynobius hidamontanus and pentadactyl Hynobius nigrescens. Zoological science, 10(6), 1017-1027.
  4. 環境省. 2019. 環境省レッドリスト2019. https://www.env.go.jp/press/files/jp/110615.pdf, 閲覧 2019-7-18
  5. 倉沢甚一郎. (1977). トウホクサンショウウオとクロサンショウウオの混合産卵. 爬虫両棲類学雑誌, 7(1), 20-21.
  6. 松井正文. 2014.トウホクサンショウウオ. “レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 3 爬虫類・両生類”, 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編), 株式会社ぎょうせい, 東京, p142.
  7. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., … & Tominaga, A. (2019). Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives. Current Herpetology, 38(1), 32-90.
  8. 丸山敏之. (1977). トウホクサンショウウオの後肢趾にみられる変異. 爬虫両棲類学雑誌, 7(1), 10-14.
  9. 南部久男. (1984). トウホクサンショウウオとクロサンショウウオの混合産卵及び同所で得られた両種の卵嚢, トウホクサンショウウオ成体の形態. 富山市科学文化センター研究報告 (6), 73-78.
  10. 日本爬虫両棲類学会. 2019. 標準和名リスト. http://herpetology.jp/wamei/index_j.php, 閲覧2019-7-18.
  11. 佐藤井岐雄. (1943). 日本産有尾類類総說. 日本出版社.
  12. 関慎太郎・松井正文. 2016. 野外観察のための日本産両生類図鑑. 緑書房, 東京.
  13. Sparreboom, M. (2014). Salamanders of the old world: the salamanders of Europe, Asia and northern Africa. Brill.
  14. 杉山秀樹. (2006). オオクチバスによるトウホクサンショウウオの捕食. 爬虫両棲類学会報, 2006(1), 37-40.
  15. 東城庸介. (1976). トウホクサンショウウオの卵嚢中の卵数. 爬虫両棲類学雑誌, 6(4), 103-104.
  16. 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.

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