ミシシッピアカミミガメ

Trachemys scripta elegans Wied, 1839

  • 成体(飼育個体)

爬虫綱 > カメ目 > ヌマガメ科 > アカミミガメ属 > アカミミガメ > ミシシッピアカミミガメ

概要

[大きさ] 

  • 背甲長:成体メス17~28cm, 成体オス10~20cm[1][6]

[説明]

  • 背甲は比較的なめらかなドーム状で、後縁部はゆるい鋸歯状になる
  • 眼の後ろから首の上まで幅の広い赤色の線がある
  • 幼体は「ミドリガメ」と呼ばれる
  • 雑食性で甲殻類や昆虫類、植物などを食べる
  • 日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている1亜種(アカミミガメ全亜種は世界の侵略的外来種ワースト100に含められている)
分布

[分布]

  • 原産地は北米とメキシコの一部[14]。
  • 国内には1960年代以降に北米からペットとして持ち込まれた[4]。
  • 国内の分布は、北海道、本州、四国、九州、琉球列島(奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島)[18]。

[生息環境]

  • かつては人口の多い都市部の社寺や水路で目立っていたが、現在は平野部の水田やため池、河川や用水路に広く分布する [18]。
  • 淡水性であるが耐塩性もあり、汽水域や干潟でも見られる[19]。
  • 底質が柔らかく、水生植物が繁茂し、日光浴(甲羅干し)に適した陸地の多い場所を好む[13]。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > カメ目 > ヌマガメ科 > アカミミガメ属 > アカミミガメ > ミシシッピアカミミガメ

[タイプ産地] 

  • Fox River bei New Harmony (インディアナ)[17]
体の特徴

[形態]

  • 成体の背甲は比較的なめらかなドーム状で、後縁部はゆるい鋸歯状になる。
  • 色はオリーブ色から褐色で、各肋甲板には黒い縁取りで細い波状の縦線が見られる。
  • 幼体の背甲は緑色で中央にキールがある。
  • 腹甲は後部よりも前部のほうがやや幅が広く、色は淡黄色。各甲板には通常暗い楕円形の模様がある。
  • 頭部はオリーブ色から褐色で鮮やかな黄色の線がはいり、眼の後ろから首の上までは幅の広い赤色の線がある。
  • 四肢と尾にも黄色の帯や縞模様が見られる[17]。
  • 高齢のオス、一部の高齢のメスは黒化する[10]。
生態

[食性]

  • 小型の個体は動物食、大型の個体は植物食の傾向が強い。
  • 雑食性であるがクサガメと比べると植物食傾向が強いという報告や、干潟の個体は動物食の傾向が強いという報告もある。
  • 魚類、甲殻類、昆虫類、貝類、藻類、水草、陸上植物などを食べる[8][13][15][19]。

[繁殖]

  • オスの前肢の爪は細長くのび、この肢をメスの前で小刻みにゆらす求愛行動が知られている[10][11]。
  • 産卵数は7~15個ほどで、年に数回産卵する。卵は直径約3.5cm、短径約1.5cmの楕円形で[2][18]、メスは孵化後5年ほどで繁殖できるようになる[20]。
  • 温度依存的性決定を示し、孵卵温度が29.2℃より高いとメスが生まれる割合が高くなり、低いとオスが生まれる可能性が高くなる [16]。
  • 日本国内では性比は飼育下、野外環境下のいずれも雌に偏っている[7][9][15]。
その他

[その他]

  • 哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類といった一般家庭で飼育される動物は、 人にも感染する人獣共通感染症起因菌(クラミジア菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など)を保有していることがある。
  • ミシシッピアカミミガメは食中毒の原因の一つであるサルモネラ菌の宿主であることが知られている。
  • 国内では1970~1980年代にかけてミシシッピアカミミガメに起因するサルモネラ症が報告され、1960年代以降ペットとして出回っていた個体が野外に多数放逐された[3][5][18]。

執筆者:工藤葵


引用・参考文献

  1. Cash, W. B. 2000. Behavioral and physiological ecology of the slider turtle: laboratory and field studies integrating hormonal and behavioral aspects (Doctoral dissertation, University of Mississippi).
  2. 早瀬長利. 2008. 茨城県自然博物館野外施設におけるミシシッピアカミミガメの産卵記録. 茨城県自然博物館研究報告, 11, 21-23.
  3. 林谷秀樹, 岩田剛敏, & 中臺文. 2008. 爬虫類とサルモネラ. モダンメディア, 54(6), 165-170.
  4. 深瀬徹. 2007. エキゾチックアニマルの生物学 (XVIII). 日本獣医師会雑誌, 60(3), 171-173.
  5. 飯田孝, 神崎政子, 渡部浩文, 宮崎奉之, & 丸山務. 1999. 各種ペット動物における人獣共通感染症起因菌の保有状況. 日本獣医師会雑誌, 52(9), 583-587.
  6. 加藤英明, 小田切佑樹, 服部智美, & 本多安希雄. 2014. 静岡市麻機地域における外来種ミシシッピアカミミガメ Trachemys scripta elegans (Testudines, Emydidae) の分布と生息状況. 東海自然誌 (静岡県自然誌研究報告), 7, 21-24.
  7. 神戸市立須磨海浜水族館. アカミミガメ調査研究報告. < http://www.sumasui.jp/tyousa/cat21/post-10.html>, 閲覧 2019-6-8
  8. 小出水規行, 森淳, 嶺田拓也, 澤田英司, 渡部恵司, & 竹村武士. 2015. 糞からの環境 DNA を利用したアカミミガメの食性解析. H27 農業農村工学会大会講演会要旨集, 300-301.
  9. 国立環境研究所. 侵入生物データベース. < https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/30050.html >, 参照 2019.5.31
  10. McCoy, C. J. 1967. The development of melanism in an Oklahoma population of Chrysemys scripta elegans (Reptilia: Testudinidae). In Proceedings of the Oklahoma Academy of Science (Vol. 47, pp. 84-87).
  11. 中田兼介, & 藪田慎司. 2006. 動画資料を使ったフィールド生物学者の自然教育への貢献. 日本生態学会誌, 56(2), 166-173.
  12. 日本爬虫両棲類学会. 2019. 標準和名リスト. , 閲覧2019-5-30.
  13. 日本生態学会(編).2002.外来種ハンドブック. 390 pp. 地人書館.
  14. 西川完途, 松井正文, 冨田靖男, 松月茂明, 清水善吉, & 田邊真吾. 2005. 三重県名張市からのミシシッピアカミミガメ黒化個体の報告. 爬虫両棲類学会報, 2005(1), 1-3
  15. 野田 英樹, 鎌田 直人. 2004. 水性カメ類の個体群特性と食性の関係. 爬虫両棲類学会報2004(2):102-113.
  16. Ramsey, M., & Crews, D. 2007. Steroid signaling system responds differently to temperature and hormone manipulation in the red-eared slider turtle (Trachemys scripta elegans), a reptile with temperature-dependent sex determination. Sexual Development, 1(3), 181-196.
  17. Seidel, M. E., & Ernst, C. H. 2006. Trachemys scripta. Catalogue of American Amphibians and Reptiles (CAAR).
  18. 矢部隆. 2003. 外来ガメが変える水環境: 外来種が引き起こす諸問題 (< 特集> 第 9 回シンポジウム). コミュニティ政策研究, 5, 3-19.
  19. 吉岡志帆, & 木村妙子. 2018. 干潟のアカミミガメは何を食べているのか?~ 干潟と周辺淡水域における外来種ミシシッピアカミミガメの食性比較. 日本ベントス学会誌, 72(2), 83-93.
  20. Perez-Santigosa, N., Diaz-Paniagua, C., & Hidalgo-Vila, J. 2008. The reproductive ecology of exotic Trachemys scripta elegans in an invaded area of southern Europe.

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です